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雨の日の晴  作者: 宿木
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曇のち晴

今日は曇り、なんだか微妙な天気。


お母さんは仕事で、私は家に一人だ。


雲が貼られた空、それを背景にする草木や、電柱などの人工物は、いつもより個性を強くだしている。


明るさを見る限り、雨は降らなさそうだし、一応洗濯物を干す。


私は2人分の濡れた衣服を抱え、庭へ出た。


(…)


庭へと続く扉を開けたとき、すぐに私の首の辺りが、汗をかく準備をした。


雨が近づいているのだろう。蒸し暑さがある。


この後、雨が降るのだろうか。


降る分には嬉しいのだけど、洗濯物がある。


もしこの後降るなら、中で干すようにする。


この後の天気の確認のため、スマホを開く。


(ニュースはずっと曇りって言ってたけど…)


ブーブー


文字を打とうとしたところで、晴美からメールが来た。


「この後お家行っていい?」


体調が良くなったのだろう。


今日も暇なので、晴美が来てくれるのは嬉しい。


「いいよ、今すぐでも大丈夫」と送った。


「ありがとう!今行くねー」


今日も透明で、1日の色に溶け込む日になると思っていたけど、そんなことはなさそうだ。


ピンポーン


晴美だろう。


インターホンを見なくても、彼女が来たことが分かる。


ガチャ


「おはようー急にごめんね!」


「うん、おはよう」


3日ほど会わなかっただろうか。


ほんの数日だけど、なんだか、すごく久しぶりな気がするな…だって…


「晴美、髪切ったね」


「そう!結構切ったでしょ!」


肩より少し下ぐらいまであった髪が、首の高さになっている。


髪の短い私より、少し短いぐらいだ。


見た目の変わりようのせいか、1年ほど会っていないような感覚だ。


「昨日切ったんだー」


「いいね、似合ってる」


本当に、よく似合っている。


可愛らしくて、綺麗な笑顔がよく見える。


そういえば、小さいとき、晴美はこのぐらい短い髪だったっけ…ちょっと、懐かしいかも。


「雨音ちゃん?入ってもいい?」


「ああ、ごめんごめん、いいよー」


「おじゃましまーす」


「体調はもう大丈夫なの?」


「うん!ホントキツかったよー39℃近かった」


「わあ大変…ごめん、お菓子とかなんも無いんだ。」


「全然!急に来ちゃったし…」


となると、やることは決まったようなものだ。


「じゃあ駄菓子屋さん行こうか」


「うん!」


雨を呼びそうな空の中、駄菓子屋さんに向かった。


(やっぱり、新鮮だな)


極端に髪がみじかいので、私が髪を切ったわけでもないのに、さっぱりした気分だ。


「こんにちはー」


「あら、二人ともいらっしゃい。久しぶりなんじゃない?」


「そうだね、久しぶり」


「あ、晴美ちゃん、髪切ったの?可愛いねぇ」


「へへへ、ありがとう。昨日切ったんだー」


いい顔だ、やっぱり、太陽なんじゃないだろうか。


こんな曇りの日でも、十分に照らしてくれる。


いつものお菓子を買って、この場で少し食べることにした。


「最近は涼しいよねぇーそろそろ秋かなー。ていうかもう秋かな?」


「そうだねぇ、もう秋と言っても間違いではないかもね」


「秋かーどんぐりだね」


「ははは、そうだねぇ」


やっぱりこの場所は落ち着く。


夏が過ぎて、忙しさを迎えた私たちには、とても大事な場所だ。


「どんぐりのお菓子もあってねぇ…あ」


パツパツパツ


駄菓子屋さんの外に下がる、布出できた屋根に、弾ける音。


これは、雨だ。


「降ってきたねぇ、二人とも傘もってるかい?」


「あー!持ってない…」


「私も…あ!」


洗濯を干したままだ…


「おばあちゃん、ごめん、もう帰らないと」


「そうかい?雨収まるまで待っててもいいんだよ?」


「洗濯をそのままにしてきちゃって」


「あら…じゃあ、そこにある傘、持ってきな返せる時返してくれたらいいから」


「ごめん、ありがとう」


「私も借りていい?」


「いいよー」


「おばあちゃんまたねー」


「はい、ありがとねぇ」


「雨音ちゃん走ろ!」


「うん」


駄菓子屋さんを出て、すぐに走った。


ピチャピチャと、私たちが弾けさせる音と、傘に雨が弾ける音。絶え間なく続いている。


雨が、靴を通り抜けているのが分かる。洗濯も、きっと濡れているだろう。


そんな中、なぜか、少し楽しんでいる自分がいる。


「ただいま」


「ただいまー」


すぐに外の洗濯を取り込む。


洗濯を干した時と変わらないほど、濡れてしまっている。


(これは…また洗わないと)


「ひゃー!濡れちゃったー。雨音ちゃん、洗濯大丈夫?」


「びしょ濡れ。まぁまた洗えばいいや」


洗濯は雨に染まっちゃったけれど…不思議と落ち込むばかりではなかった。


私の太陽が、雨知らずに楽しんでいるからだろうか。


今は、突然の大雨と言えるほど強い雨。


私のすぐ隣には、強く暖かい日差しが照っている。


透明よりも、さらに透き通った色が咲いている。

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