雨の先は(2)
私は小さな水溜まりを抱えたまま、朝を迎えた。
今日は晴れ、雲はあるものの、快晴に近い。
私は支度をし、家を出た。
いつもの坂は、登らずに。
今日は晴美は、朝練があるらしい。
一人の朝、こんな朝が週に二回ほどある。
私は、まだ寝ぼけた町の中を学校に向かい、歩いていく。
毎朝、挨拶をしてくれる、町のおばあちゃん。
「雨音ちゃん、おはよう。」
「おはようございます。」
毎朝、犬の散歩をしている人。
毎朝、走っている人。
スーツを着て、バスを待っている人。
私はこの町が好きだ。
昨日のこと、昨日ほどではないが、まだ考えている。
学校が見えてきた。
「おはようございます。」
「おはようございます!」
「おはよー」
校門では、係の生徒と、先生が挨拶をしている。
私は教室に着いた。
私はいつもの窓際から、外を見る。
(晴美だ)
晴美が、校庭を歩いていて、こちら側へ向かってくる。
隣にいる人と、楽しそうに話している。
(楽しそうだな)
ここからでも分かるいい笑顔。
しかし私の気持ちはなんだか、いつもとは違う。
いつも彼女の笑顔を見るときとは、少し違う。
私と晴美はクラスが違う。
晴美の教室は、私の教室の一つ奥だ。
階段の方から、晴美の声がする、それと、もう一人。
晴美はさっきの子と話しながら、私の教室を、通り過ぎて行った。
私はなぜか、気づかれないように、顔を、窓に向けていた。
先生が来て、すぐチャイムが鳴った。
「おはようございます。」
朝の会が終わった。
「一時間目は、英語ですね。それでは皆さん頑張って〜」
(今日は晴美と話したいな)
そのまま、いつも通り、お昼の時間まで授業が進んで行った。
いや、いつもより、少し退屈だったかも。
お昼の時間だ。
私はトイレに向かった。
「お腹すいたな〜」
晴美の声だ。
また誰かと話している。
さっきとは違う人みたいだけど。
私は、晴美が遠ざかったのを感じて、トイレから出た。
(なんで、ちょっと避けているんだろう。)
お昼が過ぎ、今日の授業、全てが終わった。
「さようなら!」
「さようなら〜みんな気をつけてねー」
私は、下へ向かった。
靴を履き替え、校門を目指す。
(いつもなら、晴美を見かけるのに)
私はいつもより、ゆっくり歩いてみる。
校門までは、晴美はいなかった。
今日は晴れている、快晴に近いほど。
(でも私は今…)
おそらく今日一日、感じていたのは、「嫉妬」だろう。
昨日考えていたことも相まって。
校門をでて、少ししたころ。
背後から、足音が聞こえる。
タッタッタッタッ。
歩いていないのが分かる。
「雨音ちゃん!」