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雨の日の晴  作者: 宿木
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雨の日の晴

今日は雨だ。

これをあいにく、運が悪いなどと捉えることが多い。

一般論だ。

「今日はあいにくの雨ですね。」「なんで今日に限って。」

雨は基本、嫌われる。うちの母も雨が嫌いだ。洗濯物を干すことができないかららしい。


私の名前は雨音(あまね)だ。別に雨が嫌いと言われても何とも思わない。それが実の母親でも。


母親ぐらい子供の名前に雨が入っているのだから少しは気をつけたらどうだ。と1度は思ったことがある。


でも母にそんな気持ちはない。それが分かるくらいの関係ではある。


学校のみんなも雨が嫌いだ。

雨になると、外に遊びに行けず落胆する声がよく飛び交う。


廊下も濡れるし、最悪運動会や校外活動、行事が無くなることもある。


そんな中で、うちの担任は雨が嫌いだと言ったことがない気がする。名前に雨が入っている私を気遣ってくれているのだろうか。


なんて、自意識過剰だ。雨が好きな可能性もあるし、ただ雨を何とも思っていないのかもしれない。


しかし私は聞いてしまった。先生が雨が嫌いと言っているのを。他の先生との会話を職員室の前を通ったときに耳にした。


どうやらバスで通勤しているらしく、雨の日は何かと不憫らしい。


「教室では雨で気分が下がっているのに、私まで雨が嫌とか言ったら子供たちの気分をもっと下げちゃうんであんま言えませんけど。」


さすが教論だなと思った。配慮が行き届いている、行き届きすぎている。なかなかそんな事をできる先生は、いや、そんな事をできる人は少ないだろう。


先生が雨を嫌いという事実よりも私は心が動いた。


そんな名前に雨が使われている私は、雨にたいしてどう思っているのかと言うと。


正直、

雨が好きだ。雨の日が好きだ。おそらく語れば止まらない。オタクというのだろうか。


1つあげるとするのなら雨の音が好きなのだ。


私には親友とよべる子がいる。晴美(はるみ)という。

私は晴美に雨が好きだと言ったことがある。


「私、雨の日好きなんだよね。」


「どうして?」


「沢山あるんだけど、1番は雨の音かな。雨の音って憂鬱になる人もいるみたいだけど、私にはあの音が拍手をしているように聞こえる。」


「そーなんだー私は雨あんま好きじゃないかなー」


(晴美のこういうハッキリと言えるところが好きなんだよな)


「雨だと外で遊べなくなっちゃうし、雨の中でお話をするとき、雨の音で聞き取りずらいことない?」


「それはあるかも。」


「でもね、雨のおかげで、あそこに咲いている綺麗なお花だったり、私の家の花だって咲いているからすんごい嫌いってわけじゃないよ」


晴美は道の脇にある小さな花を指さして、眩しいくらいの笑顔で言った。


(やっぱりいい表情をするな)


「私も雨が好きだけど、晴れの日が嫌いなわけじゃないよ」


「晴れていると、あそこの花もよく綺麗に見えるし、なんだか晴美が楽しそうでいい気持ちになる。」


「なんだそれー」


さっきよりもいい笑顔だ。心なしか、照れているようにも見えて可愛らしい。


晴美の笑顔がよく見えるから。とか言おうとしたけど、それは自分が照れくさい。


私はそんな晴れの日を頭に

家のドアを開けた。


「ただいまー」

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