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【完結済】最強無敵の守護竜に転生したけど世話焼きお姫様(32歳未亡人)がウザすぎる!  作者: 川平直
終章

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89話 ようやく一段落

「……? …………あっ?」


「よう、起きたか?」


 目を覚ましたんで声を掛けてやると弟は不思議そうに目をぱちくりさせてから、周りを見てから自分の体を確認すふ。


 俺達の姿はすでに二人そろってちっこい竜の姿に戻っていた。


 せっかく人の形に戻れたかと思ったが結局元通り、圧倒的なあの力も見る影もない、ただそれは弟も同じであの禍々しい力も姿も綺麗さっぱり消え去っている。


「…………兄さん一体なにをしたんだ」


「んっ」


 説明すんのも面倒なんで俺が顎をしゃくってやった方へ弟が視線を向けると、そこにあった物に驚愕する。


 そこにはエリザとスバル、弟が吸収してしまった二人の姿があるからだ。


 もちろん二人とも生きている、今は気を失って眠っているがその内目を覚ますはずだ。


「お前の中にあった二人の魂? みたいなもんを引っ張り出して分離させた後、そこから情報? 記憶? とにかくなんかを読み取ってそれを元に体を作り直して、もう一度そこに魂を突っ込んだ。具体的なやり方や理屈は聞くな、俺にも分からん」


 ほんと何をどうしてこんな事が出来ると思えたのか、今となっては俺にも分からない。


 ただあの時はそれが出来ると思ったし実際出来た、それ以外の事は俺にもさっぱりだ。


「んん……」


 その時、エリザの目蓋が開いて翡翠色の瞳がそっと覗く。


「あっ……兄様……おはようございます?」


 状況の把握ができてないのか単純に意識がはっきりしないのか、寝ぼけているような声で呼ばれて弟の身体がギクリと固まったのがわかる。


「さっき言ったろ、お前はお前が迷惑を掛けたやつ全員に謝んないとなんねえ――まずは一人目だ」


 そう言ってやると、弟は怯える様に何度も何度も躊躇しながらそれでもようやく絞りだした声でエリザへ呼び掛ける。


「あっ……の……その、エリザ」


「兄様? どうなさったのでうか」


 ぼんやりとした翡翠色の瞳を向けられて弟は思わず気まずそうに視線を逃がした。


 もしそのまま逃げるような軟派なマネをしたらひっぱたいてやるつもりだったが、その必要はなさそうだった。


 弟はエリザの目を真っ直ぐに見つめる、そ表情顔には覚悟滲がみ腹を括った男の顔をしていた。


「いきなりこんなことを言われても君は困るかもしれないけれど……ぼ、僕はずっと君を利用してきた、最後には君の命を奪うような選択をした。許されるような事じゃないことは分かっているけれど――ごめんなさい」


 そうして弟は深く頭を下げる。


 エリザからの言葉を待つ沈黙の時間、漂う緊張感から俺の心臓が速く強く激しく鼓動して思わず息を呑んでしまった。


 外様の俺でもこれだ、弟はきっと生きた心地がしないだろう。


 エリザはいったいなんて返すのだろうか?


 たとえ恨み言を言われ罵詈雑言を並べ立てられたとしてもそれが当然な事を弟はした、それを否定することは誰にも出来やしない。


 ただそれでも俺は今度こそ目を逸らさないと決めたのだ、例えどんな事になろうと兄として弟と一緒にそれを受け入れる覚悟を決める。


 永遠にも感じる一瞬の後、帝国の皇女がついに言葉を発した。


「……知っていましたわ」


 その一言は俺たちの想像に反して穏やかだった。


 あんまりにもその声が静かで優しいもんだから、弟は言葉を失い彼女を見つめる事しかできなくなっていた。


「兄様がわたくしを、いえ、皇帝という立場を利用としていたことは最初から分かっていました、ええ分かっておりましたとも。だって前にも言いましたでしょう? 兄さまの事はなんでもお見通しですわ」


 思わぬ言葉に驚く弟を見てエリザちょっといたずらっぽく笑って見せた。


 その笑顔はとてもさっきまで生きてるのか死んでるかも分からないような状態だったとは思えない程無邪気で子供らしい。


「でもそれでも良かったんですの。兄様はわたしの側にいて優しくしてくれた、たとえそれが上辺だけのものだったとしても構いませんわ。だってわたくしは兄様が大好きなんですもの――だから」


 そっとエリザの手が弟の目元を拭う。


「泣かないでくださいませ兄様、エリザはここにいますわ」


「……あ! ……うっ……くあ、ああ……」


 弟は今の今まで涙があふれそうになっている事に気がついていなかったんだろう、でも一度気がついてしまったらもう歯止めは効かない。


 涙は止めどなく流れて弟はその場にくずおれ蹲る、それは奇しくも頭を下げて許しを請うている様によく似ていた。


 不意にある記憶が俺の頭を過る。


 森の奥にある廃墟となった砦、その地下牢で俺は過去の自分を姫さんに許されそして救われた。


 あの時自分もこんな感じだったのだろうか? そう思うとむず痒いものがあるがそれと同時に俺は安心を覚えていた。


 きっと弟はもう大丈夫、もう何かを間違えることはない、弟にも罪を受け入れ許してくれる人が傍にいるそれが分かったから。


「……んんっ」


「よう、スバル様あんたも起きたか」


「フィロールの守護竜様? ……ここは? 一体なにがどうなったのですか?」


「そりゃまぁそう思うわな。でもまぁあれだ、その辺は後で追々な」


 なんせ色んな事がありすぎてどっから話したもんかすぐには纏まりそうにない。


 でもその色んな事もようやく一段落が付いた様な、なんとなくそんな予感がした。

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