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最強無敵の守護竜に転生したけど世話焼きお姫様(32歳未亡人)がウザすぎる!  作者: 川平直
第6章

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78話 ロイド・フィロール・ドラグニル

「姫様とロイド様は即位されてからずっとスラム治安改善に尽力されていたの、貧困にあえぐ人への援助の強化、仕事の斡旋、他にも色々、そんなものお金の無駄だって言うお偉方も多かったけど、それでも諦めずに」


「ジムのおっちゃんも、そんなこと言ってたな、昔に比べて治安がマシになったって」


ホーム(ここ)だってそんな活動の一環。子供達を含めお二人のおかげでどれだけスラムの人達が救われたか」


「いいえ、全てあの人がしてくれた事です私はなにも」


「そんなこたぁねぇよ!」


 勢いよく話に割って入ってきたのはさっきまですねてむっつり黙っていたエイの野郎だった。


「オレはガキだったけどよ、でもあんたがここに来て遊んでくれた事今でも覚えてるぜ! 親に捨てられてコソドロやるしかなかったオレによぉ、何度も話しかけて寄り添ってくれて。あんたが居てくれたからオレは今生きてんだ! ここの連中は皆そうだ、御上の金持なんて嫌いだけどあんた達は別だ、アンヌ様とロイド様はオレ達にとって恩人なんだぜ!」


「その恩人相手にカツアゲまがいの事やらかした人が言っても説得力に欠けるわねぇ」


「カ、カルさん、そりゃねぇよ。あれはその、事故みたいなもんでよぉ」


 ご尤もな指摘にたじたじになって言いわけをするエイは見ていて正直いい気味ではあったが、そんなやつを見てカルナはフッと笑みを浮かべる。


「まぁでも、このお馬鹿の言う通り、たとえ全てロイド様がやったことだったとしても、それはきっと姫様がいたから。このスラムに住む人達は皆あなた達に感謝してる……だからね姫様」


 カルナの真摯で労るような視線が姫さんへと向けられる。


「なにがあったのかは知らないけど、あんまり気にしすぎないでね。きっとあなたはなにも悪いことはしちゃいない、少なくともこの辺りであなたの事を悪く言うやつなんていやしないんだから」


 どうやらこの人も今の姫さんの様子がどっかおかしい事に感づいているらしい。


 アナスタシアといいジム夫妻といよく見ている、それはきっとそれだけ姫さんがこの人達に愛されているって事なんだろう。


 ただそれでも、やっぱり姫さんの表情はどこか暗いままで。


「……ありがとうカルナさん、そう言ってもらえて嬉しいです」


 そう言いながら笑う姫さんの笑顔はどこか申し訳なさそうで、なんだか無理をしている様に見えたるのは気のせいだろうか?


 少なくともカルナは俺と同じように感じたんだろう、その表情は少し複雑そうだった。


「まぁ、姫様の立場じゃそう割り切れるもんでもないか……さて!」


 ぱんっ! と重い空気を払うようにカルナが手をたたく。


「積もる話はいくらでもあるけど、どうやらそろそろ時間切れみたいよ」


 そう言って視線が向けられた先には部屋の扉からこっちの様子をうかがうガキ達の姿があった。


「まったく、もうちょっと待ってて言ったんだけど、皆姫様に構ってもらいたくてしょうがないみたい。色々思うところがあるのかもしれないけど、体動かしてたら楽になるもんもあるだろうし、ね?」


「ふふ、そうですね。そうさせていただきます」


 そう言って姫さんはガキ達へ歩み寄り、目線をあ合わせて声を掛ける。


「おまたせしました~。さぁ~皆なにがしたいのかな~」


「鬼ごっこ!」


「トカゲさん触りたい」


「ご本読んで!」


「おいおいガキ共。そんな一気に言うんじゃねぇよアンヌ様が困んだろうがよぉ」


「うふふ大丈夫ですよエイ君。さっ皆、向こうで遊びましょうね~」


 はーい! と元気よく返事を返すガキ達に引っ張られて姫さんは歩き出した……もちろん俺を胸に抱いたまま。


 いや、姫さんの気分転換にもなるっていうんなら別にかまわないんだが……。


 この後の事を思うと、俺は疲労のため息を漏らさずにはいられなかった。


 


「ふーん、ふふふーん♪」


「鼻歌なんて、随分と機嫌が良いじゃねぇの」


「あらあら、ごめんなさい。つい年甲斐もなくはしゃいでしまって」


「あーそう、そいつはよかった。俺はすっかり疲れちまったよ」


 俺達は今ホームを出て、日の落ち始めあかね色に染められた街を歩いている。


 あれからずーと姫さんは子供達の相手をしていたはずなのにどうしてこんなに元気なのか、俺としては不思議でしょうがない。


 ただ良い気分転換にはなったみたいだ。


 結局、当初の目的だった姫さんの様子がおかしくなった原因や秘密は分からず仕舞いだったが、まぁそれも良いだろう。


 少なくとも今目の前で嬉しそうにしている姫さんはここ最近では一番生き生きとしている様に見える、それだけでもこうして連れ出した意味はあった。


 そもそも考えてもみれば、秘密をそれとなく聞き出すなんて器用なマネが俺に出来るわけも無かったわけで。


 不安がないわけでもないが今はこれでよしとするべきだろう。


「で、この後はどうする気なんだ。日も落ちてきたみてぇだしそろそろ帰るか?」


 許可を得てるとはいえ姫さんがいつまでも帰ってこないとなれば大騒ぎになるのはめに見えている、下手すりゃ国を挙げての大捜索なんて事にならないとも限らない。


「そうですね、ですがその前にもう一つだけよりたい場所があるのですが良いでしょうか? それほどお時間は掛かりませんので」


「よりたい場所? まぁ良いけどよ姫さんの好きにすれば」


「ありがとうございます、守護竜様」


 そうしてちょうど日が落ちて辺りが暗くなった頃に姫さんが向かったのは、領主邸宅からそう遠くない場所にある街の教会だった。


 シスターに借りたランタンの明かりを頼りに姫さんは教会の隣にある墓地へと向かうと、ある一つの墓石の前で立ち止まった。


 ロイド・フィロール・ドラグニル国王ここに眠る、その墓石にはそう刻んであった。


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