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最強無敵の守護竜に転生したけど世話焼きお姫様(32歳未亡人)がウザすぎる!  作者: 川平直
第6章

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77話 こっちの世界のガキは随分とませている

「あ~~~~……疲れた」


 あの後、カルナが用意したおやつを速攻で完食したガキ達に姫さんはまたあっと言うまに囲まれてしまった。


 姫さんがホームと呼んでいたこの施設はなんでも託児所と孤児院を合わせた様な場所という話で、ここに居るガキ達はそれぞれの理由で親元にいられなくなった奴が殆どだと言う。


 しかし当のガキ共はどいつもこいつもそんな悲壮感なんて微塵も感じさせないくらい元気一杯だ。


 遊ぼうとせがむガキ共に姫さんは喜んで付き合い、鬼ごっこしたり、かくれんぼしたり、本を読み聞かせたり、と散々遊び倒した。


 その間、俺はといえばそガキ共に隙あればつつかれるわなで回されるわもみくちゃにされてと散々だった。


 今は別の部屋でカルナとエイの野郎にガキ共の面倒をみてもらい、俺達は休憩中だ。


「お疲れ様です。ふふ、大人気でしたね守護竜様」


「逆に何で姫さんはそんなに元気なんだよ? あれだけガキ共と遊び倒してよ」


「うふふ、子供達があまりに可愛いらしいものですから」


「答えになってねぇよ。はぁ、まったく次からふれあいコーナーのウサギやハムスターにはもっと優しく接することにするよ」


「ハムスター?」


「えっ! こっちの世界ハムスターいねぇの」


「あっいいえ、そんなことはありませんよ。確か、毛がふさふさしていて、体長五メートル程の――」


「ごめんそれ俺の知ってるハムスターじゃない」


 そんなどうでもいい驚愕の事実に俺が驚いていたら不意に姫さんの視線が何かを見た、追ってみるとボウズが一人扉の隙間からこっちを覗いていた。


「どうしたの坊や? なにかお話ですか」 


 姫さんが声を掛けても恥ずかしがってるのか知らないが、ボウズはチラチラとこっちを伺うばかりで、なかなか扉の陰から出てこようとしてこない。


 俺としてはじれったくて仕方なかったが姫さんはじれる様子もなく根気よく待ち、しばらくしてようやくボウズが扉の陰から出てきた。


「あら? あなたさっきの」


 ん? さっき?


 姫さんの反応を受けてよく見てみれば確かにどこかで見覚えがあるような……あっ!


「来る途中で、花を売ってたボウズ!」


「あうっ! ……」


 しまった、またボウズが扉に隠れてしまった。


「もう、驚かせてはいけませんよ守護竜様」


「……面目ねぇ」


 姫さんは俺をたしなめがらボウズの方へ気持ち普段よりゆっくりと歩み寄り、屈み込み視線を合わせながら声を掛ける。


「さっきは綺麗なお花をありがとうございました、またあえて嬉しいです」


 姫さんに話しかけられてぎこちなくうなうなずいて見せるボウズ、どうもいっちょ前に緊張してるらしい。


 ちなみにさっきこいつから姫さんが買った花だか、さすがにいつまでも手に持っていたら萎びるんで、今はカルナが用意した小瓶に活けてもらっている。


「……あのね、もうすぐカルさんの誕生日なんだ」


「ええ知っていますよ、確か三日後でしたでしょうか」


 ガキがこくりと黙ってうなずく。


「ぼくここに来たばかりだけど何かお礼がしたくて。それで誕生日プレゼントを買ってあげたくて、だからお花を売ってたの」


「そうなのですか? えらいですね~、そんな素敵な事に使ってもらえるのなら、私もお花を買って良かった」


 姫さんの手が伸びて頭をそっと撫でるとボウズは気持ちよさそうに目を細めて、へへっと照れ臭そうに笑った。


 ……いや別に俺はなんとも思っていない。姫さんが俺以外の誰かを撫でたからってなんとも思ってない、本当に、いやマジで。


「それでね女王さま……あのね……」


 急に何やらもじもじし始めたと思ったら、ボウズはズボンのポッケかから何かを取り出して姫さんに差し出した。


 それは花を編んで作った指輪だった。


「あらあら素敵な指輪、坊やが作ったの?」


「うん、それでね……あのね……」


 またもじもじ、まったくじれったい。さっきからいったいなにをそんなに――。


「ぼくとケッコンしてください!」


 …………………………………………………なーに言ってんだこのガキは?


 あんまりに予想外の発言に思わず頭が真っ白になってしまった、まったくこっちの世界のガキは随分とませている。


「ぼく優しくて、キレイな女王様が大好きです! だからこれを受け取ってください」


 年端もいかねぇガキの分際でプロポーズなんざ俺なら鼻で笑っちまう所だが、優しい姫さんのことだどうせいつもみたいにニコニコ笑いながら受け取るに決まってる、そう思っていたが。


「ごめんなさい」


 意外にも子供に向けるような物じゃない真面目な声で、はっきりとそう言って姫さんはボウズに向かって深く頭を下げた。


「私のことを好きだと言ってくれたのはすごく嬉しいです、こんな素敵な指輪まで用意してくれたことも。でもごめんなさい、私はそれを受け取る事は出来ません、その指輪をはめるべき場所はもう埋まってしまっていますから」


 頭を下げたまま姫さんがもう一度ごめんなさいと謝る。


 それを聞いたボウズは少しの間その場で茫然自失といった感じだったが、やがて何も言わずどこかへと走り去ってしまった。


「……随分と大人げねぇじゃねぇか、ガキ相手にらしくもない」


「そう、かもしれませんね……でもやっぱり、受け取る事は出来ませんから」


 そう言って姫さんの右手が、そっと左手薬指のリングを撫でる。


「それにしたって、あそこまでしてやらなくても良かっただろうに……」


 自分で言ったその言葉を聞いて、それが少し苛立った物だって気がついた。


 何でいらついているのかは、よく分からん。


 別にあのボウズに対して同情してるって訳でもないだろうに、我ながら意味不明だ。


「姫様、守護竜様、何かあったの?」


 他の部屋で子供達の相手をしていたはずのカルナが部屋に顔を出すなりそう尋ねた、その後ろにはエイの姿もある。


「今泣きながら走っていくコルリとすれ違って、当人は何でも無いって言い張ってたけど」


「いえ、その……えっと」


 姫さんが応えにくそうに口ごもったが、そんな様子にカルナはすぐになにかを察したようで、何やら笑みを浮かべる。


「あ~なんだ、いつもの? 相変わらず姫様も罪な人だこと、ねぇエイ?」


「何でそこで俺に話し振るっすかカルさん」


「まぁでもしょうがないか~。姫様に初恋を散らせるのはここの男子の通過儀礼みたいなものですもの、ねえエイ?」


「だから、なんで、そこで俺に話を振るんっすかってば!」


「さぁ、何ででしょうね~」


 カルナが楽しそうに笑い、エイの野郎が拗ねた顔でそっぽを向いた、それだけで大体の事は察しがつく、ホントどいつもこいつもませている。


「随分と、ここのガキ共に懐かれてるみたいだな姫さんは」


「ええまぁ、ここには何度か遊びに着させていただいてましたから」


「ふーん、そうなのか? ここって何か国にとって特別な場所なのか?」


 わざわざ国の主である女王が何度も訪れている様な場所だ、なにかよっぽど格式高い場所なのかと思ったが姫さんは静かに首を横に振った。


「いいえそのような事ではありません……でもそうですね、少なくとも私にとっては特別な場所です」


 なんだか意味深な言い回しにどういうことなのかと思ったが、その答えは聞くまでもなくなんとなく察した。


 姫さんの右手が左手薬指の指輪をそっと撫でたからだ。


「守護竜様ここはね、姫様とその旦那様、先代国王ロイド様が設立された場所なの」


 まるで答え合わせの様に、カルナが何かを懐かしむようにそう言った。

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