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最強無敵の守護竜に転生したけど世話焼きお姫様(32歳未亡人)がウザすぎる!  作者: 川平直
第5章

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55話 迷いが俺の胸の内を掠める

 また襲われても面倒なんで襲ってきた連中はその辺にある手頃な蔓や木の根を魔導で操って適当にふん縛りって転がしおく。


「で? こいつらは結局何なんだ? 心当たりくらいはあるんじゃねぇのか?」


 皮肉な話しだがさっきの戦闘がいいクールダウンになったんだろう、上っていた血が引いて多少落ち着いて物を考えられる様になった頭でそう尋ねると、スバル女王はさっきまでとは打って変わってバツの悪い顔で答えた。


「……その件をお話するには、まずこの国の現状についてお話しさせてください」


 そんな前置きから始まったのは、今現在ネネイル王国が直面しているある問題についてだった。


 前女王が薨去し現女王のスバルが王座に就いて以降、目覚ましい発展を進めたネネイルだったがその実、現在国は大きく分けて二つの勢力に分断されているらしい。


 一つは女王スバルを初め国の若者達を中心とした技術発展と国の改革を推し進める推進派。


 もう一つはそんな推進派の行いを良しとせず、古くからの風習や文化を尊重するべきと主張する年長者を中心とした保守派。


 内乱にこそ発展はしていないものの今この国は推進派と保守派二つの勢力がにらみ合いが続いている状態なんだという。


「二分されていると言っても国民の多くはボク達の事を指示してくれています。保守派にしても争いを起こしてまで意見を主張するような人は人はごく少数です」


「逆に言やぁ、ごく少数はそういうことをしでかす連中もいるって訳だ」


 俺の指摘にスバルが神妙な表情でうなずきを返す。


「過激派の多くは大陸の人々に対して強い敵愾心を持っている者もいます。今回皆さんを襲撃したのもきっとそんな過激派一派の手の者とみて間違いないと思います」


 なる程、なんとなくだが話しが見えてきた。


 状況を整理するに俺をあの時、転移魔導で飛ばさしたやつは保守派とか言われてる連中の刺客で、今襲ってきた連中はその仲間、目的はスバル女王やアカネ達が推進する他国への交易拡大の妨害と、ざっとこんなところだろうか?


「……本当なら事情を全てお話しした上で皆さんを招待するべきだったことは理解しています。皆さんからすればだまし討ち同然だったことでしょう――本当に申し訳ありません」


 深々と頭を下げて頭を下げるスバル女王、確かに何も知らせず呼びつけておいてこの様は姫さん達に対する不義理であることは間違いない俺だって文句の一つや二つ言ってやりたいところだが今はそんなことより優先しなければならないことがある。


「スバル女王、あんたさっき転移の魔導がどうとかって言ってたけど、どこに飛ばされたか分かるのかか?」


「えっ、いや、えっと、ごめんなさい、ボクも具体的な場所までは。ただあの術がアカネが開発していた物と同じなら、転移出来るのは飛ばされた場所から半径一キロ圏内のはずです」


「分かった。ちょっと待ってろ」


 ワタワタしているスバル女王をしり目に、俺はその場で高く飛び上がった。


 空へ高く高く、森の木々を超えて飛び上がり適当な高度になったところで辺りを見回してみれば、スバル女王言ったとおりざっと一キロくらい離れた場所にさっきまで俺達の居た港が見えた。


 おおよその方角を確認して高度を落としスバル女王の待つ場所へ戻る。


「大まかな場所は分かった、姫さん達が心配だとっとと戻ろう」


 と、言ったは良いがどう戻ったもんだろうか。


 俺一人ならひとっ飛びで直ぐに戻る事は出来るが今ここにはスバル女王も居る。


 今の状態じゃスバル女王を連れて飛ぶには出力が足りない、せめて覚醒体になれればなんも問題はないんだが。


「そうだ! スバル女王あんたも守護竜の巫女なんだろ、だったら俺を変身させられないか?」


「! やってみます」


 善は急げだ、スバル女王は早速覚醒の詠唱を奏で始める、右脚の付け根辺りに聖痕が輝きを放つ。


 スバル女王の手が俺に触れる。聖痕から放たれた光が俺の力になって覚醒体への変身が始まる……筈だったんだが。


「……ダメ、みたいだね」


 失意の声を上げながらスバル女王の手が離れる。


 いくらスバル女王が詠唱を唱え聖痕が輝こうが一行に俺の体に変化は起きなかった、やっぱり同じく国の守護竜と巫女同士じゃないと儀式は成立しないらしい。


「そう都合良くはいかねぇか、くそッ」


 こうしてる間に姫さん達に危険が迫ってるかもしれないってのに。


「……守護竜様、アンヌ様の元に戻って上げて下さい」


 スバル女王が何か覚悟を決めたような顔をして俺にそう言った。


「守護竜様お一人なら直ぐに戻る事が出来るのですよね? どうかボクの事は気にしないで、ボクだってこれでもこの国の女王ですある程度の土地勘はありますし何よりこれは本来ボク達の問題です、だから」


 どうか今すぐアンヌ様の元へ。スバル女王が決意の表情でそう告げる。


 正直本音を言えば俺だってそうしたい、スバル女王を置いてでも一刻も早く姫さん達の所へそう言う思いが無いわけじゃない。


 たださっきの連中みたいなのがもう居ないとは限らない以上、もしまた連中に襲われればきっとスバル女王だけじゃ一溜まりもないだろう、だが――。


 迷いが俺の胸の内を掠める。


「……悪ぃな――」


 でもそれはほんの僅かな間だけ、答えは直ぐに決まった。


「――あんたを置いていく訳にはいかねぇ、一緒に姫さん達の所に戻るぞ」


 そう言うとスバル女王困惑したような表情を浮かべて「でも」と逡巡する様な声を上げる。


「でももヘチマもねぇこんなところに女一人おいてどっか行くなんてそんな軟派なことができっか。それに姫さんの側にはセリスと癪だがルリルのやつだっている、だから問題ねぇ」


 最後の一言は正直自分に言い聞かせていた。


 心配ないなんてことはない、でももしここでスバル女王を見捨てて戻ったら姫さんはなんて言うだろうか? なんてそんなこと考えるまでもない。


 なんでそんな酷いことをしたんですか! って俺を叱るに決まっている。


 それでもスバル女王は遠慮しようとする様子を見せたが、何かを言い出す前に俺はキッと目をとがらせて。


「悪いと思うならグダグダ言う前に足動かせ足! 途中で疲れたとか吐かしたらそん時はお望み通り置いてってやるからな!」


 そう言ってやるとスバル女王はわずかに逡巡した後と覚悟を決めた顔を上げて一歩足を踏み出した。



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