52話 ファンタジーってのはこういんじゃないとな
「守護竜様、守護竜様」
「ん?」
姫さんの声で目を覚ますとそこはいつぞやのリムジンの中だった。
眠った効果はあったみたいで、大した時間は経っていないはずだがそれでも眠る前よりも頭は冴えているような気がする。
「お休み中の所ごめんなさい、ですがもうすぐ着くというお話でしたので」
そう言って姫さんが外へと視線を向けるので、俺もそれに習って窓の向こうを覗き込んでみる。
リムジンが向かう先、そこには見上げる程の高さの巨木とそれと一体になるように立てられた巨大な建物があった。
あれがきっとこの国の王城であると、見るだけで理解できる威圧感と神秘性を感じさせるその場所に俺達を乗せたリムジンは真っ直ぐに向かっていく。
城の正面にリムジンが止とまり、正門まで続く長い階段その前に姫さんが立った瞬間その階段が上へと向かって動き出した。
初めて見るエレベーターに姫さんは達は驚いていた様だが、俺はもう慣れてきてこの程度の事では大して驚かなくなってきた。
慣れないエレベーターに若干つんのめりながら姫さん達は恐る恐る乗り込み、城の正門まで運ばれて行くとそこにはライレイが俺達の事を待っていた。
「フィロール王国の皆様お待ちしておりました」
当たり前の様に独りでに開く城の扉をくぐり抜けてすぐ目に飛び込んできたのは巨大ならせん階段、巨木をくりぬいて石壁を敷き詰めたような壁面にそって作られた螺旋階段は見上げても終点が見えないほど遙か彼方まで続いている。
「まさかこれを上る訳じゃないでしょうね」
螺旋階段を見上げながら戦々恐々とした様子でルリルがポツリと零す、まぁ言いたくなる気持ちは痛いほど分かる。
ただそんなルリルの言葉にライレイはぶんぶんと大きく首を横に振る。
「いえいえいえ、そんな。皆様にその様な事はさせられませんよ、さささこちらに」
そう言ってライレイが向かった先にはあったのは大体半径三メートルくらいの魔法陣らしきものが書かれた場所だった。
全員が乗った事を確認するとライレイが近くにあった石版に触れると、淡く輝きながら描かれた床ごと魔方陣が浮上する。
「昇降機と呼ばれている魔導具です。これもスバル様とアカネ様が考案されて開発された者なんですがこれが出来るまで城内の移動が大変で大変で」
そんな話しをしている内に目的地に着いたのか、昇降機は動きを止めて俺達が降りると一人でに元の位置へと戻って行く。
昇降機降りた後も、ライレイの案内で俺達は城内を進む。
年期を感じる石壁や床の所々を巨木の枝が突き破る様に伸びる城の通路には緑の香りがして、室内にいるはずなのにまるで森の中にいるみたいな気分になる。
そうそうファンタジーってのはこういんじゃないとな。
久々のファンタジー然とした雰囲気に謎の安心感を覚えていると大きな扉の前に行き当たりライレイがその前で足を止める。
「スバル様! フィロール王国の皆様方をご案内して参りました」
「案内ありがとう。入ってもらってくれ」
「失礼致します!」
扉の向こうから聞こえたスバル女王の声にライレイが答えて目の前の扉を開け放った。




