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最強無敵の守護竜に転生したけど世話焼きお姫様(32歳未亡人)がウザすぎる!  作者: 川平直
第5章

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48話 散歩でもしながら話しましょうか

 連れてこられた宿は流石と言うべきこか豪華な高層ホテルの最上階だった。


 セリスやルリル達使用人は別に用意された部屋へ案内され部屋には俺と姫さんの二人だけ。


 姫さんは部屋の奥に見えるあたりを一望できる大きな窓から、星空のように輝くネネイルの夜景を見下ろしながらポツリとつぶやいた。


「なんだか、まるで別の世界に迷い込んでしまったような気分です」


 実際に元の世界からこの世界へ迷い込んだ俺からするとなんだか皮肉めいて聞こえるが、ただ今の現状を端的に表した言葉であるのも確かだ。


 俺達が普段暮らすフィロール王国は中世のヨーロッパをベースにしたような文化で出来ていた。多少俺が元いた世界の影響を受けている様なところは幾つかあったが、それでもいわゆるオーソドックスなファンタジーな世界観から逸脱するような技術は無かったように思う。


 それがこの国はどうだ? 殆ど俺が元いた世界と見まがう程、下手をすればそれ以上の技術力と文化を築いている、高低差で耳が痛くなりそうな技術格差だ。


「守護竜様が元々いらした世界もこれほど技術が進んでいたのですか?」


「うん、まぁ大方はな」


「そうですか、やっぱり守護竜様はすごいお方なのですね」


 別にすごい世界に生きてたからってすごいわけじゃねぇだろと思ったが、そう言う姫さんはなんだか少し寂しげだった。ひょっとして、自分の国との技術の差に落ち込んでいたりするんだろうか? だが姫さんがそんなこと気にするだろうか?


 理由は分からん。分らんが落ち込んでるっていうのなら何か励ましてやりたかった。


「……俺はフィロールの空のほうが好きだがな」


 俺の言葉を受けて姫さんが眼下に向けていた瞳を夜空へと向ける。


 地上の煌びやかさに塗りつぶされた夜空には星はなく、ただ暗闇がそこにあるだけだった。


 最初俺が城から逃げ出そうとした時に見上げた空。元の世界じゃ決して見ることのできなかった宝石をぶちまけたみたいな満点の星、あの感動はまだ俺の心の中に色濃く残っている。


「まぁこっちのほうが色々進んでんのは確かだけどよ、姫さんの国にだって良いところはたくさんあんだろ」


「……ひょっとして、励ましてくれようとしてくれているんですか?」


「いや別に、そういうわけでじゃねぇというか、そうでもねぇというか……」


 図星を疲れた気恥ずかしさでうにゃうにゃ言っていた俺の頭を姫さんの手がやさしくなでる。


「ありがとうございます守護竜様。私はフィロール王国が守護竜様にとって退屈なんじゃないかと思っていたのですが、そう言ってもらえて嬉しいです」


 花が咲くみたいにふっと姫さんがほほ笑む。どうも俺が思っていたこととは違うみたいだったがなんにせよ喜んでくれたというのなら悪い気はしない。


「さてと。せっかくお時間もいただきましたし、私はこれから着替えもかねてお風呂をいただきたいのですが、守護竜様も一緒に」


「それだけは勘弁してくれ」


 即座に却下して側を離れると、姫さんは呆れたような顔で不満の声を上げた。


「またそうやって。恥ずかしがらなくてもよろしいですのに」


「毎度言ってるけど。別に恥ずかしがってるわけじゃねぇ! いいから早く入ってこいよ、長い船旅でまともに風呂も入れなかったんだろ? 俺も後でちゃんと入るって約束するから」


「……分かりました。残念ですけど大人しく引き下がりましょう。でも守護竜様も後でお風呂にはちゃんと入らないとダメですよ」


「へいへい、分かってますよ」


「もう、しょうがない方なのですから」


 困ったようなため息を口にしながら、姫さんが風呂場へと消えていくのを見届けて俺は改めて部屋の窓から外の景色を眺めた。


 外にはどこか未来的な雰囲気のあるビルが幾つも建ち並び、車の光が大地を走りまわっている姿は流れ星の様だ。


 そんな景色を眺めていると、さっきの姫さんじゃないが本当にまた別の世界に転生してしまったんじゃなかろうなと疑いたくなる。


 と、そんなセンチメンタルなことを考えていた時だった。


 あーテス、テス。聞こえてる?


 突然頭の中で聞き覚えのある声が響く、この声は確か――。


「ネネイルの守護竜か!」


 はいそこ、守護竜って呼ばないでって言ったはずだよね? あたしを呼ぶときはアカネにしてちょうだい。親しみを込めてアカネ様、アカネちゃんでも可。


「面倒くせぇな、なんでもいいわ! さっきからこれ気持ち悪ぃんだよ」


 アニメや漫画なんかじゃよく見る奴だが、実際に頭の中に他人の声が聞こえるというのは、思考に割り込まれている様な違和感があって想像以上に気持ちが悪い。


 やだやだ口が悪いんだから、まっ話しが早いのは嫌いじゃないけど。いいわ、ちょと待ってなさい今そっちに行くから。


 ブツンと回線が切られたような音がしたかと思うと、頭の中にネネイルの守護竜もといアカネの声はしなくなった。


 なんだったんだいったい? こっちに来るとか何とか言っていやがったが。


「はぁい。お待たせ」


「のわっ!」


 突然声を掛けられて俺は思わず驚きの声を上げてしまった。


 完全に油断していたというのもあるが、俺が驚いたのはそれだけの理由じゃない。


 アカネが突然、俺の目の前に姿を現したからだ。


 さっきまでは何も無かった筈の場所にまるでシーンをスキップされたみたいに忽然とアカネが現れ、驚く俺を見ながら何か満足げな顔を浮かべていやがる。


「ふむ、良いリアクション。登場に趣向を凝らした甲斐があったわ」


「何が趣向だふざけやがって。てかそれどうやって」


「これも魔導よ、転移魔導、少し前に開発したものだからまだ試作段階で大した距離飛べないし不安定で連続で使えないけど。どう? 驚いたかしら?」


「驚いたもなにも。テメェとんでもないことをさらっと」


「あら? 別に大したことはしてないわよ。これくらい貴方も少し練習すれば出来るようになるわよ」


 あっさりとそう言ってくるが、俺にはアカネの言う転移魔導がどういうものなのか見ただけじゃ分からなかった。


 この世界にこの体で転生して以来魔導は自由に使えたし初めて見るものでも見ればある程度どういうものか理解が出来た、それなのにアカネが今やったことの理屈に見当がつかない。


「で? 急に何しに来やがったんだよお前、まさか驚かしてからかいに来たって訳じゃねぇだろうな?」


「まさか。ただ守護竜同士ちょっとお話でもしないかと思って」


「お話って、またかよ。デインの奴といいそんなに俺の話が聞きたいかね」


「あら? デインの鴉くん? アタシあの子のことちょっと嫌いなのよねー」


「合ったことあんのか?」


「二年くらい前に一度だけ。頭のいい子なんでしょうけど本音が見えなくって、あたし腹の探り合いって嫌いなの。その点、貴方は本音ダダ漏れって感じで、嫌いじゃないわよ」


「おい、それは遠回しに俺のこと馬鹿にしてんのかテメェは」


「まぁまぁ。本当にアタシはただ話しがしたいだけなんだから、仲良くしましょ」


 とか言いつつ馬鹿にしていること自体は否定しない辺り良い性格をしている。


 まぁ、かく言う俺も明け透けなのは別に嫌いじゃない、下手なおべっか使われるよりは万倍ましだ。


「まぁそう言うわけだからちょっと外に出ない? どうせなら散歩でもしながら話しましょうか、時間はあんまり取らないから」


「散歩?」


 そう言われてチラリと俺は視線を姫さんがいるはずの風呂場へ向ける。


「大丈夫よ、ここの警備は万全だから。少しくらい離れた所で心配するような事なんて起きないって」


 アカネはそう言うが俺は別にそういうことを心配した訳じゃない。


 普段姫さんの元から離れるときは一言断ってから出掛ける事になっている、しかし生憎姫さんは今入浴中だ。


 風呂入ってる所に声を掛けるのは気が引ける……まぁ少しくらいなら問題ないだろう。


「わかった、付き合ってやるよ」


「決まりね。それじゃあ行きましょうか」


 そうして俺はアカネに促されるがまま窓から部屋の外へと向かおうとして。


「デっ!」


 窓に鼻面を強打して悶絶した。


「なんだ、貴方壁抜けもできないの?」


「ちきしょうめ」


 またさらりととんでもないことを、なんだよ壁抜けって。


 もはや煽りにしか聞こえないアカネの言葉に悔しさを滲ませながら、今度はしっかり窓を開けてから俺はホテルの外へと飛び立った。

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