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最強無敵の守護竜に転生したけど世話焼きお姫様(32歳未亡人)がウザすぎる!  作者: 川平直
第4章

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39話 その名で呼ばれていたのがまるで遠い昔の事の様な気がした

「……そう警戒しないでください。ちょっと言ってみただけです、私だってあなた達とこの場で事を構えたいだなんて思ってはいませんから」


 デインの守護竜は冗談めかした声でそう言って、小さく笑って見せる。その様子にはまるで邪念は感じられず、まるでさっきまでの緊張感が嘘だった様に霧散していく。


 冗談……だったのか?


 理解が追っつかなかった頭がようやく状況を飲み込み始める。俺は、こいつの事を警戒しすぎていたのだろうか?


 バツが悪くなって一言謝るとデインの守護竜はお気になさらないでくださいと穏やかに返した。


「私もさっきの言葉は軽率でした。あんな事件があったばかりなんだ、貴方が私の事を警戒するのは当然なのに」


 そう言ってデインの守護竜は丁寧に頭を下げた後、空気を変えるためだろう殊更明るい声色で「話は変わるのですが」と言葉を続けた。


「よければ、貴方の名前を教えてくれないでしょうか?」


「名前?」


「そう、厳密にはこちらに来る前、私たちが元住んでいた世界で生きていた頃の名前です。実は他の守護竜に会ったら聞いてみたいと、前々から思っていたんですよ」


 そうか、言われてみればこっちに来て以来、守護竜様としか呼ばれてばかりで自分の名前なんてもう随分と呼ばれていなかったことに今更気が付く、今まで特に不便を感じていなかったから気にしていなかった。


「俺の名前は――」


 そうして俺は自分の名前を口にした。


 こっちに来て一度も口にしたことがなかった自分の名前はいざ声に出してみると妙に懐かしいような落ちつかないような、なんつうか奇妙な気分だった。


 向こうにいた頃は何よりも馴染みのある言葉だったはずなのに、その名で呼ばれていたのがまるで遠い昔の事の様な気がした。


 ただ、それに対するデインの守護竜の反応はいやにあっさりしたもんだった。


「……そうか」


 そのたった一言、それだけ言ってデインの守護竜は軽く俯いてだんまりだった。聞いといて流石にそれはあんまりなんじゃねぇかと文句を言ってやろうとしたその時。


「家族はいなかったのかい、両親とか兄弟とか」


 俺が何か言うよりも早く滑り込んできたその問いに、俺は文句を言うタイミングを逃した。


 また急に話題を変えられたことに何か釈然としないものを感じるが、こんな事で臍を曲げるのも恰好が悪い。


「父親と母親、あとは弟が一人」


 正直にそう答えてやるとデインの守護竜はまた「そうか」と一言だけだ。


 さっきからいったいなんなんだ? 人が質問に答えてやってるんだからもうちょっとこうなんかあるだろうに、感じの悪い。


「家族と離ればなれになって心配じゃないですか?」


「別に。親とは殆ど勘当同然だったし、寧ろ俺がいなくなって清清してんだろうよ」


「……すみません、無神経なこと聞いてしまったみたいで」


「気にしねぇよ、普通はそう思うだろうしな」


 不要な気を使わせちまっただろうか? でも俺にはどうしてもあの両親が俺の死で悲しむ姿が想像できない。


 いないものとして扱ってきたものが本当にいなくなっただけ。寧ろ俺が死んだ事なんて気づいてすらいないんじゃ無いのか? 割と冗談抜きでそう思えた。


「ま、んなことはどうでもいいんだよ。そんなことよりも――」


 お前の名前はなんなんだよ。俺はそう聞こうとした。


 人に名乗らせたなら自分も名乗るのが礼儀ってもんだ。それにこいつが向こうではいったいどんな名前でどんな人間だったのか純粋に興味もあったんだが。


「さて、そろそろ二人の話も落ち着いた頃かな」


 そう言うなり俺が質問を口にするよりも早くデインの守護竜はその体を浮かび上がらせてさっさと姫さん達の所へと飛んでいってしまった。


 急にはしごを外されて、俺の疑問は宙ぶらりんのまま取り残される。


 気になるのならまた聞けば良いだけなんだが、こうして一端落ち着いてしまうとわざわざ改まって聞くような事でも無いような気もしてくる。


 結局俺は名前を聞くことを諦めて、仕方なくデインの守護竜の後に続いて姫さん達の元へと向かう。


「楽しいですか? エリザ」


 デインの守護竜が優しく声を掛けると、皇女であるエリザは向日葵みたいに明るい笑みを浮かべた。


「ええ! とってもッ。わたくし今まででこんなに楽しいお茶会は初めてですわ」


「そうか、それはよかったね。でもそろそろ帝国へ戻らないと」


 デインの守護竜がそう言うとエリザは残念そうに俯いてしまう。


「もうそんな時間なんですのね」


「ごめんよ、エリザ。だけどいつまでもここにいるわけには行かないんだ」


「ええ、分かっておりますわ。皇帝であるわたくしがいつまでも城を留守にしている訳には参りませんもの」


 口では物わかりよくそう答えるエリザだったが、その声からはあきらかに名残惜しさが隠し切れていない。そんなエリザに姫さんが声を掛ける。


 姫さんはドレスが汚れる事も気にせずその場で屈み込むと小さなエリザに目線を合わせながらにっこり笑う。


「またいつでも遊びにいらしてください、今度は国の使者としてではなく良き友人として。それでその時はまた一杯お話ししましょう、私もエリザ様に話したいことも見せたい者もまだ沢山あるのですから」


 姫さんが微笑みながらそう言うと、落ち込んでいたエリザの顔に少しだけ元気が戻る。


「分かりました。その時は帝国自慢の紅茶を用意していきますわ」


「それなら私も、今日エリザ様におほめ頂いたお茶菓子をたくさん用意してお待ちしていますね」


 そんなささやかな約束と共に王国と帝国。二つの国の女王と皇帝のお茶会は幕を閉じた。


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