第79話 崩壊の果てに立つ者
空が、白んでいた。
戦いの余波が静まり、街に朝が戻りつつある。
優はその中心に立ち、静かに息を吐いた。
崩れ落ちたイェルネスの残骸は、すでに光の粒子へと還りつつある。
「……完全に消滅したな」
隼人が呟く。
その声は、どこか空虚で、けれど確かな“納得”が滲んでいた。
「これで一体目。だが、終わりじゃない」
優はゆっくりと視線を巡らせた。
「イェルネスが副管理者なら……本体がどこかにいる。
夜刃財閥の中枢、あるいは──もっと上層に」
「トップ……か」
美月の声に、微かな震えが混じる。
彼女もまた、管理者の力を間近に見ていた。
人の理を超える存在。組織とは名ばかりの“神性”の領域。
「……でも、わたしは行くよ。ここまで来たんだ」
「同感だ」
優は頷く。
「この力は、壊すためのものじゃない。
守るために進化した。そう信じたい」
その手の中には、イェルネスの残滓から回収した一片の光核があった。
死霊にはならなかったそれは、“管理者の記録”を宿している可能性があった。
「これは……?」
「クロノス。調べられるか?」
「可能だ。解析──開始する。だが、警告する。
“存在の根幹”に触れる恐れがある」
「構わない。俺はもう、“踏み込む側”の存在だ」
優の瞳は、かつての“無力だった少年”のものではなかった。
「……それと」
優はゆっくりと振り返った。
「隼人。おまえの力も、もう一度、借りる」
「構わないさ。……あいつの兄としてもな」
一瞬、美月が振り返った。
けれど隼人は、軽く肩をすくめるだけだった。
「ただの自己満足だよ。今は、名乗るつもりはない」
「……勝手にしろ。でも、ありがとう」
美月の声は柔らかく、けれど芯があった。
その三人を中心に、再び風が流れ始める。
夜刃財閥との“決戦”へ向け、
物語は新たな段階へと動き出していた。




