第75話 霊脈の核心
「今ッ……!」
美月が叫んだ。
瞬間、三方向から同時に放たれた攻撃が、空間ごと歪ませる。
ザグエルの咆哮による霊圧の衝撃。
隼人の死霊剣が描く、鋭利な霊力の波。
そして優が統合死霊を束ねて放つ、黒い閃光。
だが。
「無意味」
イェルネスの無機質な声が、すべてを拒絶した。
銀の装甲が波打ち、次の瞬間には全方位に展開される防壁。
まるで空間そのものが壁となったかのように、三人の攻撃は弾かれ、霧散する。
「くっ……!」
優が奥歯を噛む。
「やっぱり、ただの力じゃ通らねぇ……!」
「なら、どう通すかを考える」
隼人が冷静に応じる。
「美月、お前の視えてる“核”の位置は?」
「……中央じゃない。奴の“下”、霊脈に直接接続されてる……コアの中にある」
美月の視界には、空間の“裏”に流れる霊脈の一部――
その中心に、黒く蠢く《収束点》がはっきりと視えていた。
「そこを破壊すれば、機能停止に追い込める」
「だが、核へは直接干渉できない。奴の防壁は空間に刻まれている」
優の脳裏に、先ほど弾かれた攻撃のイメージがよみがえる。
(物理も霊力も、正面からは通じない……なら)
「……間接的に、コアに影響を与える方法がある」
美月が目を開いた。
「霊脈干渉と、空間魔力逆位相展開の併用。私に任せて」
彼女の足元に再び展開された多重魔術陣。
刻印が幾重にも重なり、まるで曼荼羅のような光の円を描いていく。
「空間の奥にある“核”に魔力を届かせるには、現実位相からの強制突入しかない」
「成功確率は?」
「知らない。でも、やらなきゃ全滅」
その言葉に、隼人と優は目を交わした。
「任せた」
「お前の魔力、信じてる」
「ありがと」
美月の瞳が、すっと細くなる。
彼女の魔力が、空間の波に共鳴するように脈動を始めた。
「いくよ、イェルネス……!」
死霊たちが叫ぶように吠え、ザグエルが再び咆哮した。
戦いは、ついにコアへの“干渉”へと突入する。




