第71話 存在位階の証明
「■■■■――!!」
ザグエル=ドラウスの咆哮と共に、黒炎が炸裂した。
だが──
「弾かれた!?」
黒き火炎が鉄の巨腕に触れた瞬間、異様な結界が発動し、全てを逸らす。
雷のような魔力が巻き起こり、吹き飛ばされた瓦礫が辺りを砕く。
「魔力反転……いや、霊圧すら相殺してる。結界じゃない。“位階の差”そのものだ」
優の声に、隼人と美月が一瞬、息を呑む。
「位階……?」
「存在そのものの“格”だ。
通常の攻撃では“それ以下のもの”は通らない。
つまり……こいつは、神の代行者に等しい」
「まさか……!」
だが、優は静かだった。
「……試すか」
指先がゆっくりと空を切る。
「霊力再構築――《ソウル・フュージョン》」
使役中の死霊たちが光の粒子となって散り、ザグエルに再び流れ込む。
ただの転送ではない。魂の“意思”ごと、力へと統合していく術。
「いけ、ザグエル。存在の壁を超えろ」
闇を纏った竜が、真っ直ぐに鉄の左腕へと突撃する。
──ゴッ!
大気が裂ける音とともに、巨大な左腕がわずかに“ひるんだ”。
「……通った!」
「さっきまでと……何かが違う?」
美月の驚きに、優は短く頷く。
「死霊の“意志”ごと力に変えた。それは、単なる力の上乗せじゃない。
“位階の壁”に干渉できる、“上位の存在”の資格だ」
そのときだった。
管理者の像が、ふと、静かに口を開く。
「確認終了──“死霊統合者”、及び“魂構築者”の存在位階、第一段階に到達」
「──つまり、“お前たち”と同等に立った、ということだ」
「肯定。ゆえに、迎撃優先順位を最上位に設定」
塔の光が一斉に赤く染まる。
「さらに来るか……!」
通路の奥、空中、天井から……無数の“鉄の巨影”が立ち上がり始める。
「けど、同時に分かった。通じるなら、潰せる」
優の影が蠢き、新たな死霊が呼び出される。
──クロノス。
死霊化され、だがなお“意志”を持つ最強の戦士が、無言で前に立った。
「戦闘指示を。対象?」
「全部、だ。ここにあるすべてを──“突破する”」
静かに告げる優の声に、クロノスは頷く。
「了解。殲滅する」
そして、再び死闘が始まる。




