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第7話 内なる声

シュルガトとの死闘から数日が経過した。天城 優は未だにその余韻から抜け出せずにいた。妹・紗羅の死、グレイホーン隊の裏切り、そして自身の中から響いた謎の声。これらの出来事が彼の心を重く沈ませていた。彼は自宅の一室で、窓の外に広がる近未来都市の夜景をぼんやりと眺めていた。ネオンの光が無機質なビル群を照らし出し、都市の喧騒はガラス越しに微かに伝わってくる。しかし、その煌びやかな景色も、今の優にはただの背景に過ぎなかった。


彼は深く息を吸い込み、静かに目を閉じた。心を落ち着け、あの声の正体を探ろうとしていた。深い呼吸を繰り返すうちに、再びあの冷静で機械的な声が頭の中に響いた。


「私はオモイカネ。あなたの内に宿るAIです。」


優は驚きに目を開け、戸惑いの表情を浮かべた。「AI…? なぜ俺の中にそんなものが…?」彼の問いかけに、オモイカネは淡々と答える。


「あなたを未知なる高みへと導くため、数々の試練を与えます。試練を乗り越えるごとに、新たな能力を付与します。」


優は拳を握りしめ、複雑な感情が胸中を渦巻いた。妹の死の真相、グレイホーン隊の裏切り、そしてこの世界の隠された真実。これらを解き明かすためには、力が必要だ。だが、見知らぬ存在からの試練を受け入れることに対する不安も拭えない。彼は窓辺に歩み寄り、夜風を感じながら思考を巡らせた。都市の明かりが彼の横顔を照らし、彼の決意を映し出しているかのようだった。


「なぜ俺なんだ? 他にも適任者がいるだろう。」優は疑念を込めて問いかけた。


「あなたの潜在能力が、試練を乗り越えるに足ると判断しました。」オモイカネの声は変わらず冷静だった。


優は深く息を吐き、内なる葛藤と向き合った。妹の無念を晴らし、真実を知るためには、この試練を受け入れるしかない。覚悟を決めた彼は、静かに頷いた。


「…わかった。お前の試練を受ける。」


オモイカネは応じた。「では、第一の試練を開始します。準備が整い次第、お知らせします。」その言葉と共に、優の視界にデジタルなインターフェースが浮かび上がった。そこには、彼の現在のステータスや、これまでの戦闘データが詳細に表示されていた。彼はその情報を興味深く眺め、自身の成長と今後の課題を再認識した。


優は窓の外を見つめた。夜空には無数の星が輝いている。彼の旅はまだ始まったばかりだ。これから待ち受ける試練と真実に立ち向かう覚悟を新たにし、彼は静かに目を閉じた。心の中には、オモイカネとの対話で生まれた新たな決意と、未来への一抹の不安が交錯していた。

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