第69話 都市が敵となるとき
ザグエル=ドラウスの咆哮が、街の霧を裂いた。
爆風のような圧力に、一体、また一体と実験体が薙ぎ払われていく。
だが──
「おかしい。こいつら……倒しても、すぐに数が補充されてくる」
美月の魔力弾が、迫る異形の頭を吹き飛ばしながら叫ぶ。
「自律増殖か。いや……街そのものが、供給源になってる」
隼人が低く唸る。
実験体たちはどこからともなく現れ、まるで都市そのものが“敵”として意志を持っているかのように動いていた。
「管理者は、街をひとつの“肉体”として構築している。
だから街の構造が生体ネットワークの代わりになってる」
優は影の中から複数の死霊を呼び出し、広範囲に展開。
「ただ倒すだけじゃ終わらない。“中枢”を断ち切らないと、際限なく湧く」
「その“中枢”ってのは?」
「──この都市の心臓部。中央塔。おそらく、あそこに管理者がいる」
優が視線を向けた先、霧を切り裂くようにそびえる巨大な塔があった。
「一気に突破するには、分が悪いな。数で削り潰される」
隼人の冷静な判断に、優も同意するように頷く。
「ならば──」
優の指先が影を指す。
「“霊力移送”発動」
彼の影から、使役中の複数死霊の力がザグエルへと流れ込む。
“死霊間で霊力を転送する”この能力──《死霊統合者》として進化した彼が得た新たな力だ。
「ザグエル、最大出力で突破口を作れ!」
「■■■■■■■ッ!!」
竜の咆哮とともに、黒炎が一帯を飲み込む。
辺り一面が焼け落ち、街の壁にすらひびが走るほどの衝撃波。
「今のうちに抜ける!」
優が叫び、隼人と美月もその後を追う。
瓦礫を踏み越え、焼けた通路を駆ける3人。
「……敵が、人間じゃないだけに躊躇がなくて怖いな」
「むしろ、管理者に意志がある方が厄介だ。都市そのものが“動く”なら、まだ序の口だ」
「まさか、この都市自体が……」
美月の声がかすれる。
「……そう。あの塔自体が、管理者の“器”なんだ」
優の言葉に、背筋が凍る。
まるで神話の中にでも入り込んだような、現実離れした構造。
「都市が敵で、塔が器で、管理者が神──か」
隼人が皮肉気に言う。
だが、冗談では終わらなかった。
塔の奥、霧の中から確かに──“目”がこちらを見ていた。
「来るぞ。次は、本体の“意志”だ」




