第66話 影の中の共闘
日が落ち、辺りを包むのは静寂と、風に揺れる瓦礫の音だけだった。
優は丘の上に立ち、破壊された戦場を見下ろしていた。
その背に、ふたつの気配──死霊となった高瀬隼人、そして美月。
「……やっぱり、変わったな。おまえ」
隼人が静かに口を開く。
すでに彼は人ではない。だが、その瞳には確かに“意志”が宿っていた。
「死霊使い、か。いや──もう、それじゃ収まらないか」
「……死霊統合者。名乗るつもりはないけどな」
優は肩をすくめた。だが、その言葉は確かに──変化の証だった。
魂の意志を受け継ぎ、記憶と願いを融合させて力へと昇華する存在。
死者とともに在り、生者を導く者。
もはや、ただの使役者ではない。
「兄さん……」
美月がそっと、隼人の方を見た。
「あの時、私を庇って……どうして、そこまで……」
「……兄だから、だよ」
即答だった。
「おまえを守れなくて、過去を悔やんで、それでも生き残った俺が……ようやく答えを出せたんだ。最後の一歩を踏み出す理由をくれたのは、間違いなくおまえだよ」
美月は、涙をこらえながら、頷いた。
「……これからも、そばにいてくれる?」
「もう、直接は触れられないけどな。でも、俺は優の影の中にいる。必要な時は、いつでも力になるさ」
「……うん。ありがとう」
優はそんなふたりを一瞥し、空を見上げた。
「夜刀財閥……次は、そことの直接対決が避けられない」
「だが、奴らを誘導している存在もいる。橘重工──おそらく、何か意図がある」
隼人が低く唸るように言った。
「複数の財閥が、それぞれ違う“神の意志”に沿って動いてるのかもしれない」
「創造された“管理者”たちが、完全じゃないなら……こちらにも付け入る隙はある」
優の声は冷静で、鋭い。
「そして俺は──その神の意志すら、超えていく」
その宣言に、誰も異論はなかった。
「じゃあ、次の目的地は?」
美月が問う。
優は、一枚の影を指先で弾いた。
「“北の街”。夜刀財閥の本拠地。そこに、次の答えがある」
風が、ふたりの髪を揺らす。
彼らの旅は、まだ終わらない。




