第61話 分断と共鳴
「くっ……!」
仮面の男が身を翻し、迫る光弾を剣で受け流す。
その一瞬後には、美月が短剣で小型端末を切り払っていた。
「こんな……何体いるのよ……!」
空間は歪んでいた。管理者による分断領域。
ここにはザグエルもクロノスもいない。二人だけの空間。
「援護、頼む」
「言われなくても!」
敵の動きは規則的だが、数が多い。
一体一体は死霊に劣る性能でも、立ち位置と射線の管理が完璧だった。
「無駄がない……。機械か、それとも……生きてるのか」
仮面の男の呟きに、美月が問いかける。
「ねえ……あなた、何者なの?」
「……!」
「さっき言ってた。『妹を守る』って──あれ、本当?」
一瞬、仮面の男の動きが鈍る。
その隙を突くように、敵が放った弾丸が彼の肩を掠めた。
「っ、すまない……!」
「ごまかさないで。私、気づいてる。あなた、私のこと……知ってるんでしょ?」
目を逸らさず、美月は言葉を重ねた。
「昔から……ずっと、誰かに守られてた気がする。何かの気配に助けられてきた」
「……」
仮面の男は沈黙する。
が、その目はどこか哀しげだった。
「言えない理由があるのは、わかる。でも……それでも、私は知りたい。あなたが、誰なのか」
「……美月」
はじめて──名前で呼ばれた。
「ごめん。今は……言えない。でも、必ず話す。全部、終わったら」
そう呟いた彼の背中は、どこか寂しげで。
だが、同時に──強く、頼もしかった。
「……信じる。信じるけど、絶対、逃げないでよ」
「逃げないさ。あの日から、ずっとな」
ふと──空間が揺れた。
「来るぞ!」
無数の端末が波のように押し寄せる。
その瞬間──再び、影が割れた。
「ッ!」
ザグエルが飛び出し、地を叩きつける。
その背にはクロノス。そして──優がいた。
「遅れてすまない」
その落ち着いた声が、歪んだ空間に響く。
「ここからが本番だ」




