表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/93

第58話 封印されし管理者

──冷たい空気が、肺を刺すようだった。


夜刀財閥・旧地下施設のさらに奥。

そこはまるで、世界から切り離された“異界”のような空間だった。


白く無機質な床、浮遊する魔法陣、そして規則的に脈動する壁面。


「空間が……生きてる……?」


美月が呟いた。


「ここだけ……世界の“内側”みたいな感覚だな」


仮面の男が周囲を警戒しながら言う。


クロノスが小さく頭を振った。


「これは……封印層ではない。“運用中”だ。稼働している」


「じゃあ──誰かが、まだ“ここにいる”ってことだ」


優が呟く。


影がうねり、ザグエルと死霊たちが自動的に布陣を取る。


そして──最奥の扉が、静かに開いた。


ガガガ……という金属の軋みの音。


そこに立っていたのは、たった一人の人物だった。


銀白の装束。神官のような印象を抱かせる風貌。

瞳は淡い青。だが、その奥には人間らしい“感情”が確かに宿っていた。


「──ようこそ。境界の最奥へ」


その声は穏やかで、優しげですらあった。


だが、優の全身に寒気が走る。


ザグエルが一歩も動けない。


クロノスが低く警告を発する。


「存在規模、規定外。……管理者クラス、確定」


「君が“天城優”か」


その男──世界の“管理者”は、静かに歩み寄る。


「私の仕事は、この世界の秩序を保つこと。だが、君はあまりにも“逸脱”している」


「逸脱……?」


優はその言葉に眉をひそめた。


「自我の拡張。死霊の支配。空間の跳躍。力の累積速度。……君はもはや、“人間”という枠を踏み越えている」


その声音に、確かな“恐れ”が滲んでいた。


「だから君を、排除しなければならない」


そう言いながら、管理者は右手を掲げる。


宙に浮かぶ光が、幾何学的に変形していく。


「俺を、排除……?」


優が一歩、前へ出る。


「この世界に、人間として生まれて──その中で進んできた俺を?」


「人間であろうとする意志。それ自体が、世界の調律に障る危険因子だ」


「は……そういう理屈かよ」


仮面の男が舌打ちをする。


「秩序だ調律だ言ってるが、要するに“自分たちの都合のいい形に戻したい”だけじゃねぇか」


管理者は、静かに目を閉じた。


「君たちは知るべきではなかった。ただ、それだけだ」


光が収束する。


場の空気が一変する。


だが、優は怖じなかった。


「じゃあ……力で、語ってもらうよ」


影がうねり、死霊たちが前へ。


ザグエルが咆哮を上げ、クロノスが殺気を纏う。


「俺の道は、もう定まってる。あんたがなんであれ──俺は止まらない」


──そして、戦端が開かれようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ