第49話 継がれし意志
──崩れ落ちる魔獣の骸。
《ザグエル=ドラウス》の咆哮が静まり、残るは瘴気の塵と、濃密な魔力の残響だけだった。
ノウマ級の中でも、明らかに“上位個体”と呼べるマガツカミ。
だがそれを、優とザグエルは真正面から叩き潰した。
「……やれるじゃねぇか、俺たち」
息を整えながら、優はゆっくりとマガツカミの核へと手を伸ばした。
──反応がある。
まだ完全に消えていない“魂”が、そこに残っていた。
「死霊化、できる……!」
優の瞳が輝く。
影が蠢き、術式が展開される。
ザグエルがその力を補助するように、竜の目を光らせる。
「《死霊契約──ノウマ級上位・制圧対象:起動》!」
瘴気が巻き上がり、黒い殻が形成される。
──そして次の瞬間、そこに一体の異形が再び姿を現した。
だが、今度は敵ではない。
死霊として再構築された存在──《従属影:ノウマ・レギオン》。
「……っ!」
優の全身に、“何か”が走った。
脳裏に直接響くような、冷たい衝撃。そして──次の瞬間、視界が一瞬歪んだ。
(これは──)
直感が告げていた。今、何かが“進化した”。
──《影流術式・進化条件達成》──
──《新能力解放:影縫刻〈マーク〉への瞬間跳躍》──
「転移……!」
驚愕と興奮が入り混じる中、優はふと、背後に立つ死霊たちを見渡した。
(まだ、先があるってことか)
「──よし、帰るか」
戦いを終えた今、久々に自分の足で歩いて帰れる気がした。
──が。
次の瞬間、全身に“警告”が走る。
(……っ、これは)
影の中で、わずかに揺れた“しるし”。
「……美月──!」
彼女につけていた影のマーキングが、異常反応を示していた。
躊躇う暇はない。
「──ザグエル、待機!」
そして、自らの手の甲に浮かび上がった影符を見据える。
「《影瞬転──飛影》ッ!」
空間が歪み、足元の影が裂ける。
次の瞬間、優の姿はその場から掻き消えていた。
向かう先は──あの少女のもと。
何が起きているかはわからない。だが、間に合わなければきっと後悔する。
──その瞬間、物語はふたたび動き出す。




