第48話 死霊継承《ネクサス・グレイズ》
時間は戻って、優がマガツカミと死闘を繰り広げている。
「ぐっ──がっ……!」
焼けるような痛み。避けきれなかった爪が、肩を裂いた。
マガツカミの咆哮が、空気を震わせる。
──こいつ、強すぎる。
「……っ、くそ……!」
天城優は、血を滲ませながら後退した。
相手は変異型のノウマ級。動きの鋭さも、魔力の質も、これまでの個体とは段違い。
加えてこちらは、死霊の主力をいくつか《暗部の使役》に割いていた。未完成の《ザグエル=ドラウス》に魂を注いだとはいえ、まだ不完全だ。
──負ける。いや、殺される。
そんな言葉が脳裏をよぎった瞬間──
(……やめろ)
優は、自分自身を叱咤した。
「俺は……こんなところで……!」
その叫びに、周囲の気配が微かに揺れた。
視界の端に、あのときの“異界”が映る。
──これは、試練。
オモイカネが言っていた。己の限界を超えたとき、真に“力”は芽吹くと。
そのときだった。
優の内に、何かが“開いた”。
《霊力変換回路──解放条件達成》
──意識に、名前が刻まれる。
《死霊継承》
「……これは──」
直感的に理解した。
“自分と契約した死霊の魂を、霊力として他の死霊に引き渡すことができる”。
まるで魂の遺産を紡ぐように──
(……なら、使うしかない)
優は手を掲げた。
そこに浮かぶのは、死霊と化した暗部の魂たち。
「すまない。でも──おまえたちの力、無駄にはしない」
死霊たちは、静かに光へと還っていった。
変換された霊力が、未完成だった竜型の核へと注がれる。
「目を覚ませ……《ザグエル=ドラウス》!」
──咆哮。
闇と森を纏った巨大な影が、優の背後で翼を広げた。
完成──ザグエル=ドラウス、完全起動。
マガツカミが、警戒するように身を引く。
「……いける」
優の目が光を取り戻した。
「叩き潰せ、ザグエル!」
次の瞬間、竜が咆哮と共に突撃する。
マガツカミの防御をいとも容易く破壊し、圧倒的な力で大地を抉る。
一方的な蹂躙。
未完成では成し得なかった、一撃の質と速度──
優はその様子を見下ろしながら、呟いた。
「……これが、俺の選んだ力だ」




