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第40話 導かれし影と、囁かれた真実

「……このあたりで間違いないはず、だよな」


優は薄曇りの空を仰ぎ見ながら、静かな町の裏通りに立っていた。かつては人通りもあったであろう通りは今やほとんど使われておらず、空き家が連なる中に古びた倉庫がぽつりと建っている。


扉には、新しすぎる鍵と監視用の魔導眼。


(廃倉庫……じゃない。誰かが出入りしてる)


優は周囲に気を配るように歩み寄った。直感が警鐘を鳴らしていた。何かがおかしい。外見は朽ち果てた建物のはずなのに、妙に整っている気配。


そして──


『警告。指定地点にて、強度は低いが持続的な魔力干渉を検知。過去の戦闘痕跡および封印魔術の痕あり』


頭に響くのは、オモイカネの冷静な声。


『また、倉庫内部と地下の気配に差異あり。通常の生活圏とは異なる波長。地下に独立した魔力領域が存在する可能性』


「……地下があるのか。財閥の裏ルート、ってことか」


優は、情報屋アカツキから受け取った地図を再確認した。都市の表層に存在しない“もうひとつの層”を描いたような線。それが、この場所を示していた。


(アカツキは言っていた。この町には表から見えない地下網があるって)


「財閥が、ここを使ってるとすれば……」


優の脳裏に、黒ずくめの男の姿が過った。美月を襲った謎の刺客──人間ではない“何か”をその身に宿していた異形の存在。


(もしかして……いや、まだ断定はできない)


黒い連想が形を取り始める中、優は倉庫には近づかず、脇道へと足を向けた。真正面から挑むのは今ではない。いま必要なのは、確かな情報と冷静な判断。


──その裏で、別の影もまた動き始めていた。


「……追跡対象、確認。接触は避け、行動パターンを監視する」


倉庫の屋根裏。そこに潜むのは、夜刀やと財閥に属するもうひとつの“暗部”。彼らは、優の存在を警戒しつつも、まだその正体には辿り着いていなかった。


一方、優の思考もまた動き続けていた。


(アカツキの言葉……“情報は命を救う。あるいは、奪う”。)


彼はその真意を、まだ計りかねていた。


だが──


『優。次なる試練の波動を確認。座標を送信。近接エリアに、干渉系魔力を感知』


「……オモイカネ。また試練か」


『君の意思が進化を望む限り、私は導く』


静かに、だが確かに響くオモイカネの声。優は地図を畳み、方向を変えた。


「わかってる。全部、つながってる……気がするんだ」


黒ずくめの男、美月を襲った理由、財閥、そして試練。


それらはすべて点でしかない。だが、今はその点を線に繋げるための力が必要だ。


「行こう、オモイカネ。俺は──真実を、この手で掴む」


そして、静かに闇へと踏み出した。

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