表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/93

第39話 影より現れし者

森の静寂を切り裂くことなく、若い男は歩み寄ってきた。


ボロ布を纏い、顔の半分を隠したまま。

その目だけが異様な鋭さを放っている。


 


優は即座に距離を取った。


背後に影が蠢き、死霊たち――ヴァルガル=ノワール、フェンリエル、アミュナ=リリス、ヴォラク=グリードが臨戦態勢を取る。


 


「……誰だ」


短く問いかける。


 


男は、両手を見せるようにわずかに広げ、低く笑った。


「敵じゃない。たぶん、な」


「たぶん、か」


「……用心深いな。悪くない」


 


その余裕めいた態度に、優はさらに警戒を強めた。


直感が告げている。

こいつはただの通りすがりじゃない。


 


「この町、ずいぶん妙なことになってるだろ?」


男はふっと視線を森に向け、肩をすくめた。


「俺は、ちょっとした情報屋だ。こういう妙な流れを追うのが仕事みたいなもんでな」


「情報屋、ね……」


「信じるか信じないかは、おまえ次第だ」


そう言って、男は懐から小さな封筒を取り出した。


中には、街の簡易な地図と、いくつかのメモ。


その内容は――

町で失踪した住人たちの名前。

奇妙な目撃証言。

そして、「夜刀財閥」という不穏な文字。


 


優はそれを受け取りながら、冷静にオモイカネへ問いかける。


《データ照合中――……信憑性、七割以上。偽装の兆候なし》


(……少なくとも、今は嘘はついていないか)


 


だが、それでも警戒は解かない。


 


「……で? なんで俺にこれを渡す?」


「おまえを見てた。普通じゃないと、すぐ分かった」


男は真顔で答えた。


「この町で生き残るには、力が要る。

 だが、俺一人じゃどうにもならない。……だからだ」


 


率直だが、打算を隠さないその物言い。


信用できるのか、それとも――


 


「名前は?」


優が尋ねると、男はわずかに目を細めた。


「今は“アカツキ”って名乗ってる。……まあ、仮の名前だがな」


 


優はしばらく沈黙し、それからゆっくりと歩き出した。


「……少し様子を見させてもらう」


「歓迎するさ」


アカツキは肩をすくめ、森の奥へと消えた。


 


残された優は、手の中の封筒を見つめながら小さく呟く。


「……さて。どう出るか、だな」


 


闇の中、互いに探り合う小さな火種が、静かに燃え始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ