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第37話 沈んだ街、助けを求める声

旧街道を抜けた先、小さな町が姿を現した。


規模はわずか数百人。

古びた家屋と、くすんだ商店が軒を連ねる寂れた町並み。


本来なら、旅人にささやかな温もりを与える場所だったはずだ。


だが――


 


優が一歩足を踏み入れた瞬間、その異様な空気に眉をひそめた。


 


「……変だな」


昼間のはずなのに、町全体が静まり返っている。

開け放たれるはずの商店の扉は固く閉ざされ、

人々は道端で足を止めることもなく、まるで何かから逃げるように足早にすれ違っていく。


挨拶ひとつすら交わされない、異様な沈黙。


 


《魔力濃度、微弱な異常検知》


脳内に響くオモイカネの声が、空気の張りつめた冷たさを裏付けた。


「……なるほど。何かいるな」


小さく呟きながら、優はさらに街の中心へ向かう。


 


道すがら、ちらりと開いた窓から覗く人影と目が合った。

だが、その視線はすぐに逸らされ、カーテンが閉じられる。


(あきらかに、怯えている……)


単なる旅人を見る目ではない。

この町には、何か恐ろしいものが迫っているのだ。


 


やがて、中央の小さな広場にたどり着いた。


そこには、集まった数人の大人たちと、怯える子供たちの姿があった。


子供を抱きしめる母親。

拳を握り締め、何かを堪えている男たち。


その空気には、絶望と焦燥が色濃く滲んでいた。


 


「お願いだ! 誰か……誰か、助けてくれ!」


「こんな町じゃ、戦える奴なんていねぇ……!」


震える声が飛び交う。


優は、迷わず歩み寄った。


 


「何があった?」


低く、落ち着いた声で問いかける。


大人たちは、振り返り――そして、目の前に立つ優の姿に絶望的な表情を浮かべた。


 


「……無理だ。おまえみたいな子どもに、どうにかできる相手じゃない!」


「早く逃げろ! ここはもう、長くもたねぇ!」


 


それでも、優は微笑みを崩さなかった。


「大丈夫。少しだけ、自信があるから」


 


短く、だが不思議と説得力のある言葉。


その佇まいに、大人たちは何も言い返せなかった。


 


「外れって、どっちだ?」


「……町の東側、森沿いの道だ。だけど、本当に……」


「教えてくれて、ありがとう」


軽く頭を下げ、優は背を向ける。


 


歩きながら、影から死霊たちを呼び出した。


ヴァルガル=ノワール。

フェンリエル。

アミュナ=リリス。

ヴォラク=グリード。


漆黒の影から現れた彼らは、静かに、優の後ろに並ぶ。


 


「さあ、軽くウォーミングアップといこうか」


小さく笑い、優は東の森へと向かった。


 


道中、遠くから聞こえたのは、獣のような低いうなり声。


腐った風が吹きつけ、森の奥で何かが蠢く気配がする。


 


試練の地へ向かう旅路は、まだ始まったばかり。


だが、これもまた、強くなるために必要な通過点だった。

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