表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/93

第28話 目覚めた影、現れた光

刃が、喉元を掠めた。


高瀬美月は、逃げられないと悟った。


時間が緩やかに流れるような錯覚の中で、黒装束の暗部が刃を振り下ろす。


――ここまでか。


視界が揺らぎ、意識が黒に染まりかけた、その瞬間だった。


 


「やめておけ」


低く鋭い声が、闇を裂いた。


風が渦巻き、黒装束の影が一人、音もなく吹き飛ぶ。


「っ……!?」


美月の視界に現れたのは、黒衣の少年――天城優。


彼は静かに歩み出ながら、残る二人の暗部に視線を投げた。


「また財閥の手先か。女一人に三人がかりとは、ずいぶんと余裕がないな」


怒りを内に秘めた、静かな声音。だがその威圧感に、暗部たちはわずかに動揺を見せる。


逃走を試みたひとりを、黒い影が絡め取った。


宙を舞い、壁に叩きつけられたそいつはそのまま動かない。


残った一人が何かを言いかけ――喉を押さえ、苦しげに膝をつく。


「……喋れないように細工されてるか。徹底してるな」


優はため息まじりに呟き、残る影を躊躇なく排除した。


 


すべてが終わり、静寂が戻る。

優がふと振り返ると、少女が呆然としたまま、そこに立っていた。


「……助かったのはいいけど、大丈夫か?」


言葉をかけられ、美月はようやく我に返ったように、かすかに頷いた。


「……あなた、いったい……」


「通りすがりの無能者だよ」


皮肉めいた言い方だったが、声にはどこか柔らかさもあった。


 


「……高瀬、美月。ギルド所属の神託者。B級……のはず、です」


「そうか。高瀬、美月……きみを狙ってたのは、夜刀財閥の暗部だった」


「知ってる……気づいたときには、もう遅かったけど」


「財閥に目をつけられるようなこと、したのか?」


「さあ……少し、探りすぎただけかも」


美月は自嘲気味に笑う。


 


優はふっと息を吐き、周囲を警戒するように視線を巡らせる。


「ここに長居はできない。今は一時退いた方がいい」


「……待って、なんで……あなたがここに?」


その問いに、優はほんの一瞬だけ言葉を失った。


やがて、視線をそらしながら答える。


「偶然……ってことにしておこうか」


そう言って歩き出す背中に、美月はただ静かに視線を向ける。

なぜか、その姿に言い知れぬ安心感を覚えながら――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ