第27話 迫り来る影
違和感は、確信に変わった。
高瀬美月は、静かに息を吸い込んだ。
――尾行されている。
気づかれたのは、さっき“天城優”の情報に触れた直後。
その瞬間から、背後にひりつくような視線がついて離れない。
街の雑踏に紛れ、ふり返らずに歩く。
けれど気配は、一定の距離を保って確かにそこにあった。
(完全に……狙われてる)
情報を隠そうとしても遅かった。
すでに、向こうは“仕掛けてきている”。
彼女はルートを変え、わざと遠回りする。
建物の間を抜け、いつもは使わない通路へ。
それでも、気配は途切れなかった。
「……やる気、か」
路地裏に入った瞬間、足音すらしない“何か”が音もなく降り立つ。
漆黒の装束。顔は隠され、気配も消されている。
けれど、その存在感だけは消せなかった。
(――夜刀財閥の、暗部)
言葉はいらない。
一歩、相手が前に出た。
同時に、美月は跳ぶ。
地を蹴り、建物の壁を蹴って反転。
持てる限りのスピードで逃走を開始する。
(やっぱり……私、マークされてたんだ)
自分が何を調べていたか――いや、“どこまで触れたか”を、相手はもう知っている。
追跡者は一人じゃない。
すでに周囲のルートは抑えられている。
まるで獲物を追い込むように、確実に包囲されていた。
(まずい……逃げ道がない)
美月はギルド支部へのルートを一瞬だけ考えたが、即座に却下する。
ギルドの内部にすら、夜刀財閥と繋がっている人間がいるかもしれない。
ならば、誰にも頼れない。
自分の力と判断で、この包囲を切り抜けるしかない。
だが――
「……っ!」
次の角を曲がった瞬間、先回りされていた。
黒装束の影が三人。
路地の出口を塞ぐように、無言で立ちふさがっている。
背後からも気配。
「包囲、完成ってわけ……ね」
冷や汗が額を伝う。
心臓が、激しく打ち始めていた。
(ダメだ、このままじゃ――!)
呼吸を整えようとしたその瞬間、視界の端に何かが動いた。
――何かが、跳んできた。
反応が一瞬だけ遅れた。
「――っ!」
刃の軌道が、彼女の喉元を正確に狙っていた。
そして、世界が暗転する直前――
(……誰か、誰でもいい……助けて)




