第25話 影を纏いし者たち
夜が明ける前のわずかな静寂。
その時間帯だけが、少しだけ俺を人間らしく保ってくれている気がした。
だけど、もう立ち止まっている暇はない。
「グレイホーン隊を倒して、こっちは生き延びた。
……それが、あっちにバレてないわけがないよな」
呪いが発動した時点で、奴らに情報が流れたのは確実。
そして、相手は夜刀財閥――あの“影の化け物たち”を使ってくる連中だ。
「次は、確実に殺しに来る。……だから、その前にやる」
俺は左手を見た。刻まれた死霊使役の紋が、まるで呼応するように淡く光る。
「オモイカネ、ソウルリンクだ。準備は?」
《全体4組、融合可能。うち1組に特殊処理が必要》
影が揺れ、使役している死霊たちが姿を現す。
ヴァルガル=ノワール、フォレストドラゴン、グレイホーン隊の3人――
そして、マガツカミの名を持つ死霊、ハルパス。
「まずは、ハルパスとフォレストドラゴンの融合からだ」
《確認:ハルパスは高位存在。融合には莫大な魔力供給が必要。
現時点では供給量不足。融合状態の維持は可能だが、完成は不可》
「……じゃあ、繋げるだけ繋いで、眠らせておくって形か」
《同意。継続供給によって段階的に融合進行。いずれ目覚める》
「それでいい。じゃあ――始めろ」
影が渦巻き、二体の霊魂が接続されていく。
黒い羽根と蒼き鱗、相反する存在が重なり合いながらも、未完成のまま結晶化する。
異形の気配だけを残し、それは静かに眠りについた。
「名だけでも……与えておくか。目覚める時のためにな」
「――《ザグエル=ドラウス》」
魔力が急激に流れ出し、膝が沈む。
「っ……やっぱり、こいつヤバいな」
《融合体は休眠状態に入ります。解除には更なる魔力が必要》
呼吸を整え、俺は残る三人――黒嶺、理央、荒谷に目を向けた。
「……お前たちにも力を与える。今度は、あんたらの意思も乗せてやる」
黒嶺一真と融合するのは、冷徹な視を持つ死霊・残眼。
生前の洞察力と、死者の視界が交わることで――
「名は《フェンリエル》」
橘理央と融合するのは、毒を操る死霊・毒牙。
陽気に見えていたその裏にあった、狂気と毒が混ざり合い――
「名は《アミュナ=リリス》」
荒谷剛志と融合するのは、迅速な牙を持つ影狼。
野性の本能と殺意が重なり――
「名は《ヴォラク=グリード》」
それぞれの融合体は、影の中から姿を現す。
もはや、かつての彼らの姿ではない。だが、どこかで確かに“意志”だけは残っていた。
「……行くぞ、これが次の闘いに備える“俺たち”の形だ」
オモイカネの声が、低く鳴る。
《ソウルリンク完了。戦闘力、飛躍的に向上。
特に《ザグエル=ドラウス》は、起動時に大規模殲滅能力を発揮する見込み》
「その時が来るなら……その時に全力で目覚めてもらう」
俺は、影の中で膝をついたまま、それでも立ち上がる。




