第24話 影の狩人たち
静けさが支配する会議室の空気が、ピリついていた。
夜刀財閥本社の最奥部――そこは、外界から完全に遮断された戦略区画。
白と黒の無機質なインテリアの中、数名の幹部たちが座すその中央に、男がいた。
夜刀 志鶴。
冷酷無比と称される、財閥実行部門の筆頭。
「……報告を」
秘書の女が静かに頷き、手元の端末を操作する。
「グレイホーン隊、三名とも反応消失。
呪詛の発動を確認。情報流出の兆候なし。対象による“完全排除”と推測されます」
しばしの沈黙。
「……あの三人が?」
志鶴が目を伏せたまま、呟くように言った。
「無能者と呼ばれていた少年に、“狩られた”とでも言うのか」
報告を聞いていた数名の幹部が顔を見合わせる。
その表情には、わずかな動揺があった。
主人公――天城 優。
その生存は既に把握していた。だが、それは“かつての姿”のままという前提だった。
まさか、グレイホーン隊を返り討ちにするほど力をつけていたとは――。
「何かが起きている。奴は“無能者”ではなくなっている」
志鶴は立ち上がり、ホログラムに表示された優のデータプロファイルを見つめる。
情報の大半が“欠落”している。まるで何者かによって意図的に隠されているような不自然さだった。
「対応を遅らせるな。暗部を動かせ。今回は“仕留める”」
「……全隊を、ですか?」
「当然だ。単独行動ではない。複数を同時投入し、確実に排除しろ」
「対象は完全排除対象に?」
「制限は不要。証拠も記録も残すな。彼が何者かという情報が漏れる前に……“闇に還せ”」
その命令が下った瞬間、地下深くの影が蠢き始めた。
機密層に封じられていた多数の黒衣の者たち――夜刀財閥の暗部が、封印を解かれる。
誰一人言葉を発することなく、ただ殺戮と工作のために動く“闇の執行者”。
彼らの存在そのものが、法の外にある。
その影は都市に静かに広がり、確実に獲物の元へと迫っていた。
志鶴は窓の外――誰も届かぬ高みから、世界を見下ろしていた。
「油断しすぎたな……“彼”がここまで脅威になるとは。だが、まだ芽は摘める。摘んでみせる」
彼の声は静かだった。
だがその口元に宿る冷笑は、確かに“終わり”を告げていた。




