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下弦の月  作者: KOUHEI
6/11

予想外

外の車の往来の喧騒は最上階の部屋までは届かない、サイモン・トスは自分のホテルの一室を個人用に設えて執務室にしている。


新人たちの2回目のレースは終わった。観客や予想屋の全て裏切った形で。

ナランハのカラー優勝と個人優勝をも勝ち取って次の決勝には誰も予想しなかったBチームが進む。


大番狂わせになり配当金も高くなりながらも、まぐれを予想し賭けた人もいなかったため。キャリオーバーとして主催者側が必要経費を取ってその残りが次のレースでは加算され法外な金額となった。



サイモン・トスは各チームごとに魅力的な男女を配置し、各々ファンを増やして対抗させ盛り上げて来たロックイーゼンに、予想外のことが起きて唖然としていた。


今年の新人戦でデビューしたばかりの選手が脚光を浴びているのだ。

大した認知度ではないため一過性で終わる。これからサイモンがシナリオを考えても新人だけではドラマが作れないと頭を抱えこんでいる。


今世間はキャリーオーバーの金額だけに注目している。

悶々と考えながらサイモン・トスはナランハのBチームのメンバーをタブレットで見ていた。何度も何度も見てもスター性のある選手は居ない、新人は皆地味な敵役人選だった。


Bチームからもしスター並みの選手が生まれるとすれば数年後で、過去の地味な姿をクローズアップした時ぐらいだろう、本人に努力という名前の資質が花開けばだが。


それもその時に他にスターがいなければ繋ぎとして注目させても良い程度の選手達だ。

ロックイーゼン始まって以来、サイモン・トスにとって光が見えない希望が見えない1日だった。



喧騒と悲鳴とがドームに響き渡り、春のロックイーゼンが終わると、選手宿舎にはピリピリした緊張感は無くなったが競技が終わったと言う緩んだ空気は無い。

「ねぇねぇトレーニングルームに教授が来てたでしょう、珍しいよね」

談話室の奇抜なソファーに座り込みミカエラがはしゃぐ。教授は故障者の研究に熱心だ。、


「カレリンのことが気になったみたいよ」とアンネマリーの隣に座るカレリンを見る。

「俺も、俺も気になった。あの跳躍力は半端ない」シドセルは決勝でカレリンに大波で放り上げられている。

「ここじゃ普通じゃない」とはミカエラ、肝心の教授がカレリン以外の誰を研究対象にしているかの情報が出なくていらつく。教授の研究対象は筋肉の再生だ。ミカエラがしっかりと損傷させたと思う相手は一人だけだが、これだけの数の選手がいて故障者の情報が出ないわけがない。

「見たの?」アンネマリーがほほ笑む。ペイントを塗っていない時の顔はかなりの美人だ。

「ちらっとな」

「見たかったらビデオ室で見れば」とはミカエラ、トレーニングを終えるとすぐにビデオ室でチェックをする。ミカエラの場合は誰がどの場面に弱いかを見極めるためだ。


「そうね、でも私はカレリンに目の前でやってもらって教えてもらいたいわ」隣に居る同室のカレリンに声をかける。

カレリンは何がしかの競技を特別にやって居たようには見えない。

「明日、午前中に床の上で飛んでみてくれない、明日は休息日なの」ちょっとだけ声のトーンを落とす。

「あ 俺も参加していい?」目ざとく近くに座ったクレマンが口を出す。

「あなたたちは邪魔よ、この間はちっとも練習にならなかったでしょう、私はカレリンの動きを見たかったのよ。あなたたちじゃないの」アンネマリーはクレマンとマグネに目を向ける。

前回彼ら二人と総勢20名ほどが体育館の一角を占領してしまいカレリンの試技を見ていない。


遠慮深いカレリンが引っ込んでしまい体操の得意な選手がその場を仕切ってしまったのだ。

「見学は良いけど、邪魔はしないでね」もう一度言う。アンネマリーは優しくたおやかなふりは嫌いだった。

もちろん可愛いを振りまくのも大嫌いだ。

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