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第31話 果実の調味料

お待たせ致しましたー

「「……ポンズ??」」


「ポン酢です、ぽ・ん・ず!!」



 鍋のつけだれや、脂っこいお肉を食べたりするには最適な調味料がなんとか出来たのだ!!



「……味見してみてもいいか?」


「お願いします」



 ここは大事な審査の場であるので……スインドさんの言葉に頷くと、彼は綺麗な指をポン酢の入った器に近づけ……ほんのちょっと、指先をつけてから口に運んだ。



「!? これは!!」



 驚いてもらえたが……これは、いい方向なのかな?


 あんまり表情の変化が無さそうなスインドさんの顔が、ちょっと嬉しそうに……見えた気がしたのだ。


 その後の言葉はないけど……横でうずうずしていたクレハもチョンと指をつけて、ポン酢を舐めてくれた。



「辛……んにゃ? 塩っぱい? 酸っぱい……ちょこっと、甘い? 不思議な味やけど、悪ないわー」


「これを、主に肉料理に使えるんだよ?」


「肉なん?」


「脂身と一緒に……六角ボアとかの薄切り肉を軽く茹でて、同じように茹でた野菜と一緒につけて食べると最高なんだ!!」


「ほ〜……気になるわぁ!」



 猪だとあんまりしないけど……しゃぶしゃぶは牛肉以外に豚肉でも出来るからね?


 きっと、ボアの肉でも相性は悪くないと思う!!


 なーんて、うきうきしていたら……大きな手で肩を掴まれた!? クレハじゃないから……スインドさん!?


 なんで!?



「……ってくれ」


「は、はい?」


「このポン酢……売ってくれないか!?」


「へ?」


「たしかに、これは売りもんになるわなあ?」



 クレハはのんきに言うけど……なんか、とんでもないことを今言われたような!?



「肉との組み合わせ……俺も悪くないと思う! だからこそ……ツテのあるところで取り扱えられれば、ヒロ達の開業資金にも繋がるだろう! どうだ!?」



 熱心に口説く勢いで迫ってくるんだけど……これは困ったぞ?


 だって、この勢いだと……私は料理人と言うより開発部門の研究者になって欲しいことかもしれない。


 一応、資金のやりくりなどをしてもらえても……だが。



「……スインドさん。この調味料を、ただお売りするよりもっといい方法があります」


「……なに?」


「なんなん?」


「……レシピを公開することです。さほど、作り方に無理な部分はありません。材料次第では、もっと高値になるものは出来ますが」



 その仕組みが通じるかはわからないけど……やらないより、ずっと良い。


 だって、私がなりたいのは……皆に美味しいと言ってもらえる料理を作りたい!!


 そのために、情報を一部でも開示するのなんて……些細なことだ。


 どうかな、って……スインドさんに提案してみたのだが。



「……であれば。ギルドで特許を取得した方がいいな?」


「……特許、ですか?」


「サイシと果実の組み合わせは……俺でも聞いたことがない」


「使えるとこは、ちゃーんと使うべきなん?」


「そう言うことだ。そこで得るものも……今後、お前達が店を開く上で重要となってくる」



 昆布も出汁も使ってないポン酢なのに……結構大掛かりなことになってきちゃった!?


 普通に情報共有だけじゃダメみたい……。

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