表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一つ屋根の下で始まる二人の恋  作者: 神田 ゆう
4/5

第4話 意識し始める2人

 

 季節は流れ夏、衣替えの時期だ。この時期になると上は男子はYシャツ、女子は半袖のブラウスのみ、だれもブレザーは着ていない。

 詩織がいつものように昼休みを菜穂や他のクラスメートと過ごしていた時だった。

「ねぇ、詩織。一つ聞いていい? 」

「何? 」

「橘君と付き合ってるって本当? 」

 翔太が蓮に聞いてきた。

「はぁ⁈ 何それ? なんでそんな話になってんの? 」

 一瞬、詩織は蓮と一緒に住んでいることがクラスの誰かにバレたのかと思い声をあげた。詩織の突然の声に菜穂はびっくりした。

「いや…みんな噂してるよ。詩織」

「私が(アイツ)と? ありえない! あんな奴ありえないから‼︎ 」

「っていうか付き合ってないなら若月さんと橘君ってどういう関係? 」

「それは…」

 詩織は一緒に住んでいること以外蓮と出会ってから今日までのことを菜穂達に話した。



「なるほどね〜。だから橘君、詩織に対してちょっと特別なんだ」

「そんなんじゃないよ」

 転校生の男の子と初日に出会った女子が恋に落ちる、確かにドラマでよくあるパターンだ。だけどああいうのはドラマの中だけでリアルではそんなことないと詩織は思っていた。




「じゃあ詩織、橘君のこと嫌? もし橘君が他の女の子と付き合うことになっても正気でいられる? 」




「それは…」

(橘が他の女の子と…)

 蓮はモテる、だから誰かと付き合う可能性はゼロではない。クラスメートからの言葉に詩織は、言葉が詰まった。







 お昼休みが終わり、HR(ホームルーム)になった。もうすぐ林間学校があり今日は、その班での打ち合わせだった。

 蓮は詩織、菜穂、翔太と同じ班になった。


(よりによってなんで(コイツ)と…)

 詩織は昼休みに菜穂にあんなことを言われ蓮のことを無意識に気にしてしまっていた。


















 学校が休みの日、蓮と詩織は詩織の母親と一緒に林間学校の時に持っていくバッグや必要な道具を買いに行くためショッピングモールに出かけた。


 蓮と詩織と詩織の母親は、アウトドア用品店の方に向かった。蓮は詩織の家に住む際にアウトドア絡みの道具はある程度持ってきていた為、大型のリュックのみだけで済んだ。

「すいません。わざわざ用意してくれて」

 詩織の母親にはいろいろお世話になっていて蓮は、頭が上がらなかった。

「いいのよ、気にしないで」







 蓮と詩織の2人は必要な道具を買い終えて店を出た。店を出たところで詩織が「トイレに行きたい」と言い出した。もう12時でお昼の時間なので蓮と詩織の母親は、フードコートの方に先に行くことにした。






















 トイレで用を済ませて蓮達の方に向かう途中、詩織の耳に聞き慣れた声が聞こえてきた。

「あれ? 詩織じゃん‼︎ 」

 声の聞こえる方を振り向くと前に付き合ってた詩織の彼氏、大輝がいた。

「だ、大輝…。なんでここに…」

「友達とちょっと遊びに来ててさ。詩織は? 」

「林間学校に必要な道具買いにきたの。もうすぐ林間学校だから」

「そうなんだ」

「うん」

「久しぶりに見たよ、詩織の私服。相変わらず可愛いな」

 大輝は詩織の肩を抱き寄せ柱の鏡の前で二人で並び立つ。

 今日の詩織は水色のタンクトップに青のショートパンツといかにも夏っぽい涼しげな格好をしている。

「ありがとう…」

 詩織はもう自分に愛なんてないのにと思いながら声が僅かに震えていた。

「なぁ、この間ごめんな。急に別れようって言って。もう一回やり直さないか? 」

「…え? けど大輝、彼女いるじゃん…」

(なんで別れた女に平気な顔してそんなこと言えるの? )

「大丈夫だよw 上手くやるからw」

「…ごめん」

 大輝の手を振り解き詩織は大輝から離れる。

「いいじゃんかw」

 詩織の腕を掴もうとする大輝、だが何者かが詩織の腕を掴み自分の方に引き寄せてきた。詩織が振り返るとそこには蓮がいた。

「やめてくれません? 詩織(コイツ)嫌がってるんで」

「た、橘…」

 蓮を見上げる詩織の瞳はうるうるしていた。

「なんなの、お前」

「アンタに詩織(コイツ)は似合わないよ。行くぞ」

 そう大輝に言い残し詩織の腕を引っ張ってその場から去った。

(橘…)

 自分の腕を引っ張って歩く蓮の姿に詩織は顔が紅くなった。

 詩織の腕を掴みながら歩く蓮、途中で詩織は蓮の腕を振り払った。

「なんで…? 」

「なんでって…お前遅えし、それにアイツなんだろ? 」

「え…? 」

「前に話した別れられたって言ってた元カレ」

「…うん。…え? 聞いてたの⁈ 」

「…ごめん、途中から。ちょっと話聞いててムカついたから。お前のこと2番目にしているみたいでさ 」

「…ありがとう」

 詩織はさっきまでの心のモヤモヤのようなものが晴れたような気がして蓮の腕にギュッと抱き着いた。







 数日後、林間学校当日がやってきた。2学年の生徒達はすでに学校に来ておりその中に蓮と詩織もいた。2学年の生徒はいろいろな想いを抱きながらバスに乗りいよいよ林間学校が始まった。

 バスの中で翔太が蓮にあることを聞いてきた。

「なぁ蓮ってさ、若月さん好きなの? 」

「はぁ? なんでそんなこと聞くんだよ? 」

「いや、よく一緒にいるからどうなのかなぁって」

「…いや、なんていうか…詩織(アイツ)が辛そうだったり悲しそうにしていたらほっとけないだけで…。好きかどうかとかは…」

「ふーん。じゃあ若月さんがほかの男の彼女になっていいの? 平気? 」



「え…?」

 バスに揺られながら蓮は、翔太の言葉が少し引っかかった。

若月(アイツ)が他の誰かと…)





























 その日の夜のご飯は飯盒炊爨で各班でカレーを作ることになった。各班のメンバーが調理場で料理をする。その中に詩織や蓮達もいた。


「んっ…んっ…」

 詩織は、ジャガイモの皮剥きに少々苦戦気味な様子だった。

「何やってんだ? 若月」

「橘…」

「貸して? 俺やるから」

「ありがとう…」

 詩織はそう言うとジャガイモと包丁を蓮に渡した。その後蓮はスムーズに包丁で皮剥きを行なっていく。

「すごいね、橘。前から気になってたけどよく家事とかやってるの? 」

「…うん。たまにね」

「そうなんだ」






















 楽しい夕ご飯が終わり男女それぞれの部屋でのことだった。男子の部屋ではトランプをしたりして遊んでおり女子の部屋では恋バナ、とは言ってもメインは蓮の話だった。その中に詩織もいた。


「橘くんってさ以外に料理もできるのびっくりだった‼︎ 」

「わかる‼︎ イケメンでスポーツもできて料理もできるとかめっちゃカッコいいんだけど‼︎」


(か…カッコいい…。みんな橘のことそういう目で見てるんだ…)

 詩織は、蓮を取られるような気がして少しモヤモヤしていた。


「詩織ちゃんって橘くんとよく一緒にいるよね? 」

「橘くんっていつもどんな感じなの? 」


「え⁈ あ…うーん…」

(そういえば私、橘のこと何にも知らないかも…。突然家に来られて一緒に住むことになって…)

 クラスメート達に聞かれてすぐ答えられない詩織は、蓮は自分のことを全く話していないことに気づいた。



「よく…わかんないかな…ごめん」














 深夜、蓮は今日のレポートをまだ書けていなかった。部屋は翔太達がうるさく集中できず一人部屋を出て休憩室の方へ向かうとそこには詩織がいて彼女もまだレポートを書き終えていないようでテーブルで彼女もレポートを書いていた。

「若月」

「橘…」

「橘もまだレポート提出してなかったんだ」

「あぁ。ここ座っていいか? 」

 休憩室は蓮と詩織の二人だけで蓮は詩織の向かい隣に座ってレポートを書き始めた。

「「…」」

 お互い黙々とレポートを書き続ける2人。蓮は詩織をじっと見つめた。

「何? 」

「いや、何でもない」



『若月さんがほかの男の彼女になっていいの? 平気でいられる? 』



(翔太のやつ、余計なこと言いやがって…。あんなこと聞かれたら余計詩織(コイツ)のこと気になっちまうじゃねーか…)

詩織をじっと見つめる蓮。夜の光に照らされる彼女の顔はとても綺麗だ。

(確かに詩織(コイツ)、すごい美人でスタイルいい。初めてあったときは嫌そうな顔してきたけど最近はそうでもなくなってきた…よな…)

「なぁ若月ってさ…」

蓮は思い切ってあることを聞いてみた。

「?…何? 」




「俺のこと好きなの? 」

蓮が詩織にそう聞いた瞬間、詩織の表情が固まった。固まったかと思った次の瞬間、

「はぁ?! 」

と詩織は、大きな声をあげ蓮はビクッとなった。




「それ普通自分で言う⁈ 有り得ない、(アンタ)。このバカ! バカ橘! 」

「確認だよ! この前、腕に抱きついてきたから思わせるようなことしたのかなと思ってさ 」

「あれは大輝が急にやり直そうって言ってきたのが怖かったからなだけで…。前にも言ったけど私、アンタなんかに興味無いから! 」

「俺だってお前に興味なんかねぇよ! 」

ふんっ!と詩織は言い部屋に戻って行ってしまった。





(菜穂のバカ…。余計なこと言ってきて…)

蓮の前であんなことを言ってしまったのとは裏腹に詩織は蓮のことを意識してしまい頬を真っ赤に染めてしまっていた。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ