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一つ屋根の下で始まる二人の恋  作者: 神田 ゆう
2/5

第2話 悲しみと和解

いろいろ考えたのですが、休止にはしないことにしました。この作品だけは描き続けます。

 


「はぁ〜…まさか同じ家に住むことになるとはなぁ…」

 蓮は部屋で一人詩織に言われたことを思い悩んでいた。

『あのさお母さんは、アンタのことあぁ言ってるけど私は認めてないから』

(めちゃくちゃ機嫌悪そうにしてたしなぁ…よし…‼︎ 決めた!)

 詩織に認められたく部屋で蓮は一人あることを決めた。



 次の日のことだった。

「ん〜…おはよう」

「あ! おはよう」

 詩織が目覚めてリビングに行くと既に蓮は、起きていて詩織の母親と朝食の準備をしていた。テーブルにはスクランブルエッグやサラダや味噌汁、ご飯が用意されていた。

「これ…」

「これ全部蓮くんが作ってくれたのよ‼︎ すごい上手でお母さんびっくりしちゃった‼︎ 」

「…」

(コイツ…人の家で勝手にご飯手伝ってどういう神経してるの?…)


 朝ご飯を終えお互い学校に向かう時だった。詩織が玄関で一瞬立ち止まった。

「あのさ、登校する時は私が出た後から15分くらい経ってから家出て。それと学校では絶対私のこと名前で呼んで来ないで」

「はい…」

 詩織の冷ややかな目に蓮は、それ以外何も言えなかった。




 学校でのお昼休みのことだった。詩織は渡り廊下で同級生の女子達と仲良く会話している蓮を見かけた。

「あっ、ねぇ橘君! 今日さ一緒にカラオケ行かない? 」

「あー…ごめん。今日はちょっと…」

「え〜…残念…」

「また今度な…」

 蓮が女子達と話し終えたのを確認してから詩織が入ってきた。

「遊んでくればいいじゃん。女の子達と」

 ちょっと嫌味な感じで詩織は、言う。

「何? もしかして…嫉妬してる? 」

「はぁ⁈ 誰がアンタなんかに…‼︎ 私は、アンタにぜんっぜん興味ないから‼︎ 」

 フンッと詩織は、前を向いて蓮の元を離れていく。

「やっぱりアイツ無理! 絶対無理!」

 詩織がモヤモヤしているとポケットのスマホが鳴った。確認してみると隣町の高校に通う詩織の彼氏、大輝(だいき)からだった。詩織は、すぐに電話に出た。

「もしもし? 大輝? 久しぶり! 」

「詩織、今大丈夫? 」

 大輝は休み時間廊下に寄りかかってスマホで詩織と話をしていた。

「うん、平気」

 電話越しから聞こえる彼氏の声に詩織は、嬉しくて胸がドキドキしていた。

「あのさ、今日放課後空いてる? いつもの駅前の喫茶店で会えないかな? 話があるんだ」

「今日? 大丈夫だよ! 部活も休みだし」

「じゃあ決まりね。放課後待ってるから」

「うん」

(大輝から話って何かな? )

 通話を終えた詩織は、さっきまでの蓮とのモヤモヤはすっかり消えており放課後が楽しみで仕方ない様子だった。


 学校が終わり放課後、蓮が詩織の家に帰った。

「ただいま帰りました〜」

「おかえり〜。蓮君」

 玄関で母親が出迎えてくれた。玄関の靴を見ると詩織の靴がなくまだ詩織は帰ってきていないみたいだった。

「あの詩織さんは…」

「あの子、今日放課後に彼氏と会うから遅くなるって」

「そうですか…」



 その頃、詩織は彼氏である大輝と駅前の喫茶店で会っていた。

「詩織、こっち」

 喫茶店に着くと少し離れたテラスのテーブルの方で大輝が、こっちと手をあげた。

「久しぶり、大輝。春休み以来だよね」

 詩織は、大輝とテーブルを挟んで向かい合って席に座った。

「うん。久しぶり…」

 久しぶりに見る大輝の顔、詩織は嬉しかった。

「どうしたの? 急に呼び出して」

「あぁ…えっと…」

 話し出した途端、大輝は一瞬下を向いた後詩織の方を向いてから

「別れて欲しい…」

 と言った。

「え…? 冗談だよね?…」

 詩織は、耳を疑った。

「実は…他に好きな人ができたんだ…。今付き合っていて…」

「…いつから? 」

「春休み始まってからずっと…」

 詩織は大輝のその言葉を聞いて頭が真っ白になりそうだった。大輝とは中学1年の時から今日までずっと付き合ってきた。今まで過ごしてきた思い出が溢れ落ちそうだった。

「…私より好きなの? 」

 涙を流す詩織のその質問に対し大輝は、黙って頷いた。

「だからさ…」

 大輝が喋り出そうとした瞬間、詩織は大輝の頬を思いっきりビンタし黙って席を立ちその場を後にした。



 詩織はショックを受けながら、家までの帰り道を歩いていく。気づけばもう夕方になりいつのまにか自分の家の前に着いていた。

 玄関のドアが開き蓮が出てきて

「おかえり」

 と言ったが詩織は、俯いたまま一ミリも動かない。詩織の様子に違和感を覚えた蓮は「どうした? 」と聞く。

 すると詩織は、

「…出てってよ…」

 とあまり聞こえない声で喋った。

「はぁ?」

「お願いだから私の家から出てってよ‼︎ お母さんの親戚のなんだか知らないけどあんたが来たせいでもう私の中もうめちゃくちゃなの‼︎ だから出てって‼︎ 」

 詩織は、近所中に響くくらいの大きな声をあげながら蓮の胸を叩く。

「…」

 何も言わず微動打しない蓮を目の前に詩織は、はっ‼︎と我に返り

「…ごめん」

 と言って家に入らず泣きながらどこかに走って行ってしまった。


「おい! 待てよ! 」

 蓮は、詩織を追いかけようとする。


「着いてこないで‼︎ 今…いっぱいいっぱいだから…」

 蓮にそう言い残すと詩織は、走っていった。


(私、最低だ…! 大輝と別れたことは (アイツ)は、何も関係ないのに…八つ当たりするなんて…! 私、最低だ! )



 それから夕方になり日が沈み始めて来た頃、詩織はまだ家に帰って来ておらず蓮は少し気がかりになっていた。

「詩織、まだ帰って来ないのかしら…」

 窓を見ると外は薄暗くなり詩織の母親も心配していた。

(なんだろう…。嫌な予感がする…)

「あの…俺探して来ます‼︎ 」

「蓮君一人で大丈夫? 」

「はい。叔母さんはここにいて詩織(アイツ)が帰って来たら俺に連絡ください‼︎ 」

 そう言い蓮は家を飛び出していった。商店街やいろいろな場所を探しまわるが詩織は見当たらない。探し始めてから20分くらい経っていた。

詩織(アイツ)どこ行ったんだよ…」

 今度は商店街の方から河川敷の方に向かって行った。河川敷の方で座って夜空を眺める詩織を蓮は見つけた。

「おい! 」

「あっ…アンタ…」

 蓮の声に詩織は振り返った。

「なぁ…帰るぞ…」

「うん…」

 そう言い詩織は落ち込んで座ったまま動かない。

「どうしたんだよ…」


「私…今日大輝に別れようって言われたんだ…。私より他に好きな人が出来たんだって…。3年間付き合ってたんだよ…。なのに別れられて…なんか…もうどうにかなっちゃいそうで…それで…さっき…(アンタ)に当たって…だから…うっ…うぅっ…」

 詩織は生まれて初めての失恋を前に、詩織は思いっきり泣き出した。


「そうだったんだ…。お前の気持ちちょっとわかるよ。俺も父さんが中学校の頃に亡くなったからさ。ずっと当たり前のように隣にいた人が突然いなくなるって辛いよな…」

 詩織の話を聞いて自分の過去をふと蓮は思い出し、詩織を自分の腕の中に抱き寄せた。


 詩織のことを掻き回したような気がした蓮は詩織の頭を優しく撫でた。

「アンタにもそんな経験あったんだ…。ごめんね、何も知らないでいろいろ言っちゃって。やっかみだったね…。あのさ明日も朝ごはん作ってよ…今朝のすごく美味しかったから」

 蓮にも自分と同じような経験があるとわかった詩織は、蓮を認めてもいいと感じた。


「いいよ」

「帰ろう、橘」

「うん」

 






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