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05.

 青白い顔が冷え込んでくる夕闇を思わせる。かげる横顔。漆黒の二つの瞳孔。白いマスク。家の中なのにコロナ対策? 細く長い腕がゆっくりマスクのひもに触れる。色白な頬から引き剥がされるマスク。


 え?


 白い口紅。横に長くつり上がる。耳元まで伸びている裂けた口! 肌は突然に真っ黒に染まる。オセロみたい。そのせいで白い唇が顔から浮かび上がるように見えた。歯も真っ黒! 見ていると吸い込まれそうな喉の奥。


 怖いっ!


 見てはいけないもの見てしまった! 目をつぶる。薄っすら目を開けると、そのまま曽音田そねだ美杏みあんだった何かはすぅっと白いカーテンの奥に消えていく。心なしか、嘲笑っているように見える。鳥肌が立つ。身震いして私は家にダッシュした!


「ロエリ?」


 レインが不思議そうに私に声をかけたけど、振り向くにも振り向けない。足をできるだけ早く動かさないと! ごめんレイン! その場に座り込んでしまいそうだったから。


 はぁっ……はぁっ……。


 「また明日」も言えずに自分の家に入った。電気をつけるのも忘れて台所に駆け込む。アルコール消毒も、手洗い、うがいもせずに冷蔵庫からお茶を取り出す。もうお茶もホットにしないと身体にこたえるけれど、額からふつふつ噴き出る汗を止めるにはこれしか方法は思いつかなかった。お母さんが、「コロナになりたいの? 手洗いうがい!」とリビングで叫んだ。


「……ごめんなさい」


 喉を通ったお茶は胃の中でむかむかうごめいているように感じる。レインもすみちゃんも放って一人で帰ってきた罪悪感で胸がいっぱいになる。


 お母さんは晩御飯にステーキを用意してくれていた。なんだか半生に焼けている。


「これは、ミディアムレアよ」


 たまに、お母さんは奮発して料理を豪華にしてくれる。だけど、私は生焼けの良さはちっとも分からない。何でもこんがり焼いた方がいいに決まっている。


 ナイフで肉を切ると、ぐじゅぐじゅと音を立てて肉から赤い血が滲んだ。やだなぁ。今日は気分がすぐれないから余計にそう思うのかも。ふと、お母さんのエプロンに血がついているように見えた。


「ひゃぁっ!」


「ちょっとロエリ?」


 赤い花模様だ。なんだ、見間違いだ。ほんとにもう、自分の馬鹿。感情が高ぶっちゃってるんだ。今日は宿題さえ終わったら、さっさと寝よう。


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