第九十九話 ダビド亭
姿を隠し、サッカーの街外れの辺りをふらふらと歩いていた。
ろくろっ首や、お岩を探す為、妖気を感じようとしても、感じられなかった。
雨女にあきらめの気持ちも芽生えていた。
「長くなるねぇ。」
溜息をつく。
どうしたもんかね。
人の流れについて行くと、えらい賑わいを見せている店があった。
その店の横には、立派な石畳の道があり、二人兵士が立っていて、行く手を、阻んでいた。
「?」
兵士に何かを見せて入っていく武器を持った五人の人達。
ついて行くと、その先の洞窟の前にも人だかりができていた。
ぼろぼろに汚れた面々は、笑いながら洞窟から出てきた。
それなりに出来る様だね。
剣や、盾を持ち勇ましい。
洞窟から出入りしているのを見ていたが、なぜか、洞窟に入るのは、気がのらなかった。
ぼろぼろに汚れた面々について行くと、店に入っていく。
中に入ると、汗臭い匂いや、血の匂い、獣臭が広がっていた。
どうやら荷物を、受付で換金している様だ。
汚い机には、何かの毛皮や、角が並んでいる。
壁には、色々な依頼や、お尋ね者の張り紙がある。
むさ苦しい男達が、忙しそうに働いている。
臭いので、店を出ると、ぼろぼろに汚れた面々も出てきた。
「今日は、ダビド亭だ。飲んで食おう。」
「よし、まずは、水浴びだ。」
嬉しそうに話す。どうやら、儲けたようだ。
店の横の井戸で、服を脱ぎ、身体を洗い始めた。
少し、綺麗になった面々は、歩いて行く。
ついて行くと古い大きな平屋のお店に着いた。
スゥ―と奥の椅子に座り外を見る。
疲れた。。
夕日が、綺麗だ。
美味しそうに食事をしているのをみて、食べてみたいと思った。
まぁ、ここなら人の出入りも激しいし、ゆっくり出来るね。
夜。
ご飯時には、老若男女、問わず、繁盛していた。
各自、飲んでは、歌い、騒いでいる。
白く濁った物を、皆、大事そうに飲んでいる。
どぶろくかね?
その飲み物のアルコールの匂いと、酸っぱい匂いが鼻をかすめる。
うずうずとしてきた。
飲みたくもなるさ。
まぁそんなに美味しそうでは、無いけどねぇ。
でも、様子を見る事にした。
第一、ここで使える金がない。
盗みは、嫌だ。
幸い、大きな平屋の店は、飲食だけでは無く、宿もやっていて店の横に泊まる部屋の長屋があった。
申し訳ないが、空いている場所でこっそり休ませてもらう事に。
決して汚したりしない。
休むだけである。
人々の話を聞きながら、ただ、時が過ぎて行く。
朝早く、こっそり、井戸の水を汲んで体をふく事にした。
どうどうと水浴びしたいが仕方がない。
ここらに、風呂屋があればね。
日本の文明になれてしまったから、ね。
まぁ、昔は、こんなもんだったから。
ろくろっ首や、お岩も、文句垂れてるだろうね。
時々、目に浮かぶ、ろくろっ首や、お岩、二口女の顔を思い、笑う。
手ぬぐいで、一通り拭き終え、すっきりとした時だった。
明らかにこっちを見ている子供がいた。
にこりと笑顔を作る雨女。
見えちまってるね。
「おはよう。」
「・・・。」
パッと立ち去る目の大きい男の子。
雨女は、気合いを入れて姿を消す。
男の子は、奥から父親らしき人と、戻って来た。
キョロキョロと、辺りを見渡し話している。
勝手に使わせてもらって申し訳ないね。
考えた結果、姿を現して生活する事にした。
いつまでも、消えているだけじゃ性に合わない。
幽霊じゃあるまいし。
疲れるけど、仕方ない。
「よし、ん、ん~」
右手をかざし、念じる。
「梵っ」
三味線を出すと、クルリと回転し左手に持ち変える。
「あとは、んん、ん~。」
「梵っ」
鼈甲のバチをパッと取る。。
「昔みたいに、いっちょやるとするかね。」
「ああ、でも、少し練習だね。歌は、合わなさそうだし、う~んと、」
奏でるだけにしとこうかね。
バチで頭をかく雨女。
これだったら、マッシュさん達にも聞かせてあげれば良かったね。
夕方。
「ゴロゴロ、」
「こりゃ降って来るか?」
店の前で食料を運ぶ面々は、天を見上げる。
「おい、早く。」
忙しそうにしている。
「すまないね、失礼するよ。」
男達は、荷物を運ぶのを一旦、止めて、皆、目で追いかける。
何の匂いか分からないが、いい匂いがする。
「ちょいと、ここの主は、いるかい?」
黒い羽織に、深川鼠袖の着物。
白塗りに唇の紅が映える。
目の辺りも淡く紅色が見える。
島田髷に、鼈甲の櫛、玉珊瑚の簪が、二本、雑に刺さっている。
布で覆った三味線を背負う。
「はい、はい、私ですが、」
奥から、朝の男の子の父親が、出てきた。
「私が、ダビド亭の主です。」
「・・・。」
下から見つめ上げる様に、見る亭主。
見た事もない白い化粧と、服に驚いているものの、見とれてしまっている。
「私は、気ままにこいつを弾いて回ってる瀧吉ってもんさ、」
「ここで、皆さんに聞いてもらえないかね?」
「はぁ、タツキチさん。」
周りにいる男達も、固唾を飲んで見守っている。
「まぁ聞いて決めてくれてもいいからさ、」
「では、軽く見させていただきます。こちらにどうぞ、」
ダビド亭の亭主は、奥の方の席に案内する。
皆、見てくれてるね。
まぁどうだか、ね。
「ベンベン、キュ~イィ。」
「はっっ、」
「デンデンデッテテテテ、ティテテテテテテテ、」
「ティン、タティン、ティティティ、タァン、タァ、タァン、」
「はっっ、」
「デンデンデッ、ドォン、テッテッテトトト・・・・・・・・・・・タタン。タン。」
「まぁ、軽くこんなもんだけど、どうだい?」
皆、初めての三味線に圧倒されている。
「あわないかい?」
もっと大人しいのにすれば良かったかね?
「いえ、あの、うちの様な所で演奏して頂いて本当に宜しいのですか?」
「こちらから、お願いしたいぐらいです。」
「本当かい?助かるよ。ありがとう。嬉しいよ、私、いいお店だと思ってさ。声かけたんだよ。」
嬉しそうな笑顔の瀧吉を見て、女性の従業員も、笑っている。
「改めまして、私は、ダビド亭の亭主、ジノです。あそこに居るのは、息子のアニベルです。」
「あれ、さっきまでいたんだけど、。」
辺りを見渡すジノ。
「あと、まだ、小さいですが、二歳の息子サリオがいます。」
「宜しく頼むよ。」
「では、どのようにされますか?」
「そちらの言い値でいいからさ、泊まる所を世話してくれないかい?」
「わかりました、では、こうしますか?」
話をある程度終え、働いている面々と挨拶をした。
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