第九十八話 雨天癒思
「いや~凄い雨です。」
片付けを終えたお爺さんは、急いでドアの中に入って来る。
「この雨だ。ゆっくりなさって下さい。」
「すまないね。ありがとう。」
「芋ぐらいしかありませんが、これから煮ますので宜しければ?」
「いいのかい?優しいね、甘えていいかい?」
「はい。お口にあえばいいのですが。」
「サッカーの街に行かれるのですか?」
「まぁ、うん、そうだね。」
「それでしたら、もうすぐ息子が、サッカーの街から馬車で帰って来ます。また、明日、芋を積んだらサッカーの街に行きますから、乗って行かれたらいいのでは?」
「そうです、そうです。ぜひ、。」
「何から何まで悪いね。」
「いいのです。」
「さぁ、芋が茹で終わりました。」
「温かい内に食べましょう。」
大事そうにパラパラと、塩の様な物をかけて雨女にお椀を渡す。
「ありがとう。」
「さぁ食べましょう、食べましょう。」
「名を言ってなかったね。私の名は、お瀧。」
「オタツ様。」
「ありがたく、頂くよ。」
「どうぞ、」
「私は、マッシュといいます。。妻のグルテです。」
「ほっこりと美味しいね。塩も上手いね。」
「不浄の塩は、美味しいです。海の神に感謝です。」
不浄の塩ねぇ。
葬式でもあるまいし。
どこかの偉いさんだと思って優しくしてくれてる。
まぁいい人達だね。
しかし、日本では、無いね、。
木のお椀に、木のフォークやスプーン。
箸がない。
ろくろっ首や、お岩も、困ってるだろうね。
あいつら、変な事しなきゃいいけど。
バタンとドアが開く。
「いや~やっと雨、降ったね。」
「おう、帰ったかい?」
「ああ、」
「し、失礼しました。」
驚いてお瀧を見る。
「オタツ様だ。少し休みたいとおっしゃってな。」
「私は、プスタ―と申します。」
「すまないね、気をつかわせて。」
「いえ、いえ。この雨だ、ゆっくりして下さい。」
「サッカーの街に行くそうだから、明日、馬車に乗せてさしあげてくれるか。」
「分かりました。小さな馬車ですが、どうぞ。」
「ありがとう。あと、皆、オタツさんでいいよ。宜しくお願いするよ。」
プスタ―は、見とれている様で、ボーっとしている。
お婆さんとお爺さんも、仕方がないと思い、そっとしていた。
次の日。
「凄い雨です。今日は、やみそうにもありません。」
「我らには、恵の雨ですが、」
「止んでほしくないのかい?」
「ほんとに久しぶりの雨です。一週間とは、言いませんが四、五日降ってくれたら、助かります。」
「そうかい、私は、ここにいていいのかい?」
「大丈夫です。ゆっくりなさって下さい。」
「悪いね。流石に悪いから、お婆さん、受け取ってくれるかい?」
小さな青い水晶が付いたかんざしを、帯の隙間から抜いて渡そうとするお瀧。
「いえいえ、申し訳ございません。頂けません。」
「いいから、受け取ってよ。そのかわり、雨が止むまで面倒見てくれるかい?」
「ほら、いいから、」
「すいません。すみません、。」
「こんなにいい物を、すいません。」
深々と頭を下げる三人。
「少し、聞いてもいいかい?」
「はい、」
雨女は、サッカーの街の事、この国の歴史などを簡単に教えて貰った。
自分が、なにか違う所に来てしまった事が、確信になりつつあった。
四日目、朝。
「雨が止んでます。」
「今日は、芋を売りに行けそうだ。」
「世話になったね。」
「いえいえ、もし、宜しければ、また、遊びにでも来てください。」
「本当に、ありがとう。楽しかったよ。」
少し経って、。
「準備が出来ました。」
プスタ―は、馬車から手を振る。
「じゃ失礼するよ。」
お瀧が、手を出すとプスタ―が恥ずかしそうに引っ張り上げる。
プスタ―の横に乗り座る。
「マッシュさん、グルテさん、お世話になったね。」
「また、おいで下さい。」
「では、行きましょう。」
「ビチッ」
プスタ―が馬を優しく手綱で叩くと、ゆっくりと進みだした。
老馬の様で元気がないが進む。
いつまでも手を振っているマッシュとグルテ。
「あんたの、親、いい人だね、大事にするんだよ。」
「はい、優しい両親です。」
「嫁さん貰って安心させてあげなよ。」
「はい、。」
あの両親に、この子有りとは、なんだけど、この子も優しい子だね。
奥手なのかね。
「すいてる女の子は、いないのかい?」
「えっっ、私は、オタツさんが好きです。」
恥ずかしそうに、話すプスタ―。
「そういうのじゃなくて、」
熱いまなざしで見るプスタ―。
「そういうのじゃないの。」
「はぁ、しがない農家です。歳もとってますし、なかなか難しいのです。」
「そうかい。」
「あの、オタツさんは、。」
「あたしは、そういうのじゃないんだよ。」
「はぁ?」
「まぁ、あんたの事、嫌いじゃないけどさ、そういうのじゃないんだよ。」
「わかっておくれ。」
「はい、では、わかりました。でも、これからも仲良くさせて頂けますか?」
「いいよ、そうだね、あんたら親子は、私、好きだよ。仲良くしようじゃないか。」
確かに歳とってる分、強かだね。
いい子なんだけどね。
「街並みが、見えて来たね。」
「はい、私は、ひいきにしてもらってる農家に行きますが、」
「じゃ、ここらで、いいよ、プラプラといくから。」
「ええっ?いいんですか?もう少し乗って行かれても。」
「うん、じゃ、あと少し。」
「はい。」
少し行った所で、降ろしてもらった。
プスタ―は、寂しそうにしていたが、きりがないからね。
取り敢えず、姿の気配を消して歩いて行く事にした。
普通に人々の往来があり、住んでる人が、生きている。
さてと、見て回るかね。
きっと、ろくろっ首や、お岩も、街に向かって来ている筈だから、。
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