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第九十六話 妖怪 雨女 其の二

「おお、あそこにいるのは、先程の三人だな。」

家と家の間の裏路地に談笑している三人を見かけた。

「サイン貰えるかな?できれば、写真も。」

休憩してるみたいだから、悪いかな?

まぁ、甘えさせていただこう。

私は、売れると思った芸能人は、大体売れるからな。

多分、あの三人も売れる気がする。

だって、雰囲気が違うからなぁ。


「あの、すいません。」

裏路地に入っていく。

あれ?

三人いたと思ったけど、二人だったか?

古い小さなお稲荷さんの社の横に二人が見える。

後ろ姿の人の奥にいる、べっぴんさんが、こちらを見る。

お綺麗な方だ。

「なんだい?」

「先ほど、撮影を見てたのですが、とてもお綺麗で、ファンになりました。」

「そうかい?」

「宜しければ、サインと、携帯で、写真を、」


「とてもお綺麗ってのは、こんな顔かい?」

後ろ姿の女性が振り向くと、右目の辺りがひどく腫れあがったむくみ、ただれた顔だった。

「えっっ、」

奥にいる女性は、とても美人なのに、手前の女性は、この世の者とは思えない。

「ええっ」

「ひひひっ、」

後ずさりする。

開いた口がふさがらない。

そんな中でも、奥に居る美人を見てしまう。

右目の辺りがひどく腫れあがったむくみ、ただれた顔の女性が、こちらに近づいて来る。

「うわっ」

更に後ずさりしようとすると、背中に何かが当たる。

手が触れると温かい柔らかい。

下を見てみると白く太い長い物がどこかに続いている。

再度、顔を上げると目の前に、逆様の顔があった。

「ひっ、」

一瞬の事だった。

ギュっと体に巻き付く、白く太い物の先に逆様の顔。

こちらに近づいてくる右目の辺りがひどく腫れあがったむくみ、ただれた顔の女性。

ゆっくりとぼんやりと、自分のまぶたが下がる、。

奥にいる美人がにやりと笑って見えた。


「あなた、あなた。」

「大丈夫ですか?お客さん。」

「う、う~ん。」

「あなた、大丈夫?」

「あれっ」

きょとんと妻の顔を見る。

「いないから探しましたよ。」

「良かったです。。気が付いて。」


路地裏手前の、家の縁側で柱に寄りかかる様に寝ていた様だ。

「?」

「じゃあ、私は、これで。」

「ありがとうございます。」

妻が、深々と頭を下げる。

「あっ、あの、ここでは、不思議な事が起きたっていう報告ありませんか?」

「んっどうされましたか?」

「いや、あの、その、」

「はははっ、ろくろっ首でも出ましたか?」

「何で、お解りに?」

「冗談ですよ。はははっ」

不思議そうな顔で妻が見る。


歩いて行く△△係員は、思う。

「まじか、まただ。しゃれにならんな。」

「客、来なくなるぞ。こんな事起きてたら。」

後に、真剣に上司に報告した△△係員は、笑い飛ばされた。

信用されない事に悲しんだが、この際、京都、大政映画村にお化け屋敷を造ってしまえば、変な噂が出なくなるのでは?と思う。

△△係員は、お化け屋敷を造る事に目標を掲げ、成功。後に営業部長の座まで昇りあがるのであった。


「あなた、大丈夫ですか?」

「ああ、全然大丈夫です。」

「なんです、嬉しそうな顔して?」

「いや、まぁな。」

あの女の人は、美人だったな。

まぶたに焼き付いて離れないあの顔を思う。

この歳になって、不思議な事ばかりだ、。

妻とは、違う女性でこんなにときめいた、そんな自分を、まんざらでもないなぁと思う。

「あと少しぶらぶらして帰ろう。漸五郎にまた、会えるかもしれないぞ。」

妻よ、あの人を探してしまう自分を許して下さい。


誰もいない筈の女子更衣室。

「姉さん、」

「なんだい?」

「あの男も、姉さんの事じっと見てたよ。」

「そうだね、お岩、うん、見てたね。」

「たまたま、先に私が居ただけだよ。」

「あ~あ、やんなっちまうよ。」

「いいじゃないか、たらふく恐れを頂いたんだから、。」

「ひひひっ、そうだね、たらふく恐れを頂いたよ。」

「あたいもだよ。あの顔、ひひひっ、」

「でも、若い男の恐れがいい。」

「漸五郎の恐れを頂きたいね。」

「あたいも、漸五郎の恐れがいい。きっと甘いよ。」

「我がまま言うんじゃないよ。」

「姉さんは、いいさ、」

「そんなに激しく妖をしてたら、問題になるよ。」

「そうだね、カラン、コロン、下駄の音でも聞こえたら、笑えないね。」

「ここは、楽しいからね、長く居たいだろ?」

「そうだね。」


夜。

「いいとこだね、このホテルは、」

「大物は、やっぱり違うね。」

「いいかい、見てるだけだよ。」

「分かったよ。」

「ろくろっ首、」

「はいはい、わかりました。」


「まぁ、どんなもんだか?見てみようか。」


漸五郎は、シャワーを浴び終えて頭を拭きながら、ベットに戻ろうとしていた。

すると、窓が開いていてカーテンが、揺れていた。

しとしと雨が降っている。

右を見るとそこに黒い羽織に、深川鼠袖の着物。

白塗りに唇の紅が映える。

目の辺りも淡く紅色が見える。

美しい長い髪を下ろし、下の方で束ねている。

「君は、」

「たいした度胸だね。で、どうするんだい?」

「どうやって?ここに?」

「野暮だね。」

顔を近づける雨女。

「名は?」

「お瀧で、いいさ、」



朝霧が深く、日が明けるのが遅いようだ。

「流石、姉さん」

「流石だよ。姉さん。」

「そうかい?」

「あたいは、無理だ、」

「あたいも、勝てる気がしないよ。」

「そんなの人それぞれじゃないか?次は、私が見る番にしようかね。」

「ええ~。でも、姉さん、中々いないよ。あんな男。」

「そうだね、普通は、ビビっちまう。」

ケンケンパッをしながらお岩が歩く。

「姉さんが横にいたら、惚れてもらえないから、今度は、消えててもらおうかね。」

後ろから、ろくろっ首が、言う。

「そりぁいい。そうしよ。」

お岩がそう言って振り向いた時だった。


「!」


歩いていた石畳の道でなく、野原にある細い道に立つ雨女。

霧が濃い。が、空気が澄んだ。全く違う場所だという事は、分かる。


あきらかに清々しい草の匂い。

草原の様だ。


「ろくろっ首、お岩?」

返事なく、静かだ。

読んで頂きありがとうございます。

いいねや、評価いただけると嬉しいです。

宜しくお願いします。

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