第八十六話 一角兎の角
村を出て、小さな滝の辺りで、ひと休みする事にした。
「はぁ、」
「どうしたのじゃ?アグルさん。」
「やはり、怖いのです。手の震えが止まりません。」
「うむ、しかし、のう。」
「私達、行商人は、盗賊の類が怖いですが、ケンタウロスを見てしまったらその比にもなりません。」
オフトンが、同情するように言う。
「うむ。まぁの、」
「村が、数多くある中であの村までは、来ますが、川を下るとケンタウロスの縄張りです。」
「ほう、アキノ村までで引き返しておったんじゃな。」
「はい、大陸を横断する大きな道の回りに小さな村が多いもので、あの村は、他の村に比べると奥深い所にあります。」
「ですので、毛皮など多く手に入れる事が出来る村だったのです。」
「アキノ村の連中に食料やらを渡して毛皮を得る訳じゃの。」
「はい。」
「うむ。アキノ村からこの川を下り行くとルー族村じゃ。いい所じゃよ。」
「ダミー、わしとルートとルーンは、一足先に帰って飯の準備でもするで、ゆっくり帰って来てくれるか?」
「はい、分かりました。」
「アイスも頼むで、あと、ルー族の村の事、説明しとってくれる?」
「はい。」
「ルーン、お願いできるか?」
「長、急いだ方がいいのか?」
「任せるで、」
「ルート、競争だ、行くぞ。」
小豆洗いが、乗ったとみるや、凄い勢いで走り出すルーン。
ルートも負けたくないのか、川の岩を飛びながら追っていく。
「す、凄い。」
アグルとオフトンが目を見張る。
「馬に乗ってくれば良かったですね。ダミー様。」
「でも、馬じゃ追いつけないし、ケンタウロスに乗れたのは、凄い事だぞ。」
「ケンタウロスに乗ると言いますと?」
「早かったぞ、風と共に走り抜ける様だった。」
「そんな事があり得るのですか?」
「まぁ、驚く事ばかりがあると思いますよ。」
「ゆっくり帰りますか?」
「そうだな、アイス。」
暫くして。、。
「お~い、デコイ?」
「おかえりなさい、小豆洗い殿。」
「うむ、お疲れさん、実は、行商人にあっての、。お主の知り合いかもしれんのじゃ。」
「そうですか、」
「サッカー領に、昔、いたらしいぞ。」
「アイスのネックレスを見て、その話になってのぅ。」
「ああ、私が、その、求婚する時に買い求めた物です。よく、サッカー家に来て銀細工などを売っていた様な。」
恥ずかしそうにする、デコイ。
「その行商人は、どうされたのですか?」
「その行商人オフトンさんと、もう一人アグルさんという行商人がダミー達と川を下って来るで、」
「馬率いて迎えに行ってくれるか?お主がおったら安心するじゃろ。」
「はい、分かりました。」
「では、さっそく。」
「合流したら、急がんでええからの、ゆっくり川降りてきてちょ。」
「飯の準備するで宜しくな~」
「はい。」
「シャローラビットや。」
「小豆洗い、」
「いつも、豆畑をよく見てくれてありがとうの~。」
「いやいや、我ら、一角兎は、この芋虫が大好きなのだ。」
手に取るシャローラビット。
「どうだ、食べるか?」
「いやいや、え~よ。小さいの芋虫。」
「いや、もっと大きくなるのだが、サッカーに豆の葉をかじるから早めにとって欲しいと言われたからな。」
「そうか、そうか、」
「でも、芋虫食べれるのは、嬉しいぞ、葉や、豆も好きだけど、やっぱり芋虫だ。」
「そういえば、シャローラビット、この土に刺さってる角は、なんじゃ?」
「これは、我らの角だ。こうして、土にいれ大地に感謝している。」
「ほほう。」
「角を入れてるから芋虫も湧くのだ。」
「うーん、そうかな?逆に耕しにくいような。」
「ええ~そうなのか、しかし我らの角の力を大地にな、」
「そんでな、この角、体からとったら痛いじゃろ?わしゃ心配じゃ。」
「小豆洗い、それは、違うぞ。角がでかくなってくると、先が丸くなってしまうし、重いから外すのだ。」
「そうすると少し小さくなるが先は尖るし、早く動ける。」
「そういう事か、」
「もともと体当たりして刺さったら抜けないと、動けなるなるからな。ポロっと取れるぞ。」
「実はな、その角は、耕しにくいし土に刺すのやめてもらえんかの?」
「まぁ、いいけど、芋虫が、少なくならんかな?」
「大丈夫じゃよ。大丈夫。土が耕しやすい方が芋虫増えると思うよ。」
「じゃからの、可能な限り拾ってくれるか?そんで、削ると薬になるから、集めてくれるか?」
「薬?」
「そうなんじゃ、薬にするらしいぞ。」
「薬には、ならんよ、小豆洗い、」
「じゃが、人間は、薬にしとるみたいじゃよ。」
「はははっ、我が角が薬、。」
「お礼は、するで、角取れたら集めて持ってきてくれるか?ああ、そうじゃ、魂水神像に奉納する事にしよ。」
「おお、いいぞ、集めて持っていく。」
「んでじゃ、欲しがる人間がいたら売るかもしれんがいいか?」
「人間が欲しがっているのは、知っている。」
「お礼は、するでの、。頼むよ。」
「解った。実は、、おかげさまで、我ら一角兎の子供が増えてきてる。食べ物の事やら、これからも、頼む。小豆洗い。」
「子供が増えるとは、ええ事じゃ。どんどん、豆畑と、芋畑を増やせば、いい。」
「ありがとう。小豆洗い。ありがとう。」
「人間とは、上手くやれてるか?」
「うむ。みな良くしてくれてる。特にサッカーとデコイは、優しい。」
「そうか、安心したぞ。」
「さて、皆に言って、すぐにでも、角を集めよう。」
「宜しく頼むで。」
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