第八十五話 行商人オフトンとアグル
「兎の毛皮なら、結構あるんじゃが、買ってくれんかの。」
「そうですか、見てみませんと一概には、値段は、つけれませんが。」
「この鉄鍋、欲しいの。」
「これは、いい物ですよ。あいにく、一つしかありませんが。」
「そっちのは、?」
「この古い小さい鍋は、我らが使いますので、売れませんが、」
「う~ん、まぁでも、いいでしょう。値段次第で。」
小豆洗いは、なんかの角を手に取る。
「これは、なんじゃ?」
「これは、一角兎の角です。加工してもいいですし、削って薬にしても良いです。」
「何と、薬にするのか。」
「はい、咳が止まらない時や、しゃっくりにも効きますよ。」
「胸がむかついたり、腹が重い時にも効きます。」
「一角兎の角か、うーむ。」
ふぬぬ。そうか。
なんか、豆の畑に落ちておったような?
「小さいナイフも多いのぅ」
「なかなか高いので売れないのです。」
苦笑いをするアグル。
「いや、わしゃ、ほしいのう。」
木や鉄で出来たお椀や、布や袋、紐。
どれもあって、損をしないものばかり。
「魚の干物は、売れんかの?」
「魚の干物は、嬉しいです。買わせていただきます。」
ぱぁぁと顔が明るくなる小豆洗い。
「ほ、ほらのぅ。」
自慢げにダミーの顔を見る。
「川や海に近いと魚に困りませんが、山を越えた辺りに住む人々にとっては、とても欲しがる物ですから。」
「我ら、行商人も食糧にしますし。」
「兎の干物は??」
「贅沢な干物ですなぁ。焼いて直ぐ食べると美味しい物を、乾物にするなんて」
「勿論買わせていただきます。」
また、ぱぁぁとニコニコする小豆洗い。
「しかし、魚の干物が人気あるとは、」
「アイス。保存できる物は、大事じゃぞ。」
「確かに、サッカー領にいた頃は、魚は高い物でした。」
ダミーが思い出す様に言う。
「僕も、思い出しました。子供の頃、カチカチに乾いた魚、かじったりしたなぁ。」
「身体にもええと思うよ。肉ばかりも良くないからの。」
「サッカー領というと、キラ王国の?」
「私の名は、ダミー サッカーです。」
すかさず頭を下げるオフトンとアグル。
「これは、失礼をしました。高貴な方とは、存じ上げず御無礼をお許し頂けますでしょうか?」
「頭を上げて下さい。頭を。良いのです。」
手を取りにこやかに笑顔になるダミー。
「ダミーさん、かっこいい。」
百舌鳥カマキリが、言う。
「流石、じゃのう。」
「わしも、ダミーが、高貴に思えたぞい。気品があったの、。」
「今は、小豆洗い殿の配下、ダミーサッカーです。」
「いや、ほんとじゃよ。お主は、大したもんじゃて。」
「あの、私は、昔、サッカー領地にいた事がありまして、」
オフトンが問いかける。
「ええ、そうでしたか。」
「はい、あの頃は、細工した女性向けのアクセサリーを扱っていました、。」
「サッカー家の方にも出入りさせて頂きました事もありまして、」
「執事の方ならば、私の事を、お分かり頂けるかと思います。」
「実は、訳があってサッカー領地は、キラ王国から領地没収、人間は、反逆罪、見つけ次第斬首とされたのです。残った者もわずかです。」
「サッカー様、これは、何という、、。あんなに豊かなサッカー領がそんな事になるなんて。」
「豊かだからこそ、招いてしまったと言えます。」
「何という事だ。」
オフトンは、悲壮感を漂わせる。
「あっ、父さんは?デコイって言うのだけど、」
横で黙っていたアイスが突然言う。
「デコイ様、デコイ様、いつも剣の稽古をされたり、鎧お姿の?」
「そうかも。」
「確か、サッカー家の取引の他に、個人的にお売りさせていただいた事もあります。」
「デコイも一緒に来れば良かったのぅ。」
「しかし、良く覚えていますね。」
「はい、商売の事は、でもそれ以外は、駄目ですが。」
「んじゃこれなんかも、案外、オフトンさんから買ってたりして。」
アイスは、首にかけたネックレスを見せる。
「はい、私がお売りしたものです。そうですか、、、、。確信しました。デコイ様は、お元気ですか。」
「父さん、元気です。」
「どうじゃ、村に来てみるというのは?デコイに会ったらええ。」
「焼き魚でもどうじゃ?」
「はい、アグル、行ってみようか?」
「うん、そうしよう」
「アイス、首からかけていたんじゃのう、気が付かなかったぞい」
「はい、母の形見です。」
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