第七十四話 救出劇 其の七 緊張の糸
コイバ亭の親父は、歩いて行くのを見守っていた。
これから、死にゆく連中から金などとれる訳がない。
せめての、はなむけのつもりだった。
列の最後に歩くリュックを背負う青年ダイを見つけた。
「ダイ、行くのか、」
「親父さん、」
「ダイ、行っては、いけない。ここに残るのだ。」
「親父さん、俺、ようやく、ご主人様を見つけたんだ。」
「ダイ、」
「今は、日雇いの子供かもしれないけど、必ず、きちんと仕えてみせるよ。」
「ダイ、金なら私が出してやる。ここに残るのだ」
「親父さん、またね~」
「ダイ。」
走り去るダイ。
「ヘリン~、」
「小豆洗いさん、」
「ちと、お主、先に行って様子見てきてちょ。」
「分かった。」
馬で走り去るヘリン。
「アイス、このお嬢さん方は、剣を持てるのか、」
「はい、私よりお強いですよ。」
「流石、サッカーの嫁さんじゃな。」
「じゃあ、馬もいけるな?」
「はい。」
キョトンと小豆洗いを見るイミンとスピン。
「別に動くという事ですか?」
「そうじゃの、それも考えねばなるまい。」
林が続く。
「少し、休憩しようかの。」
「ポリー、相変わらず、いい弓じゃの~」
「は、はい。有難うございます。」
「アイス、何が起きてるの?」
スピンが尋ねる。
「兎に角、後で説明しますね。」
「スピン、身をゆだねるしかないのですよ。」
イミンが言う。
「でも、お母様、」
「スピン様、楽しい事が待ってますよ。」
アイスが気を利かす。
「皆に聞きたいのじゃが、ここにいるもので、帰る場所がある者は、いるかの?」
「あの、サッカー領で芋を作っていた者ですが、耕してきた土地に、家に帰りたいのですが、」
「お主、名は、?」
「はい、ガリコ芋や、豆を造っています、グルスと言います。」
「グルス、みな、農家なのか?」
「はい、我らは、サッカー領の南部で、作物を造っている者達です。」
「良く分かりませんが、畑にいたら捕まりました。」
「み、みんな、聞いてくれ。」
アイスが、気まずそうに、
「サッカー領は、財産没収の上、反逆の罪で、捕まり次第斬首だ。」
「だから、、」
「兵士達が、話していましたから、なんとなくは、その、」
グルスや、皆、落胆する。
「じゃあ、家族は、」
「生きていたとしたら、運がいいだろう。」
「、、、。」
「なぜ、我らは殺されなかったんだ。」
「運が良かったとしか言えない。」
頭をかく、小豆洗い。
「サッカーは、生きておる。」
小豆洗いが言う。
「将軍が、」
「おおっ。」
「じゃから、兎に角、生きよ。」
皆、少し、元気が出たようだ。
「よし、進むぞ。」
「小豆洗いさん、後方に松明が動いています。」
スライダーが走ってくる。
「追手がきたか、急ぐぞい。」
小走りに急ぐ一行。
確かに後方にゆらゆらと松明の火が見える。
「仕方ないの、やるかの。」
「皆、道から外れて、あの丘に、」
少しだけ、こぶの様な丘に移動する。
緊張が走る。
「ヘリンを偵察に行かせたのは、失敗じゃな。」
「円陣をくめ、アイス。」
「ポリー、指示するまで、矢を射るなよ。」
「はい。」
「百舌鳥カマキリ、ゼンマイ、行くぞい。」
歩いて行く小豆洗い。
先程の林まで、戻る。
「松明を持って、ゆっくりと歩く兵達。」
あろうことか、武器や、兵糧らしき物を運ぶ部隊が、先頭である。
(なんじゃ?)
(変でござる。討伐兵では、ありませんな)
(あのぅ。どうするの?)
(待機、待機。)
(引くぞ、)
気配を消しながら、小豆洗いは、少しずつ、丘に戻る。
「静かに、静かに。」
ぞろぞろと、松明をもち、兵達は進んでいく。
兵達は、こちらに気が付いている様だが、通り過ぎていく。
「なんなんじゃ?」
「解りましたよ、」
アイスが、すまして言う。
「東門で、ルーインさんが暴れてるから、その応援ではないのでしょうか?」
「う、うむ。しかし、のう。」
「だってそれぐらいしか、考えられないし。」
「うむ。そうじゃのぅ。」
皆、緊張が切れたのか、ぐったりしている。
「爺さんや、」
小汚い爺が、小豆洗いに話し掛ける。
「ん、ついて来とるとは思ったが、ここまで来とったんか。」
「ふぉふぉふぉ、楽しそうじゃからのぅ。」
スライダーは、胡散臭い爺さんに、変な目を向ける。
「帰るなら、今の内じゃぞ。」
「焼き豚定食、ご馳走になったからの。」
「ちゃっかりしてるの。死ぬかもしれんぞい。」
「ふぉふぉふぉ、わしゃ、死なんよ。うまくやるからの。」
死んだふりをする小汚い爺。
「面白い爺さんじゃの。」
「ダイ、お主、この爺さんをコイバ亭まで、送ってくれるかの?」
「爺ちゃん、俺は、ヘリン様に仕えてるんだ。ヘリン様の命令なら聞くけど、」
「アイス、言い聞かせるんじゃ、」
イラつく小豆洗い。
「は、はい。」
「送りつけて、ダイも爺さんもそこで、解散せい。」
「嫌じゃ、」
「ヘリン様の命令なら、」
服の間から顔を出す、百舌鳥カマキリ。
「可愛いじゃない。ダイさんって言うの?」
「こりゃ、百舌鳥カマキリ。」
(もう、今更聞きますまい。)
「なんじゃ、ゼンマイまで、」
「ふぉふぉふぉ、面白いの~爺さん、お主、召喚士なのか、」
小汚い爺さんは、興奮している。
「ああ、爺さんが増えた。」
スライダーがポツリと言う。
「ああ、すまんがの、コイバ亭で飲ませてくれた水飲ませてくれるかの?」
「はい、」
手を出すスライダー。
「はぁ~旨い。旨いの。」
小汚い爺さんは、上手に飲む。
「すごいの~実は、有名なお方なのか?」
「いや、それほどでも、」
得意になるスライダー。
ああ、もう。
「夜が明けてしまう。そろそろ行くぞ。」
「ダイ、爺さん、わしゃ言ったからの。」
「はい、はい、ありがとう。ふぉふぉふぉ。」
「爺ちゃん、そんなに、威張らない方がいいよ。ヘリン様が帰ってきたら怒られちゃうから。」
「ぷ~」
スライダーが笑う。
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