第七十三話 救出劇 其の六 コイバ亭の親父の意地
アキノ桶があっという間に兵士の頭をどつく。
「一番奥じゃ。」
ゼンマイが乗っ取った兵士と姿を消した小豆洗いは、歩いて奥まで行く。
「あのう、すまんがのう?」
「サッカーの嫁さんと子供かの?」
じっと、兵士を見るイミンとスピン。
頷く。
「百舌鳥カマキリ切ってやれ、」
姿を現す小豆洗い。
鉄格子の鍵を切る百舌鳥カマキリ。
「良いかの、サッカーとダミーは、生きておるのじゃ」
驚く二人。
「逃げるぞい。」
「あの、他の捕まっている人達もサッカー領の人間です。」
「全員かの?」
「はい。」
頭をかく小豆洗い。
百舌鳥カマキリ出してやれ。
次々と鍵を切る百舌鳥カマキリ。
「静かに、静かに」
小豆洗いは、皆に言う。
五十人に膨らんでもうた。
「ゼンマイ、もうええぞ。」
ゼンマイが出たとたん兵士は倒れた。
「なんか知ったか?ゼンマイ。」
(家庭もある、普通の兵士でござった。ただ、道は覚え申した。)
「よし、こうなれば、堂々と牢屋破りじゃ。」
「ゼンマイ。道を。取り敢えず、コイバ亭にいくぞ。」
(はっ、)
辺りは、暗くなっていた。
ドアを開け、ぞろぞろと出て来る。
それを見て、広場にいた小汚い爺は、びっくりする。
柵が、切られたかと思ったら、ゆっくりと皆、歩いて行く。
先頭にあの爺がいるでは、ないか。
「これは、面白い。」
小汚い爺は、ゆっくりと後を付ける。
騒ぐことなく、ただ、ただ、ゆっくり歩くその人達は、泣いている者もいるようだ。
あまりにも、静かに歩くので、誰も何も感じないのだろうか?
不思議そうに見るだけだ。
ただ、徐々に抜けて行く者がいるのだろう、二十人ほどになっていた。
コイバ亭の二階の窓から見ていたアイスは、遠くから歩て来る人の列をみてびっくりする。
先頭に小豆洗い。
「見つけたわよ~」
一足早く、飛んできた百舌鳥カマキリ。
「な、なにがあったのですか?」
「とりあえず、コイバ亭にご飯を作る様に小豆洗いさんが言ってたわ~」
「何人ですか、」
「うんとね、任せるわ~」
いそいで、ドアを開け下に降りるアイス。
「ポリー、弓矢の準備だ。」
「はい、姉さん。」
スライダーは、寝ている様だ。
店の外に居たダイ。
「爺さん、」
ダイがあっけにとられた顔で、見る。
「ダイ、皆に飯じゃ。」
疲れ切った皆を見て、ダイは、驚く。
「うん。分かった。」
ええ子じゃ。
「小豆洗い殿、何が、」
アイスと、ヘリンとポリーが出てきた。
「疲れたぞい。牢屋破りじゃよ。」
「アイス、アイスなのですか?」
「イミン様、スピン様。」
「アイス、」
「スピン様」
「奇跡の様だ。」
「もう、死を覚悟していました。」
「中に、お入りください。」
「兎に角、店の中で、食べて下さい。」
「さぁ、」
アイスは、泣いている。
ヘリンとポリーも泣いている。
辺りを見る小豆洗い。
「スライダーは、?」
「はい、寝てます。」
ポリーが言う。
「はぁ、図太いのか、大物なのか、。起こしてきてくれポリー。」
「は、はい。」
「おかえりなさい、小豆洗いさん。」
「こりゃ、スライダー、皆に穢れ無き水を飲ませてやってくれ。」
「あれ、凄い人ですね。」
「ええから早く、ヘリン、ほら、連れて行け、」
スライダーの手を引くヘリン。
さてと、
「アイスを呼んでくれ、ポリー」
「はい。」
「小豆洗い殿、なんですか、」
「アイス、コイバ亭の親父に金を払って、こう言うんじゃ。」
小さく話す、小豆洗いと、アイス。
「はい、伝えます。」
「うむ。」
「皆が、食べ終わったら、出発するで、のう。」
「コイバ亭の親父さん、お世話になりました。ご飯のお金です。」
不安そうな顔をする親父。
「私は、サッカー領サッカー家の家来、アイスです。主人の奥様と、ご息女を助けに来ました。」
「ある日突然、反逆者にされてしまったサッカー家の者です。」
「多くの者が、捕まり死にましたが、運よく見つける事が出来ました。」
「しかし、このまま助け出す事ができるのか、」
「コイバ亭の焼き豚定食が、最後の飯になるかもしれません。」
「我らは、コイバ亭の情けを忘れません。」
「では、我らの意地を通しに行こうと思います。」
「さらばです。」
「まぁて、まぁて」
コイバ亭の親父は、声を荒げる。
「そんな事情があるのなら、この金は、受け取らない。」
「貸しにしてやる。」
「今度、このコイバ亭に来た時に、払ってくれりゃいい。」
「親父さん。」
「親父さん。」
野次馬や店員達が見る。
「親父さん。」
アイスが、何かを感じ取り下を向く。
「お客様がお帰りだ、皆で、見送るぞ。」
「いよっ、いいぞ親父。」
野次馬たちが騒ぎ立てる。
店の外に出て、松明を持つコイバ亭の親父。
先頭を歩いて行く。
それに続く店の店員達。
野次馬たち。
その後ろを、馬に乗ったアイス。イミンとスピン。
その脇に馬に乗るヘリンとポリーが続き、民達が続く。
王宮の回りの城下町の間、コイバ亭の親父が先頭を歩いて行く。
知り合い達が親父さんに手を振っている。
所々にいる、兵達も見て見ぬふりをする。
城下町の端に来ると
「ここで、お別れだが、店で、待ってる。必ず、会いに来いよ。」
「ありがとう、親父さん。」
アイスが、手を取り頭を下げる。
イミンとスピンも頭を下げる。
「きっと、必ず、店に来いよ。」
店員達や、野次馬もいつまでも見送っていた。
コイバ亭の親父と、サッカー家のアイスの一連のやり取りは、一か月後、劇となり大人気となる。
ちなみに、アイスは、牢屋を破る英雄となる。
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