第五十二話 門に入れなかった兵士達
大分、走ってきたの、。
夕日が影を伸ばす。
ケンタウロス達六馬は、海岸線を颯爽と走る。
早いし、気持ちいいのう。
「ここらで、休憩じゃ。あそこの林に入ろう。」
「はっ。」
大きな木が少し生えている林に入り、休む一行。
「長よ、改めて言おう。良き采配であった。」
ケンタウロス達は、にこやかに笑う。
「なんもしとらん、なんもしとらんよ。」
「小豆洗いさん、照れてる。」
(良かったでござるな。小豆洗い殿。)
「いや、ゼンマイと、ルーイン達の頑張りじゃよ。」
「ゼンマイが、川を渡る兵を倒したと聞いたぞ?」
(無慈悲な殺生でござった。)
「ゼンマイありがとう。ああ、私~なにもやってないわ~」
「そんな事もないぞ、皆がいてくれたからこそじゃ。ジッター達ナマズマンの動きも良かったぞ。」
「今回の様な戦い方は、初めてだ。我らは、己の力を誇り戦い抜くだけだったから。」
「ケンタウロスらしいの。でも、そういう戦い方は、一対一の時にすればええじゃろ。今は、わしが、長じゃし、なるべく誰にも死んでほしくなかったからの。」
「我らルー族は、悪魔に乗り移られたばかりで、牝と子供を含め五馬も死んでしまった。我々大人の雄のケンタウロスは、六馬しかいない。だから、長の采配に感謝している。」
「落ち着いたら、励んでもらうしかないの~」
「はっはっはっその通り、その通り。」
「はっはっはっ」
「ルートだって、そろそろええじゃろ?」
「うむむ、東のアーパ族にでも、嫁をとりにいかせるか。」
「可愛い子には、旅をさせろじゃよ、嫁探しの旅もええじゃろ。」
「その時が来たのかもしれぬな。」
「長、このまま走り続けたら、キラ王国が見えて来るが、どうされる?」
「うむ。撤退している奴らに追いついて戦う気は、ないのじゃが、問題は、大きな軍隊が、コースト魔法顧問達を助けに来る事じゃ。来ないかもしれんしの、」
「ここの林以外にないぞ、身を隠す所は、」
「そうか、ならば、ここにいて、少し様子を見るかの。」
「ならば、こうするか。」
手をかかげたルーイン。
すると、両手から霧の様なものが出て来る。
「おお、何じゃ、?」
林を覆う霧。
「いやなに、戦いが一息着いた時に、穢れ無き水を飲もうと思ったら、こんな事も出来る様になったのだ。」
「ますます、強くなるな。」
「ルー族の名をもっと高めるつもりだ。」
「うむ。この霧なら、身を隠せるの。有り難い。わしが、少し見て来るで、皆休む様に。」
「梵、」
狸に変化した小豆洗い。
「おおっ長?なんという事だ?」
ケンタウロス達、一同は、目を丸くする。
「じゃ行ってくるで、悪いがこの桶を持っててくれるか?ルーイン?」
「分かった。」
百舌鳥カマキリ、ゼンマイしっかり捕まっていろよ。」
「は~い」
(はっ)
タタタタっ走り去る小豆洗い。
林から、走り出るとまた、草原が続いている。
右を見ると海が、白い砂浜が続く。
のどかで、空気がきれいだ。
「のう、わし等、このままで、ええのか?」
「私は、楽しいですよ~」
(某も、今を楽しんで、ござる。)
「そうか、まぁ河童を探す事もせんといかんし、いつまでも、長という訳には、いかんのう。」
(ですが今の状態で、出ていく訳には、)
「そうよ~ゆっくりしましょう。」
「まっそうするか。お主らがそういうならば。」
暗くなってきたが、遠くに撤退してる兵が見える。
所々、松明を持つ兵がいる。
迎えに来た兵の様だ。
兵達の足取りが重い。
距離をとり、ついていく小豆洗い狸。
時間かかってしゃあない。
いくか、。
遠巻きに抜いて走り去る。
点々と歩く、兵達を見ながら、走って行くと、木の塀が見えてきた。
遠くその先には、大きな大きなどこまでも続く城郭が見える。
立派だ。
木の塀のつながる先に、松明のある、木の門が見える。
たどり着いた兵達は、安心したのか、皆、横になったり、腰を下ろし、休んでいる。
笑顔が多い。
(ここが、一番外側の門の様じゃ。)
(凄い立派な所ですね。)
(そうじゃな。見事な城壁じゃ。)
(入ったら、流石にまずいの。少し見ているか。)
(兵隊さん、みんな、喜んでいるわね~)
(そりゃそうじゃろ。帰って来たんじゃから。)
すっかり暗くなった。
ポロポロと、兵達が帰って来る。
一際豪華な兵隊服の人間が、馬に乗り帰って来た様だ。
「ようやく着いたか、」
「サッカー将軍、お戻りになられましたか?」
門兵達が、出迎えている。
「報告に行かねばならぬ。」
中が賑やかじゃの。
しかし、一日の距離で、こんなキラ王国という国が、ある訳じゃから、考えねばなるまい。
人間は、侵略と破壊をする生き物じゃからの。
ギィ~ギィ~。
門が閉まった様だ。
入れなかった兵士もいるが、なれているのか、座り込んで寝ようとしている。
「ちと、百舌鳥カマキリと、ゼンマイは、ここらに居てくれるかの?」
「あそこの兵達と話して来る。」
「えっ?」
(お気をつけて)
「梵。」
姿を見せる小豆洗い。
ふらふらと歩いて行く。。
「門閉まってもうたの。」
「なんだ、爺さんも入りそびれたか?」
「お前さん達どうしたんじゃ?」
「爺さん、聞いてくれるか?俺らなぁ、ケンタウロス退治に行ったけど、負けて帰って来たのよ。皆んな死んじまった。」
「まぁ帰って来れただけ運がいいけど、もう兵隊やめっかな。」
「俺もだ。」
「大体なんでケンタウロスなんかに喧嘩売るんだよ。」
「あんな所手に入れたって何も意味がねえ。無駄死にだ。無駄死に。」
「偉いさんは、俺らを何だと思っていやがるんだろ。」
「俺は、兵隊辞める。」
「それは、大変じゃったのう。でもなんで攻めたんじゃ?ケンタウロス強いじゃろ?」
「上が馬鹿だからだよ。」
「あの川まで領地広げて何になるんだ。」
「上が馬鹿だから、皆んな死んじまった。」
「まぁサッカー将軍が嫌われてるのが一番じゃねーか。」
「ああ、そうだな、サッカー将軍の家、昔からある名家だけど、王様と仲悪いみたいだし」
「ああ、俺ら貧乏くじだったなぁ。」
「生きて帰ってきたんだ、頑張ろうよ。」
「皆んな死んじまったのか?」
「ああ、今、ここに帰って来てない奴らは、もう死んでるよ。」
「そんなにかの?」
「ああ、殿に残して来た中隊だって、なぁ?無理だよな?」
「コースト魔法顧問か、死んだろな。」
「そうかのぅ可哀想に。助けにいかんのか?」
「いやいや、絶対嫌だ。」
「爺さんも見たら絶対行かねーよ。なぁ?」
「めちゃくちゃだったからなぁ。爺さん、戦うとかじゃねーのよ。」
「分かんねーだろうなぁ爺さんは、」
「でも、サッカー将軍達は、コースト魔法顧問とかの安否確認しに行くんじゃねーの?」
「せめてコースト魔法顧問の亡骸ぐらいは、持って来ねーとよ、かっこつかないんじゃないかなぁ」
「うわーある。それある。」
「サッカー将軍古いからなぁ、下手したら、コースト魔法顧問助けに行くって、突っ込んでいきそう。」
「じゃここにいたら、俺ら、連れてかれるんじゃねーのよ?」
「やばい、ここにいたら、やばいよ」
「二、三日、どっか行ってみたらええじゃろ?」
「うわー歩きたくねーけど。行くか?」
「そうしよう、爺さん、俺ら行くわ。」
「気をつけての」
「爺さんもな。」
「ああ、爺さんは、ここで誰も見て無いんだからな?」
「解っとる。」
「爺さんも元気でな」
「ああ。気をつけての」
門からゾロゾロと歩いて行く兵達。
南の方へ歩いて行く。
(百舌鳥カマキリ、ゼンマイ?)
(小豆洗いさん、ここに)
(おおっそこか。)
(兵達も大変じゃのう)
(勉強になります。)
(そうじゃの、という事は、サッカー将軍とやらは、また、来るという事か?)
(そうよね、さっきのお話なら、)
(コースト魔法顧問の亡骸を見に行く事は、確実しれぬやも。)
(うむ、取り敢えずルーイン達の所へ戻るかの)
小豆洗いは、姿を透明にしながら、闇に溶け込み消えた。
遠くに、狸が走り去っていく。
どの歴史が動いた時も、第一線の兵士達は、大変だったとおもう。
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