第五十話 侵略 其の二
「戻ったぞ~」
血だらけでルーインとケンタウロス二馬とルートが戻ってきた。
「大丈夫か、ルーイン?」
「返り血だ。シャローラビットや、他の一角兎達は、無事に川の上流に避難したぞ。」
「それは、吉報じゃ。安心したぞ。」
「上流の敵の兵隊は、壊滅したぞ。その内、川の上流から、死体が流れて来るだろう」
「凄い量の筏と、丸太だな。」
「まぁの、戦利品じゃの。」
日が暮れる、今日は、攻めてこんじゃろ。
「ジッター。ナマズマン達、川から見張っていてくれ。」
「死んだ人間食べてていいか?」
「ええよ。」
「こんなご馳走は、久しぶりだ。」
「ああ、食べ終わったら、鎧や、武器などは、こちら側の水辺に置いといてくれ」
「分かった。」
「では、頂こう。」
ジッターや、ナマズマン達は、嬉しそうだ。
まぁ、死体が一杯漂ってるよりは、助かるの。
「凄い量の丸太じゃ。」
「スライダー、へリン、ポリーこの丸太を使って、砦にしたいから、、うーんどうしよかの?」
「とりあえず、川側に塀を作りますか?」
「そうじゃな。そうするかの。」
「百舌鳥カマキリ、丸太の端を切って尖らせてくれ。」
「は~い」
シュッシュッと百舌鳥カマキリは、切って行く。
「我らも何かないか?」
「ルーイン達は、少し休んだらええよ。」
「長よ、私は、水の使徒になったのだ、回復は、間に合ってるぞ。疲れ知れずだ。」
「ああ、そうか、疲れ知れずか、」
確かに、疲れているケンタウロスは、いない。
皆、スライダーか、ルーインから穢れ無き水をもらっている様だ。
水の神、やってもうたな。
多分、大変な事が起きてるぞ。
疲れ知れずのケンタウロスなんて、いていいのかの?
ただでさえ、強かったのに。
「じゃ、ケンタウロス達も、丸太をこの列に植えて行ってくれるかの?」
「やるぞ、」
「おう。」
「おう。」
対岸のキラ王国の兵舎
「一体何が起きているのだ?」
「サッカー将軍、川の上流の部隊、ケンタウロスにより全滅しました。」
「なぜ、ナマズマン達は、共闘しているのだ、誇り高きケンタロウスは、自分達で、戦うものではないのか?」
「サッカー将軍、ここは、引くべきです。」
「コースト魔法顧問、引けぬ。引けぬぞ。」
「しかし、三個中隊が、全滅している今、どうされるおつもりですか?」
「上流は、ケンタロウスがいる。川は、ナマズマンだ。川を進むしかあるまい。」
「しかし、ナマズマンが、あのような攻撃をしたと思えないのです。」
「それも、明日、解るだろう。」
「それでは、兵が可哀想過ぎます。」
「うむむ。では、どうするべきだ。」
「では、明朝、私の魔法部隊と、一個中隊で、上流から攻めていきます。将軍は、私の動き次第で、引くか、攻めるか判断してください。私達が、全滅したのなら、どちらにせよ、無理です。引いて下さい。」
「コースト魔法顧問、お主、」
「賭けに出るしかありません。私は、川を渡るのは、危険だと思います。」
「いや待て、やはり明日は、一日様子を見よう。私も軍人の端くれだ、急ぐ場面ではない。」
「分かりました。では、防御陣形を張らせます。」
夜が明けて。
「サッカー将軍、おはようございます。報告があります。」
「なんだ、どうした?」
「対岸の川沿いに、我らから奪った丸太で、塀が出来ております。」
「なんだと、」
外にでて、見てみると、確かに川沿いに丸太が打ち込んである。不出来であるが、正面からは攻められまい。
「おはようございます。サッカー将軍。」
「コースト魔法顧問、ケンタロウスは、防御を固める生き物では、ないはずだ。」
「はい。」
「兵たちの士気も低い、引くしかない様だ。」
「病人、怪我人達は、撤退せよ。」
「サッカー将軍、ご英断でございます。」
「うむ。」
ルー族陣営
「よい朝じゃ。」
川の死体もどっか行ってしまった様だ。
「小豆洗いさん、今日は、私、出番あるかしら?」
百舌鳥カマキリは、張り切っている様だ。
(百舌鳥カマキリ殿、何もしなくてもいいではありませんか?)
「そうよ、そうなんだけど、みんなに悪いから~」
「まぁの、わしもなんもしとらんよ。」
小豆洗いは、頭をかきながら照れる。
「んっ?」
「皆、敵が、逃げ始めた様じゃぞ。」
「ルーイン、ルーイン、」
「おおおおおお~」
「おおおおおお~」
ケンタロウス達の雄叫びが響く
さて、どうするかじゃ。
「ルーイン、あの、のう?背中乗ってええか?」
「長、早く乗れ、追撃をかけるだろ?」
「おお、頼む。」
「へリンと、ポリーも、ケンタロウス達に乗せて貰え。牝と子供以外は、ゆくぞ。」
「ああ、スライダーは、牝と共に警戒をしておれ、異変があったらすぐ知らせろ。」
「ジッターおるかの?ナマズマン達は、このまま守りを固めて欲しい」
川の水辺で手を挙げるナマズマン達。
「よし、上流まで、上がるぞ。」
「おお。」
「おお。」
対岸のキラ王国の兵舎
「サッカー将軍、ケンタロウス達が、移動しています。」
「うむ、くるか。」
「大隊、全軍撤退。撤退指示だ。」
「サッカー将軍、我が魔法兵達を連れて行って下さい。私が、守りを固めます。」
「怪我人達を逃がす為の時間が欲しいが、頼めるか?」
「このコースト、キラ王国には、良くしてもらいました。必ず、時間を稼ぎます。」
「一個中隊を置いていく。頼むぞ。」
負け戦だ。
国命とはいえ、気が乗らなかったのだ。兵の家族になんといえばよいのだ。
サッカー将軍は、頭を抱えていた。
一方的に奪おうとして、逃げ帰る事になるとは、。
情けない。せめて、半数は、キラ王国に連れて帰りたいが無理の様だ。
良くて、二個中隊だろう。一個大隊の内、六中隊の、よくて二個中隊とは。
上流に移動し川を渡った小豆洗い達。
「良いかの、皆、散らばり過ぎないように、ゆっくりと狩れ~」
「おう。」
面白いように敵を倒していく。
エルフの矢と、ケンタロウスの矢が、飛んでいっては、人が倒れていく。
「長、あれが、敵の大将だろう。」
剣を向け、知らせるルーイン。
ぞろぞろと、ゆっくり撤退している様だ。
「まぁ、追い込まれたもんは、何するか分らん、捨て置け。」
「それより、敵陣営の所に一旦行こうや。もしかしたら我らの陣に攻めてる奴らがおるかもしれん。」
「おう、」
ケンタロウス達に乗りながら、敵から走り去る。
後ろから、敵の歓喜の声が聞こえる。
敵陣営についた。
テントや食事は、そのままになっている。
全てを捨て、逃げた様じゃの。
そんななか、じっと守りを固めた兵達がいる。
「しんがりの様じゃの。」
敵ながら、あっぱれじゃよ。
対岸のスライダーが、手を振っている。
無事の様じゃ。
「おーい、ジッター。大丈夫だったか?」
「ああ~何もなかったぞ。」
「そうかの。敵は、大人しく守りを固めただけか、」
玉砕覚悟の様じゃ。二百人ぐらいか。
「お~い、誰か、話を出来る者は、おらんか、助けてやってもいいぞ。」
ざわつく敵達。
「長?」
ルートは、不思議そうに尋ねる。
「なんじゃ?」
「誇り高き死を与えた方が、いいのでは、?」
お主、根っからのケンタウロスじゃの。
「ふふっ。」
ルーインが、嬉しそうに笑う。
「気持ちは、解るが、死からは、何も生まれんぞい?」
「?」
考えるルート。
周りのケンタロウス達も不思議そうだ。
「私は、コースト。サッカー大隊魔法顧問だ。話をしたいのだが。」
「わしは、小豆洗い。ケンタロウスのルー族の長だ。」
「?どういう事なのか?」
「まぁ儂が長なんじゃよ。分かってくれ。」
気持ちは、分かるぞよ。だって儂、ケンタロウスじゃないし。
「私達、この中隊は、命を捧げるつもりで、ここに残った。助けてくれるのか?」
「そもそも、わしらは、戦うつもりは、ないのじゃ。お主らが、勝手に攻めて来て、勝手に帰るだけじゃろ?」
「では、助けてくれるのだな?」
ザワザワと、話す兵達。
「ええけども、どうしようかな?」
「長に従うぞ。」
「私から、提案があるが。」
へリンが手を上げる。
「んっなんじゃ?」
「とりあえず、捕虜にしたらどうだ。」
「じゃそうするかの、武器を捨て、鎧を脱げ。」
「エルフまで、いたのか?どうなっているのか。まぁいい。助けてくれるのだな?」
「口の聞き方、分らん訳じゃないだろう?」
へリンは、厳しいの。
恥ずかしそうに下を向くポリー。
「申し訳ない。降伏する。攻撃しないで下さい。」
コースト魔法顧問は、顔を下に向ける。
他の兵達は、命が助かった喜びに満ちている。
まあ、良しとしよう。
「約束しよう。皆、敬意をもって、捕虜とするぞ。」
「戦いは、終わりだ。勝ちどきをあげよ」
こちらは、無傷と言えよう。良かった。良かった。
生きてたら色々あると思いますが、戦争がある事っていつの世も変わらないのですかね。
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