第三十八話 水の加護
「川を下るのはええが、スライダーよ、」
「はい、」
「ケンタウロスは、嫌いか?」
「嫌いというか、怖いです。魔物の中でも、特に強いから、近寄ったら駄目ですって。」
「わしゃ、悪い奴には、思えんかったけどな、。」
「会った事あるんですか?」
「うむ、もうちょい行ったら、草原に出ての。更に行くと、凄い勢いで走って来るぞい。」
「行くのやめましょう。殺されます。」
「うむ。」
ニコリと笑う小豆洗い。
「しかし、こんだけの草原じゃ、畑にでもすればいいのにのぅ」
「おっおるの。んっ仲間割れかの?」
「やばいです。本当に。」
「小豆洗いさん、喧嘩してるのかしら?」
あらら、結構血だらけじゃぞ。
これ、近づいたらいかんやつ。
「戻るか?」
「戻りましょう。」
スライダーは、引き返す。
(関わらない事も大事でござる。)
「ええっほっとくの?」
「あっそうじゃ、百舌鳥カマキリ、お主の甘い声で、喧嘩を止めてみ。ええか、全開じゃぞ。」
「そ、そうね。じゃぁ、喧嘩はやめてぇ~」
甘い声が響き渡る。
どうじゃ?
ああっ
「真ん中の奴が、こっちきよった~」
「逃げろスライダー。」
「ゼンマイ、出て来い。」
「んアッ、あ、あアッ」
「アッああ、アアアア〜~」
百舌鳥カマキリから、出てくるゼンマイ。振り向くスライダー。
「ええから、スライダー逃げろ。百舌鳥カマキリ、ゼンマイ、肩に乗れ。」
弓から凄い勢いで、矢が飛んでくる。
ゼンマイが、ビっと弾き飛ばす。
不味いの、やるか。
スライダーは、走る。
「な、なんじゃこやつ。目が、真っ黒じゃ、なんか変じゃぞ。」
「そこの者、逃げるのです。」
他のケンタウロスが、走って来る。
「お主は、ルーインといったの?なんじゃ、どうしたのだ?」
剣を振りかざす黒い眼のケンタウロス。
「はっ」
剣を切り飛ばす百舌鳥カマキリ。
「おおっ、偉いぞ百舌鳥カマキリ。」
前蹴りをかます黒い眼のケンタウロス。
「ぐっ痛たた。」
受ける小豆洗い。
追いついたケンタウロス、ルーイン達。
また、剣を交える。
流石に、剣も折れ、五対一では、押され始めている。
「漸っ」
ルーインが、会心の一撃をいれたようだ。
「ひぎゃぁ~」
「ルー族の長、ルーインが打ち取った。」
首を掲げる他のケンタウロス達。
「おおおお~」
「おおおお~」
涙を流している様だ。
「終わったようじゃの?」
「そこの者、大丈夫か?」
「ああ、ちと痛いがの。」
「そうか、ルー族を代表して謝ろう。それにしてもあの蹴りを受け止めるとは、中々やるようだ。一度、手合わせを所望する。」
戦うのが好きなんじゃのぅ。
「まぁ後々にのう。」
「あの者は?」
ルーインは、剣を遠くで見ているスライダーに向ける。
「あ奴は、儂らが連れて歩いてるのじゃが、まずいか?」
「人間は、何をするか分らぬ。」
「儂が、責任をとるで。」
「強き者よ、ならば、そうしよう」
「スライダー、大丈夫じゃ、こっちに来い~」
小豆洗いは、大きな声でスライダーを呼ぶが来ない。
「百舌鳥カマキリよ、連れておいで。」
フワフワと飛んでいく百舌鳥カマキリ。
「皆、傷だらけでないか?大丈夫かの?」
「ああ、誇り高きケンタウロスとして、恥ずかしい事だが、強かった。」
「うむ。」
「二日前に、我らの仲間が、悪魔の誘惑に負けたのだ。悪魔に乗っ取られ、尋常ではない強さであった。」
「二日前とな、」
「二日前、悪魔に心を奪われたそ奴は、まず、自分の子を殺し、子の母親も殺した。そして、駆けつけた仲間も二人殺した。」
「我々が、駆けつけ戦いが今まで、続いた。」
なんと、二日も闘っていたとは、。
「傷が少ない者、牝や子達に、戦いが終わった事を伝えにいけ。」
ルーインが伝えると、一馬が、手を挙げ走っていく。
「お主、太ももに矢が刺さっておるではないか?どれ、抜いてやるで、」
矢を手に取り抜こうとするが、びくりともしない。
「矢のかえしが、深く入っておるで、切るぞ、ええな。」
「百舌鳥カマキリ~。早くこい。」
スライダーは、百舌鳥カマキリを頭に乗せ、走ってきた。
「百舌鳥カマキリ、優しく、切っていくぞ。」
すると、スライダーが、
「あっ待って下さい。傷を綺麗にしないと、後で腐ります。洗います。」
皮袋で、出来た水筒の水をかけるスライダー。
「あっそうだ。」
右手を当てみるみる水が溢れ流れていく。
「今じゃ、百舌鳥カマキリ、」
百舌鳥カマキリは、矢にそってスゥと切っていく。
血が溢れる。
流石は、ケンタウロス。じっと耐える。
「とれた。」
矢じりがでかいかえしの矢である。
そりゃ抜けんよ。
スライダーは、手を当てながら、水を流している。
傷がみるみる癒えていく。
「俺、凄いかも。多分、傷の中は、治り難いけど、何とか、表は塞がったみたいです。」
そんな効果があったとはのう。
「水の神に感謝じゃの。」
「有難う。弱き、者よ。」
「有難う。強き、者よ。」
ルーインは、頭を下げる。
それを見た、残りの三匹も頭を下げる。
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