第三話 針金虫妖怪 ぜんまい
空気が澄んでいる。
森深く渓流に入った様な清々しい水の匂いが広がる。
濃霧だが、牛久沼の朝霧ではない。
どこなんじゃここは、、、。
わしゃ、てっきり連れてこられたと思ったわい。、。、。
まぁまだ、信用できんが。
ちらりとカマキリを見る。
「一体どういうことなんじゃ」
「本当に私達も何の事だか、分からないのです。小豆洗い様。」
「ふぅ、。じゃとしたら、ここにいるのは、まずい。ついてまいれ。」
背後を気にしつつ、どうしたもんじゃ。と心を少し緩める。
濃霧がひどく、先が見えない。
永遠と森の中が続くようなそんな錯覚に陥る。
「ん?水じゃ、流れる音がする。」
警戒しつつ先を急ぐ小豆洗いとカマキリ。
谷じゃの。下に行けば川があるはず。
傾斜を降りていくと大きな岩がごろごろとある。
清流が流れていた。
上流に小さな滝が見える。
辺りを警戒しながら小さな滝まで歩いた。
小さな滝の裏の窪みにどっと腰を下ろした。
何かが襲ってくる訳でも無い。
ふむ。
「疲れたかの?」
「い、いえ、大丈夫です。驚きましたが。疑われるのも分かります。」
こりゃ早とちりじゃったか、、
「すまんかったのう、わしゃてっきりお前さんがのう。お前さんの能力か何かだと思ってな。」
「私、物の怪になって初めてでした。戦いというのでしょうか、そのぅ、こういうの。小豆洗い様の妖気が凄くって。」
「ほんにすまんかったのう。そんでも、わしの小豆弾かれたのは、おったまげたぞい。」
「私のお腹の中に居る、針金虫妖怪のぜんまいです。ほら、挨拶して。」
(しかしながら、信用して良いのでしょうか?百舌鳥カマキリ殿)
「念話か、やるのぅ、便利じゃ。わしも出来るぞえ」
「ぜんまい、今は、手を取り合う時よ。小豆洗い様の力を見たでしょう、私達は、頼るしか無いのよ。」
「頼られても、わしゃ分からんぞ」
「ぜんまい、小豆洗い様の素直な気持ち、分かるでしょう。」
(百舌鳥カマキリ殿の仰せのままに。)
「ぜんまいは、硬いのだから、もう。小豆洗い様、お許しください。」
ペコリと頭を下げるカマキリ。
「許すも何も、わしの早とちりじゃった訳だし、それに様付けは、いらんぞぇ、主従でも無しに。」
小豆洗いは、とってつけた笑顔で、カマキリを見る。
「まあ、お優しい、流石、小豆洗い様、あぁと、小豆洗いさん。ほぅら、ぜんまい。」
カマキリは、優しくお腹をさする。
(改めまして、某、針金虫でございました。カマキリ殿のお腹にいましたところ、力を授かりました。名をぜんまいと申します。)
「針金虫というたら、よく、水辺にいる硬い、くねくねしてるあれか?なんでじゃ、なんで、腹の中に?」
(実は、針金虫は、川底で生まれ、何者かに食べられる事で、寄生し申す。某は、モンカゲロウ殿に食べられ、寄生していたところ、オオカマキリ殿にモンカゲロウ殿が食べられまして、寄生先をオオカマキリ殿に変えまして、今に至り申す。)
「寄生のぅ。カマキリの中にずっといるつもりじゃったんか?」
(やがて、その、のっとりまして川に行き腹から這い出て、牝の針金虫と出会い申す。)
「さらりと怖い事いうのぅ。」
カマキリは、お腹を優しくさすっている。
(そ、その、某、針金虫の頃は、意思を持っておりませんでした。ただ、ただ、生きており申した。)
「虎視眈々とのぅ。」
「小豆洗いさん、いじめないで上げて下さい。今となっては、私の妖怪になる前からの唯一の仲間です。」
(カマキリ殿、某、ずっとついていき申す。)
「ゼンマイ、私のお腹でゆっくりしていていいからね。」
カマキリは、お腹を優しくさすっている。
「ぜんまいよ、じゃあれか?その気になったら儂ものっとれるんか?」
(でき申す。あれだけの妖気をお持ちのご様子なれば、時間はかかり申すが。)
「さらりと怖い事いうのぅ。じゃあ儂の中でずっと生きていけるんか?」
(それは、でき申さず。某、百舌鳥カマキリ殿の中でなければ、力を蓄え申さず。)
「なんとなぁ。妖怪になり寄生から宿り主からの親と子の関係へと変わったか。」
(某は、百舌鳥カマキリ殿を感謝、お慕いしており申す。守り抜く所存。)
「忠義ともいえるのぅ。」
「ぜんまいは、硬いんだから。」
「さっきから、その、百舌鳥カマキリとゆうのは?なんなんじゃ?」
「申し遅れました。私、百舌鳥カマキリと申します。」
ぜんまい、硬いです。笑




