第百二十二話 妖怪 元の木阿弥 其の四
「ほいで、お主、今までどうしておったんじゃ。」
小豆洗いが、拍手をしながら、問いかける。
「いや、それが大変でございました。」
元の木阿弥は、水の神をチラチラ見ながら、小豆洗いに答える。
「もう駄目だと、死ぬかと思いやした。」
「うむ。」
「確か、諏訪湖、湖畔の老人ホームで、爺さん婆さん達と戯れていた時でございます。」
「あんた、戯れるって、」
「へい、姉さん、爺さん婆さん達が、お散歩に行くみたいなので、ついて行きました。」
「どこに?」
「へい、上諏訪神社でした。」
「ほほぅ。」
「で、ぶらぶらとしてましたら、目の前の景色がガラッと変わりまして。」
「ああ、そうかい、あんたも、そんな感じだったんだね。」
「へい、目の前にそれは、大きい、大きい、塀が続いている所にポツンと立ってまして。」
「ふ~ん。」
「あっしは、何が何だか?飛ばされた感覚がある訳でないし、」
「誰かにやられた感じもありやせんし。」
「まぁ、誰かの所に動いちまえばいいと、思いましたが、」
「感じられないのでやんす。どこにも。」
何かを思い出した小豆洗い。
「そりゃそうじゃの、儂も、桶を牛久沼の稲荷川ほとりに忘れてきてしもうての、念力で呼び寄せようとしても、来んかった。」
「あの桶は、高貴なお方から貰った、大事な桶じゃ、儂の妖力を溜めに溜めたから、飛んで来ん訳がないのじゃが、。」
「来んかった。ああ、心配じゃ桶が。、。儂の宝物の一つなのにのぅ。、、。」
空を見上げる小豆洗い。
「が、しかし、この桶見てちょ。」
アキノ桶を自慢げに見せる小豆洗い。
「ああ、立派な鉄の桶でやんすね。」
「ふふ~ん。そうじゃろ。アキノがくれたアキノ桶じゃ。」
雨女がニコリと笑顔をつくる。
「長様、桶と言ったら、木で造られた物なんじゃないのかい?」
強かな顔をする雨女。
「・・・。」
(・・・。)
百舌鳥カマキリと、ゼンマイは、黙っている。
「まぁ、言いたい者は、言うておればいいんじゃ。」
「のう、木阿弥、ええじゃろ?」
「へい。立派な鉄の桶でござんす。」
「ふふっ、そんで、木阿弥、どうなったんだい?」
おかしくてたまらない雨女は、笑いを堪えながら言う。
「へい、それで、焦りやした。あっしは、妖として生まれてこの方、誰かしらに憑いて居ましたんで、」
「探せど、探せど、感じられないなんて、初めての事で。、。、」
「少したったら、何て言うのでやんすか、こう、胸が苦しくなって、」
「そんで、こう、身体が縮こまるというか、」
「どんどん、自分が小さくなっていくと言うか、、」
「ぎゅ~ぎゅ~と、」
「苦しくて、苦しくて、」
小豆洗いと雨女は、渋柿を噛んだ様な顔をする。
皆も、苦しさが伝わったのか、嫌そうな顔にする。
「どんどんなんかこう、ぎゅ~と、小さくなって、意識が無くなりやした。」
「それでも、誰か、探そう、探そうとしてましたが、、、。」
「もしかしたら、消えてたんですかい?あっし?」
不思議そうな顔をする元の木阿弥。
「怖いのぅ~消滅寸前だった訳じゃな。」
「本当に怖い。くわばら、くわばら。」
小豆洗いと雨女が言う。
「あの、どういう事ですか?」
水の神が尋ねる。
「多分だけどね、元の木阿弥は、誰かが知ってて成り立つ妖怪だからねぇ、。」
「誰も知らないこの世界に来たら、一気に弱ったんだね。」
「そんでも、消滅しないから大したもんだよ、木阿弥。」
「へい、なんといいますか、へい。」
難しそうな顔をする元の木阿弥。
「まぁ、瀧吉様様じゃの、木阿弥。」
小豆洗いが、思い出した様に言う。
「?。」
「瀧吉が、其方の名を口にし、そこのスライダーも口にしたから、ここに来れた訳じゃ。」
「ああ、姉さん、ありがとうございやす。」
「いや、たまたまさ、。」
「ありがとうございやす。」
「まぁあえてよかったよ。」
「そうじゃの~。うむ。良かったのぅ。」
のどかな雰囲気に、皆、落ち着いたのか、それぞれに話している。
小豆洗いも、皆が、元の木阿弥の名を口にしているが、止めようとはしない。
「ありがとうございやす。」
「ありがとうございやす。」
「ああ~元気になりやした。」
「まぁのう、うむ。仕方あるまい。それも、それで、。」
偉そうな顔をする小豆洗いを雨女が見ている。
「小豆洗いの旦那?あの~」
水の神をチラチラ見る。
「そうじゃの、水の神様じゃよ。」
「へっへい。あっし、ど、どうなるので?」
「封印でもしてもらえばいいよ。ヒヒヒヒッ。」
雨女が、ちゃちゃを入れる。
「姉さん、そんなご無体な。」
何かを思い出す水の神。
「あ、あの、この度は、ご迷惑をお掛けして大変申し訳ございません。」
水の神が、深々と頭を下げると、元の木阿弥は、再び、土下座する。
「いえいえいえいえ?、物相もございません。???。」
頭を地面に擦り付ける元の木阿弥。
面白そうに見守る、小豆洗いに雨女。
色々と時が経つのが早くて。
読んで頂きありがとうございます。
いいねや、評価いただけると嬉しいです。
宜しくお願いします。




