第百二話 自業自得
間に合わなかった。
そう、思う。
マッシュの家の横で佇みながら立っていた。
本来、俗世に関わっては、いけない立場なのは、分かっていた。
しかし、何だか分からないここでなら、いいと思った。
が、それでも間に合わなかった。
マッシュさんが、折って集めたであろう細い枝を、手にもち、土をほじほじする。
「今日も、晴れ晴れ、晴れ女」
「干されて、干されて、からからよ」
「明日は、雨、雨、雨女」
「喉を潤す雨女」
「どうか、雨様、おいでませ」
かすれ声で歌う。
いつの頃だったか、忘れてしまったが、こんなわらべ歌があった。
自分が降らせた雨を喜んでくれたのは、いつ以来だろうか?
楽な時代になったと喜んではいたが、。
マッシュさんとグルテさんは、。
プスタ―も。
喜んでくれた。
ポツポツと、雨がパラついた。
「なんだい、雨かい?」
気が付いてみると、空が曇っていた。
あんなに晴れてたのに、お天道様も、泣いてくれるのかい?
取り敢えず、家の中に入る。
プスタ―の帰りを待ってみようとした。
暫くして、外に兵達の声がした。
どうやら、雨が降っているので、雨宿りに来たようだ。
姿を透明にして、じっと見ていた。
(んっ?)
(あれは、)
静かにドアを開け、外に出る。
雨もひどくなっていた。
兵達は、ドアがふらっと開いたので、一人が閉めようとした。
「ちょいとすまないね?」
家の前に見た事の無い服の女性が立っていた。
「班長?」
「なんだ?」
「おっ、おんなだ。」
「なんだぁ?」
兵達は、ドアの向こうからこちらを見る。
「いい女じゃねぇか?」
「ああ、」
「ちょいと聞きたいんだけどね。」
「まぁいいから雨に濡れちまう、こっちにはいりな」
後ろに下がる雨女。
「なんだ、こっちに来いよ。」
兵達は、後ずさりする雨女に、吸われる様に、家から出てきた。
何をしてもいいと言われている時に、極上の美人が、自分達の前にいる。
たまらなかった。
別に殺したくて殺してる訳ではないが、この女なら殺さなくていいと思う。
「あんたと、あんたは、そこに居な。」
五人の兵の内、血の匂いがしない二人に雨女は、声を掛ける。
二人は、心に何か、感じるものがあるのか、顔を見合わせて、素直に一歩下がった。
「ふふっ根性無しが、」
班長と思われる兵士が吐き捨てる様に言う。
追って出て行く兵士三人。
雨女は、片手をその班長らしき兵士に向ける、。
ベルトの隙間に挟んである、小さな青い水晶が付いたかんざしが、フワッと抜けて雨女の手に飛んでいく。
「魔法使いか?」
兵達は、剣を抜くと構えた。
これは、あたいが、グルテさんにあげたもんだね。
「あんた、これは、どうしたんだい。」
「・・・。」
「・・・。」
「どうしたんだい?」
兵士達は、自信はないが、身体がやばいと感じていた。
が、しかし、今更どうしようがない。
「婆を殺した時に、持ってたやつだ。」
誰かが、言った。
「ふ~ん、そうかい。」
「バリバリバリ、ドーン。」
言葉を言い終わる前に、天から、落雷が落ちていた。
一瞬の事だった。
手前に居た三人は、黒焦げで、燃えていた。
後ろに居た二人も吹っ飛んで、家の壁にぶつかり気を無くしていた。
雨女は、小さな青い水晶が付いたかんざしを、見つめている。
タガが外れるとは、この事なのかもしれない。
目をつむる雨女。
遠くで、落雷が、兵士めがけてバンバン落ちていた。
雨女は、感じる限り、兵士に落雷を落としていた。
雨がどんどん酷くなる。
嵐といえる中で、吹っ飛んでいた兵士が、目を覚ます。
「気が付いたかい?」
「は、はい、」
「もう一人も、起こしな。」
「はい、」
「おい、おい、起きろ、おい、」
「へっ、」
「ああ、うわっ。」
横殴りの雨の中、雨女が立っている。
「まぁ落ち着きなよ。」
「は、はい。」
「ここで、殺したのは、爺さんと婆さんかい?」
「はい、」
「そうです。」
「そうかい、」
「・・・。」
「・・・。」
「最後は、、最後は、?」
にっこり笑う雨女。
「は、はい、あの、」
「は、班長が、お婆さんは、出会いがしら、一突きで。」
「お、お爺さんも、声を掛けて来たところを、班長が一斬りしました。」
「ふ~ん、じゃあ、班長が殺したんだね。」
「はい、」
「血の匂いがしたんだけどね、あとの二人も、。」
「・・・。」
「あの、あっちの家で、殺して、あの、あの、」
泣き出す兵。
「あんたらは、血の匂いがしないんだよ。」
「はい、」
「な、情けないのですが、あの、」
「で、出来ませんでした。」
「そうかい、。、。」
「あんたら、怖くてやれなかったのかい?」
「分かりません。うう、分からないのです。」
「そうです。何のために、こんな事、分からないです。」
「もう、行きなよ。行っていいよ。」
「うう、うう。」
立ち上がり歩く、兵士二人。
「ちょいと、」
「はい、」
「はい。」
「恨みは、消えないよ。いつまでたっても。」
「はい、」
「あと、祟りって言葉を知ってるかい?」
「は、はい、祟り。」
「はい、分かります。」
「バリバリバリ、ドーン」
遥か遠くの兵士達を狙い打つ雨女。
「ああ、」
ポカンと見る兵士。
「解かったかい?」
「はい、解りました。。」
「でも、」
「やめろ、やめろって」
「でも、解って下さい、私達もやりたくてやってる訳じゃないんだ。」
必死の表情で、泣き訴える兵士。
「ど~の~口が言うんだい。」
大きな声で言う雨女。
「行きな、」
二人の兵は、走って行く。
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