第十話 連絡船の怪
丁度、船が出ていくようだ。
へぐら島港から、石川県輪島の港へ、船で1時間半かかる。
羽を広げて百舌鳥カマキリは、船の上に降り立った。
「凄い、海の上を進んでる~」
(百舌鳥カマキリ殿、お姿を、隠されよ。)
「あ、ご、ごめん。」
(百舌鳥カマキリ殿、我ら、オキツヒメ様の期待を裏切る事、でき申さず。)
「ご、ごめん。」
(しからば、某が知りえた事、少しお伝えし申す。)
「はっはい。」
百舌鳥カマキリと針金虫ゼンマイの旅が始まろうとしていた。
バードウォッチングに来ていた、○○氏は、へぐら島から東京に向けて帰る様だ。
友人達と、船に乗り込んだ。
「いや~体大丈夫かい?」
「おかげ様で、調子良く感じてます。」
「ならいいけど、東京戻ったら、医者行けよ、甘く見ん事だよ。○○さん。」
「そんなに言うなって、なぁ、分かってるよ○○さんだって。」
「そうだよ、せっかくへぐら島来たのに、言いすぎたら、可哀そうだよ。」
「いえいえ、心配して下さって、本当にありがとうございます。」
「しかし、素晴らしい鳥達でしたね。」
「そうなんだよねぁ、キクイタダキなんて、可愛くてな。」
「鳥が逃げないっちゅうのかな、ここは。」
「そう、そうなんですよね~」
いや~いつか来たいと思っていたけど、、来てよかった。
鳥の楽園とは、なぁ、。
それに、まさか、自分が倒れるなんて、。
人生の岐路とは、案外、こういうものなのかもな。
皆さん優しい方々だったな。
恩をかえさないとな、。
倒れた時に、こんなに嫁の事思った自分に驚いたなぁ、。
分からんもんだな、。
歳とって、忘れてた。
私は、もっと早く気が付きべきだった。
島から、離れようとする船。
気付かせてくれたへぐら島。
有難う。へぐら島。
ありがとうございました。
加速し始めた船、
すると、一羽の鳥が飛んでいる。
「おっ百舌鳥かな?」
良く見ると、草の様な物を、つまんでる。
こちらに近づいて来た。
草の様なものが、鳥から船の方にポロリと落ちてきた。
「あっでかいカマキリ?ええっあのカマキリ?」
「そんな訳ない。」
「今のは、草だ。うん、草かなんかだ。」
疲れているようだ、やはり、帰ったら、医者に行こう。
話は、カマキリ達に戻る。
「ゼンマイさん、海って広いのね~。」
(は、広うござる。)
「ゼンマイさんが、人から、色々教えて貰ってて、良かったわ~。」
(百舌鳥カマキリ殿、能登半島が見えてきましたぞ~)
「あら~ほんと。広いわぁ~。」
「こりゃ。」
「へっ」
(むっ。)
「こりゃ、ちとこっちにこい。」
頭に直接伝わってくる。
人達に混ざりちょこんと座っている老人二人。
「安心してよいぞ、某は、奥村 永福と申す。こちらにおられるお方は、瑩山禅師である。」
屋根からつたっており、中に入ると、ご老体二人は、ニコニコと笑っている。
二人とも、優しそうなお坊さんだ。
「あのぅ?」
綺麗な袈裟のお坊さんが、
「あのぅじゃないわ。お主は、困ったもんじゃ。助右衛門、教えてやれ。」
「もう一度いうが、安心してよい。わしらも、似たような者じゃからの。まぁこちらの瑩山禅師は、尊いお方であるが、」
「助左衛門。そのような事は、言わずとも良い。」
「お主、名は何という?」
「はぁはい、百舌鳥カマキリと申します。あと、そのぅ。」
(某は、ゼンマイと申します。)
「こりゃ、驚いた、増えよった。」
(人前なれば、失礼を。我らは、へぐら島のオキツヒメ様の使いにござる。)
「合点がいった、。」
「合点があいましたな。」
「助左衛門、ほれ。説明じゃ。」
「お主達は、妖力が駄々洩れじゃ。瑩山禅師が、直ぐにお気づきになり、船に転移してきたのじゃ。」
「なんや、化け物でも生まれたか、古の物の怪の封印でも解けたのか?と思ったぞ。なんや起こると思い、助左衛門を連れてきたのじゃ。が、来てみると襲ってこんしな。」
「は、はぁ。」
(そ、それは、申し訳ござらね。某が説明させて頂く。実は、かくかくしかじかで、、、、。)
「ほう、生まれたばかりの赤子とは、」
「ほ、ほ、ほっ仕方のない事じゃ。ならば教えてしんぜよう。これは、全ての事に通ずるぞ。妖力も、しかりじゃ。」
「は、はい。」
「手を挙げるじゃろ。」
「は、はい。」
「挙げたら下げるじゃろ。」
「は、はい」
「これじゃ。」
「?」
「下げる時と、一緒じゃ。」
「瑩山禅師、難しい例えですな」
「助左衛門、この世は、己で気が付く事が大事なのじゃぞ。」
「百舌鳥カマキリよ、見てみぃ。船の中の人間を、みな、目が血走っておるぞ、。」
「お主の、力じゃな。」
「力を抑えられんか?みな、迷惑するぞ。」
「は、はい、すいません。」
「手を挙げたら、下げるのじゃ。ほ、ほ、ほ、」
「主らは、この後どうするのじゃ?」
「は、はい、どうしよかと、迷っていたんです。ね、ね、ゼンマイ。」
(は、取り敢えず、そこにいる人間についていこうと思いました。そこの人間は、真っすぐな者なれば。)
船が減速した。港に着くようだ。
「なかなか、儂らの様な者には、会えんと思うがの、といってもすぐ島をでて、儂らに会うたか?」
「ほ、ほ、ほ。」
(瑩山禅師、百舌鳥カマキリ殿や、某に、何か、お言葉を頂きたい。)
「手を挙げたら、下げるのじゃ。ほ、ほ、ほ。あと、座禅はよいぞ。じゃあの。」
「役に立たないようで、、すまんの。じゃが、瑩山禅師のお言葉は、必ず意味があると思うでの。」
「そんな事より、助左衛門、良かったの、化け物じゃなくて。」
「儂なんか、何かあると思い、利家公から拝領した刀を差して参りましたぞ。」
「どれ、見せてみい。」
お二人の姿が、すぅと消えていく。
消えた。
手を挙げたら、下げる。
よろしくお願いいたします。




