第一話 河童
令和元年 春・・・茨城県牛久沼
「お~い、河童。お~い、河童。」
ふむ、ここらにいるはずじゃがの。
しかし、立派な河童の像じゃな。
大したものじゃ。橋の河童像をさわりながら、感嘆する。
これだけ、人間に尊敬されているとは、、。
羨ましいの~。
古来の河童族も誇りに思う事じゃろて。
しかし、凄い勢いの車じゃな。
真夜中から早朝と変わろうとしている、薄暗い朝靄の中、橋を通り過ぎていく何台もの車。
まぁわしには、気が付いてないじゃろ。
橋のたもとの菖蒲が群生している公園から、少しいい水の匂いがしたので、見に行く事にした。
すると、夜が明ける事を待つ菖蒲が、色とりどりのつぼみを膨らませている。
「こっちの河童像も立派じゃ(興奮)」
凄いもんじゃ、あぁ、凄いもんじゃ。二つも像があるとは、、。
ここまでも、人間に尊敬されているとは、、。
しかし、河童の奴、おらんの。
まぁここの菖蒲の生えている所の水なら良いじゃろ、。
ん、ん、。
「小豆洗おか、人取って喰おか」
ショキショキ。
ショキショキ。
「は~小豆洗おか、人取って喰おか」
ショキショキ。
「あのぅ」
ショキショキ。
「小豆洗おか、人取って喰おか~」
ショキショキ。
ショキショキ。
「あのぅすいません。」
「なんじゃ。でかいカマキリじゃの、お前」
草むらから若竹色のカマキリが、、。
いや、倍の大きさのカマキリがこちらに近づいてくる。
「お前、物の怪か?」
「は、はい、最近なってしまいまして、、。」
優しそうでもあり、人間のなら発情しそうな女声。
牝じゃな。
「もしかしたら小豆洗いさんですかぁ?」
「そうじゃ儂が小豆洗いじゃ」
「あっあの有名な小豆洗いさんにお会いできるなんて、」
「そ、そうかぁ?(興奮)」
頬を赤める小豆洗い。
何じゃドキドキさせるの、。忘れていた何かを思い出させる声じゃな。
一人と一匹を体育すわりの河童の像が、見つめる。
「お前さん、河童しらんか?」
「わ、私も実は、河童さんに会ってみたくてここに来たんですぅ。」
ふむぅ、河童、やりよるな。
あいつ、人気もんじゃ。凄いのぅ。
「冬に牛久沼にたどり着きまして、」
「あぁ?あいつ、そんなにおらんのか?いつもここらにおるけどなぁ。」
牛久沼の稲荷川土手から水面を見つめる。
前に来た時より大分、綺麗になってるな、。
前は、ゴミだらけだった。人間のゴミは、いつまでも減らんはずじゃけどな。
まぁ書物や使えるゴミも多かったから、有難い時もあったがの。
「牛久沼も小綺麗になったの、水は、まだまだじゃが、」
「この間、人間がゴミ拾いしてました。」
な、なんと、。
河童の威光、あっぱれじゃ。
妖怪の鏡じゃ。
くぅ~儂は、儂は。
なんじゃ、この感じは、くぅ~河童よぉ。
そうか~。そうか~。はぁ~。
しかし、河童の奴、そんなに忙しいのか?
い、いや、も、もしかしたらこの像に封印されたか?
ぬぅ、そんな気配はしないけどなぁ。
ブロロォ~キィィ、。橋の上に一台の軽トラが止まる。
運転席から、鋭い眼光の親父がこちらをにらみつける。
「おい、カマキリ、気配を消せ。やられるぞ。」
「は、はい。どうしたら?」
「未熟者、儂の懐に入れ、早く、早く」
儂らが、見えているのか?
だとしたら、陰陽師、はたまた、坊主かなんかか?
もしや、あ奴が河童を、、、。
静けさが辺りをつつむ。
ブロロォ~。
「ふぅ~行きよった。」
「あのぅありがとうございました。」
「何もんじゃ、あ奴。」
「は、はい、いつもうろうろしてて、縄張りでもまわってるのかしら。」
「恐ろしい眼光じゃった。怖いもんじゃ人間は、」
「じゃとしても、半分こっち側じゃな、半妖じゃ。半妖。」
儂らなんもやってないんじゃ、なんで、あんなに睨むんじゃ。
儂らの事、見えてたんか?
河童の奴、無事なんかの?
ともあれ、もうすぐお日さんが出てこられる。
姿をくらますかの。
「カマキリや、お主、いつも昼は、どうしてる。」
「は、はぃあちらの竹林で、休んでおります。静かで、落ち着きますよ。ここには、人間が菖蒲を見にきますから。」
「ほんじゃ儂も一緒していいかの?」
「かまいません。御高名な小豆洗いさんとご一緒できるなんて。」
おまえ、いいやつじゃの。
「少し教えて頂きたい事もありますし。」
「なんじゃ?まぁええわ。行こうかの。懐に入ってよいぞ。」
トコトコと、小豆洗いの着物を登り懐に収まる。
小豆洗いもまんざらではないようだ。
朝霧が深く、日が明けるのが遅いようだ。
竹藪に足を入れた時に、何かが変わったような気がした。
あきらかに清々しい水の匂い。
森深く渓流に入った様な。
書いてみようと思いました。
至らないところがありましたら、ごめんなさい。




