表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

〈ルイ視点〉01

本当は短編としてあげようとしていた作品ですが、書きたいところが多すぎて纏められず結果連載小説になりました。

 その出会いは、俺が十六歳、彼女が十九歳の頃に開かれた、国王陛下の誕生日を祝う祝賀会で出席者達に挨拶するために顔を出したのが始まりだった。普段は俺が押し込められている離宮から出る事も、顔を合わせる事も快く思わない陛下だが、この時ばかりは平静を装っていた。それでも、最後の抵抗とばかりに終始俺を見る事はしなかったが。その出自から父に疎まれ、第一王子という肩書きこそあれど継承権を持たない、名ばかりの王子である俺の名はルイ・バルテレミー・ユメル。背中まで伸びた黒髪をリボンで束ね、普段は着ない王子然とした装いに身を包んで家庭内事情など伺わせない笑顔で招待客に接する。


 まず最初に、山脈を挟んだ隣国の帝国から来た女帝と女帝の娘の第四皇女と顔を合わせた時だった。


「きゃー!少年時代のルイたそ激カワじゃん!マジ無理尊すぎ死んじゃう!いや死なんけども!推し活するために生き抜きますけども!あぁあー尊いんじゃー…是非とも私のお嫁さん…じゃなかった、お婿さんに来て頂きたく思います、ええ!」

「は?……え?」


 その瞬間、会場中が沈黙に包まれる。気のせいか?今、皇女の口から皇女らしからぬ言葉遣いで、とんでもない台詞が紡がれた様な…?こらテオフィル、王太子が公衆の面前でそんな鬼の形相で俺を見るんじゃ無い。アンリ、目を輝かせて期待した目を向けないでくれ…どうしろって言うんだ。唐突に叫んだ皇女を、呆然と見やる。桜色の髪に水色の瞳の組み合わせが可愛いのに…何か残念な気配がする。と、それまで黙っていた女帝が愉快そうに紅い唇を歪めた。娘を四人産んでいるとは思えない、妖艶な美女だ。


「ほぅ?だが、皇女のままでは他国の第一王子を得る事は出来ぬぞ?」

「はい!私、彼と結婚するためなら女帝でも魔王でもなってやりますとも!俄然やる気がわいてきましたわ!!」

「しっ…しかし、この者は……!っ皇女よ、ここは王太子であるテオフィルの妃に…」


 親子間でどんどん話が進んでいく中、我に返った陛下が無謀にも口を挟む。が、二人の反応は冷ややかだった。


「は?嫌ですけど?私が欲しいのはルイたそです」

「国王よ。王太子の妃は他を当たれ。皇女は第一王子と話してくるが良い。──問題ないな?」


 美しくも有無を言わさぬ口調に、王と言えど頷くしか出来ないようだった。何だか微妙な空気になってしまった会場を皇女と共に後にする。…え、この状況で本当に二人きりにされんの?

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「──どうぞ、第四皇女殿下」

「ぅうっ推しの生活空間にお邪魔してる…これ、同担のお姉様方にバレたらSNS炎上するやつなのでは?あ、こっちSNS無いわ。良かったー。──あっすみません、何でも無いです。お茶頂きます。ああ、挨拶が遅れましたね。私はモニカ・フレドリカ・リリェフォッシュ。第四皇女です」

「ルイ・バルテレミー・ユメルです。第一王子です。一応」


 結局二人で話す事になった俺達は、今俺の離宮の客室で向かい合って座っていた。正直高貴な方を招けるほどこの離宮は手入れされていない。捨て置かれていた離宮に、要らない王子を陛下が捨て置いているのだから、まぁ当然っちゃ当然だけど。弟達の離宮と比べても、此処は華が無く寂れている。本当は王城の客室を使いたかったが、皇女がどうしてもと言うので連れてきてしまった…。王族が口にするには物足りないランクの茶葉で淹れられた紅茶を、皇女は文句も言わずに一口飲んでから話し出す。


「まぁそういう訳で、私が無事即位したら結婚してくれちゃったりすると嬉しいですね。と言うかしてもらいます。その為にこの九年間、存在感も実績も無い皇女からのし上がり碌でもない姉達を蹴落とし、時期女帝候補と呼ばれるまでになったのだもの」


 紅茶をソーサーに置き、身を乗り出して俺の手を握る。王に敬遠されている俺の周りには殆ど人が居ない。精々使用人くらいで、おべっかを使う貴族はほぼ皆無。その為あまり他者との接触になれておらず、予想外の出来事に心臓が大きく脈打った。


「これからも地盤固め頑張るからね!幸せにするので安心してお嫁に来てくださいな!!」

「は、はぁ…………?」


 ……俺が嫁なのは決定なのだろうか。この時の俺は、国王の気まぐれでうっかり生まれてしまった俺にここまで執着する人間も珍しいな、としか思っていなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ