6 意外な訪問
姉ちゃん死んで一ヶ月がたった。
俺の家には今、婆ちゃんと爺ちゃんが来てくれていて、俺の世話をしてくれている。
「ほな、帰るわな」
「うん。いつもありがとな」
「辛くなったいつでも言うんやで」
「うん…」
そう言うと二人は帰って行った。
俺しかいない静かな家。
廊下の床が軋む。水道から垂れる水滴が落ちて部屋に静かに響く。
一ヶ月前はあんなに騒がしかったのに…
涙が俺の頬を流れる。
「一人だとこんなに静かで寂しいんだな」
その時
ぴーんぽーん…ぴんぽんぴんぽんぴんぽん
と、家のインターホンが怒涛の速さで押された。
(誰だよこんなことするやつは)
そう思いつつ俺は玄関の鍵を開けた。
するとそこには見たことのあるおっさん立っていた。
「おっす、少年!来てやったぞ」
確かこのおっさんの名前は城崎倉時って言うんだったな。
俺は病院でこのおっさんの名前を教えてもらっていたのだ。
「何しに来たんだよ」
「お前が泣いてないか見に来たんだよ」
くっ、このおっさんちょっとうざい。
だが、このおっさんは俺の命の恩人だ。だから、何か礼でもしてやらないとな。
「ちょっとあがっていけよ」
「お、悪いね。そうさしてもらうよ」
そう言うと、城崎は俺の家にあがってきた。
そして、リビングで寛いでいる。
そんな城崎にお茶とお菓子を出しながら俺は話をきりだした。
「本当は何しにきたんだよ。俺の泣き面見にきただけじゃねぇよな」
「あー、確かにそれだけじゃない」
「じゃぁ、何しにきたんだよ」
「実はな、前にお前を殺そうとした悪魔を倒した時に、俺たち想術師か使う術の残滓が'俺が来る前に'あったんだ」
想術師?なんだそりゃ?
「あー、そうかお前は想術師を知らないんだったな」
城崎の話によると、
想術師とは、俺を殺そうとした悪魔を倒して民間人を守る国家公認の職業らしい。
でもそんな職業聞いたことないぞ。
「そりゃぁ、お前、国家公認とはいえ世間には知られたらいけないからな」
「なんでだよ」
「それはな、そもそも悪魔ってのは普通の人間には見えないんだよ。まぁ、上位の悪魔は存在値がでかすぎて普通の人間にも見えるんだがな。でもよ、見えるから奴らは人間に化けて暮らしているんだよ」
「だから、なんだよ」
「簡単な話よ。そんな見えないもんを倒してお金貰ってますって言っても誰も納得いかないだろ」
なるほど。確かにそうだ。
でも…
「じゃぁ、なんで俺に言ったんだよ」
俺は悪魔を見えるから納得いくけど、それだけだ。
「そこだよ、少年。確かにこのままじゃ、意味はないが、悪魔を見ることができる人間は俺たちにとっては貴重なんだよ。だから俺はお前は想術師にならないかって誘いに来たわけ」
「でも、見ることはできても戦いには役に立たないぞ」
「なんでそう決めつけるんだよ。だいたい最初に言ったろ、『前にお前を殺そうとした悪魔を倒した時に、俺たち想術師か使う術の残滓があ'俺が来る前に'あったんだ』」
「どう言うことだよ」
「あれは多分お前が無意識に術を使ったんだよ」
「まじかよ」
「まじだよ」
俺は、口を開けたまま城崎を見ている。その城崎はなにやらニヤニヤしているし、おっさんのにやにやは正直気持ち悪かった。
「それで、どうするんだよ」
「どうするって?」
「決まってんだろ。想術師になって、お前の姉ちゃん見たいな悲惨な目に遭う人間を助けるか、そのまま死ぬまで後悔の念を抱いてすごすかだよ。さっさと決めろ」
「―ッ!」
俺はそう言われてしばし考える。
俺はどうしたい?どう生きたい?
このまま後悔したまま死ぬか、人間らしく生きて死ぬか。
そんなの決まっている…
「わかった。俺は…」
そこで俺は勢い良く息を吸ってこう宣言した。
「想術師になって人を助ける!」
そう言うと、おっさんは笑みを浮かべて、
「よく言った!それでこそお前だ!」
こうして俺は想術師になる事を決意したのだった。
いつもより頑張りました!