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アオハル  作者: PeDaLu
3/9

【生徒会選挙の騒動】

 新入生歓迎会は各部活動の紹介と勧誘がメインのイベントになるが、生徒会は生徒会で来年の生徒会長立候補者の選定というか推薦者を探す作業がある。生徒会推薦の◯◯、その他の立候補者、毎年そんな感じで選挙が行われてる。俺は部外者からの立候補で当選した生え抜きになる。だから、生徒会の推薦というのはいささか気に食わないところはある。やりたい人がやるものじゃないのか。

「今年の推薦、誰にしようかと考えた結果なんですけど、治樹君が適任だと思うのよね。勉強も大丈夫でしょ。あの成績なら。それに今年の生徒会も無事にまとめ上げたし」

「は?高校三年生の生徒会長なんて聞いたことがないぞ」

「前例のない生徒会長、いいじゃない。対立する候補者がいなければそのまま生徒会長よ。二期連続生徒会長とか、将来の就職活動で有利になるんじゃないの」

「お前は未来派思考だな。まぁ、確かにそういうのはありそうではあるが。誰も立候補しないってのはないだろ」

 と考えていたら案の定、立候補者が現れた。信じられないことに希だ。希が生徒会長に立候補してきたのだ。その他の立候補者は居ない。希と一騎打ちになる。この未来は想定していなかった。戸惑いが隠せない。

「お前、どうするんだ?譲るのか?」

 楠原が身を乗り出して真面目に聞いてくる。 

「譲るってどうやって。選挙だぞ?投票なんだから譲るも何もないだろうが」

「まぁ、そうだけど。選挙活動に力を入れなければいいんじゃないの?」

 実際のところはその通りなんだけど、なぜだか希にだけは負けたくない。ここで負けたら一生希には勝てないと思ったからだ。ちひろは完全に希の味方、こっちは楠原だけなんだが、結構不安ではある。一応三年生の投票もあるから、同学年への広報活動も行わなくてはならない。こっちは前生徒会長の実績をアピールすればいいから分かりやすい選挙戦になるが。希は物静かな性格だが、その冷静さを売りに広報活動をしている。クールな生徒会長、それはそれでいいかも知れない、などと思わなくもないが、ここは負けられない。

「私は生徒会長がそのまま来期も生徒会長になってもいいと思ってますよ?」

 ここにきて忍がそんなことを言い始めた。一年生の首席だった忍だ。その忍の声かけならついてくる人たちは多そうだ。ここは一気に攻めるべきだろう。そう思った俺は、各教室を回って懸命に自己ピーアールを行った。希はビラを配る戦法を取っている。手軽だが、熱意は伝わりにくと思うぞ。これは俺の勝ちかな?なんて思いながら開票結果を見ている。

「先輩、接戦ですね」

 開票速報は追いつかれ逃げてを繰り返している。まさかこんなことになるなんて思っても見なかった。

「ああ。希に負けるのは避けたいものだな。一生、勝てないような気がする」

「治樹やっぱりまだ希のこと引きずってるだろ」

「だからそんなんじゃないって。引きずってないからこそ勝たないといけないんだって。ここで一気に引き離すんだ」

 そう自分に言い聞かせながら開票結果を見守る。結果は僅差で俺の勝利。これで二期連続の生徒会長の座が決まった訳だが……。

「何を考えてるのか当ててやろうか。希を副生徒会長に呼ぶつもりだろ」

「それは!考えてもいなくはなかった。この選挙結果だ。そうなるのが必然だろ。俺の気持ちとは別のものだ」

「まぁ、確かに?」

「私は今期も書記、やりたいんで指名よろしくお願いしますね!」

 忍が俺を応援したのってこれが目的だった気がしてならない。生徒会の実績ってのは将来の就職活動に有利って言っていたからな。それにしても希、副生徒会長なんて受けてくれるのだろうか。選挙戦の挨拶をするときにでも聞いてみるか。


「ごめんなさい」

「だよな。悪かった」

「なんで謝るの?」

「いや、なんていうか。俺が希に未練があるように思われたのならそれは違うというかなんというか」

 しどろもどろで返答していると、「そういうところよ」とだけ言い残して希は去っていった。それを忍は見ていたが声をかけることはできなかった。


「新生生徒会!爆誕!」


 さすが楠原の推薦なだけはある。生徒会副会長に推してきたのはオタク仲間の三条三木久さんじょうみきひさ。イケメン属性があるのにオタクって一体……。かくして新生生徒会は生徒会長は俺、三瀬春樹、副生徒会長には三条三木久、書記は前年と同じく笹原忍。会計には俺からのたってのお願いで三年生だが楠原洋介を再任させた。楠原はちひろがいなくなってがっかりしていたが、同じ学校にはいるじゃないか、の一言で復活した。簡単なやつだ。

「あー、まずは最初の仕事は各部活の予算振りだ。各部活動から予算申請書が来てると思う。それをまずは単純にたしてくれ。足りない分を各部活の予算から減らしてゆく方法を取ろうと思う。去年と同じ方法だ」

「先生!質問です!」

「なんだ先生って」

 三条が元気よく手をあげて聞いてくる。椅子を跳ね飛ばす勢いだったものだからみんな驚いていたじゃないか。

「で?なんだ?何の質問だ?」

「割り振り、優先順位はなんでしょうか!去年の活動実績とかでしょうか!」

 まぁ、そんなものだ。野球部なんて予選落ちだったのに、強化するために道具を揃えたいからと大きな予算を請求して来ている。そんなのから理由をつけて削ってゆくのは心苦しいものはあるが、限りある予算だ。仕方ない。

「次はなんだ?」

「図書委員会ってやつです」

「そんなの去年あったか?」

 初耳だ。委員会活動はやっていなかったはずだ。クラスの図書委員はいたけど、順番でやっていただけだったはずだ。

「あ!」

 忍が声をあげた。

「会長!これ!」

 忍が図書委員会の申請用紙を見てみたらこっちがびっくりする番だった。図書委員長「相原希」、副委員長「千国ちひろ」

「なんだこれ。楠原、ちひろから何か聞いてるか?」

「いんや、何にも。ってか、何かあっても俺に報告すると思うか?」

 いや、ないだろうな。にしても、これはどうしたものか。相手が希だからって予算を多めにつけるなんてもちろんしないが、去年の活動実績が何もないのだ。どう予算どりしたものか。

「会長!その委員長、何かあるんすか!」

「いちいち元気がいいのは分かるけど、もうちょっとトーンを落としてな」

 三条はイケメン属性はあるが、やっぱりなぜかオタクくさい。モテるんだろうけど、実際に付き合ってみてなんか違うと別れを告げられるタイプ、のような気がする。

「これは判断がしにくいけど、図書委員ってそんなに予算必要ないだろう。本を買うのは学校だし。備品が買える程度でいいんじゃないのか?」

「随分と冷静だな。もうちょっと狼狽すると思ってたんだが」

 心の中では十分すぎるくらいに狼狽している。だが、そんなことで予算に色をつけるわけには行かない。そんなことよりも、あの希が何か委員会活動をするというのが信じられない。ちひろの誘いだろうか。ならなぜ委員長なのか。結局、他の部活動との兼ね合いで少々寂しい予算になってしまったが去年の実績がないのだから仕方ないだろう。


「希、いるか?」

「希?今はいないけど?何か用事?」

 図書委員会の部屋に行ってみたが、居たのはちひろだけだった。

「希が居なくて残念だった?あの子はここには来ないわよ。図書委員会っていうのは適当に欲しい本が買えるから私が作った委員会だもの。希が委員長の方が設立が認められやすいと思って」

 なるほど。この前の選挙戦で人望があると判断されたからか。実行団体と作るのは意外と面倒なことなんだ。まずメンバーを集める必要がある。図書委員会なら、各クラスの図書委員がそのままメンバーになる。ちひろも考えたものだ。あとはトップが誰になるのか。実績のない人物が実行団体のトップに立つにはハードルが高い。そこで希だったってわけか。

 予算振りも終わって生徒会の次の仕事は……差し当たってなかったりする。秋の文化祭に向けてちょろちょろと仕事が生まれるくらいだ。その分、年末に向けて色々な締め作業で仕事に追われる訳だが。もう少し仕事の配分を考えて欲しいもんだ。

 図書委員会ってのは一体なんの活動をするのか。希は本当に来ないのか。

「ちひろ、本当にこの委員会ってのは、お前が本を買うためだけに作ったのか?」

「そうよ?そんなに希のことが気になる?」

「まぁ、そういうのは、あるけど……一番の内容は、生徒会として、活動団体の内容の把握だな」

「仕事にかこつけて」

「まぁ、そう言うなよ」

 一応活動内容は確認できた。確かに希が関わる必要というかそう言うのは無いな。ここに来れば希に会えると思っていたんだが。ほんとにダメだな。

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